15:45 〜 16:00
[SCG61-05] K-NETを用いたリアルタイム地震被害推定・状況把握システムの開発
キーワード:リアルタイム、被害推定、K-NET
地震発生直後に迅速に被害状況を把握することは、より適切な初動体制を確立するための意志決定や災害対応を行う上で極めて重要である。防災科学技術研究所では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題「レジリエントな防災・減災機能の強化」において、災害発生直後の初動対応の意思決定支援等に資することを目的として、K-NETをはじめとする全国規模の強震観測網のデータを活用して、大地震による広域にわたる災害が発生した場合でも被害全体をリアルタイムに推定、状況を把握することで概観でき、かつ詳細な推定により町丁目単位、個別建物レベルでも利用可能な、リアルタイム地震被害推定・状況把握システムの研究開発を実施している。本研究では、研究開発の中心となるシステムの概要及び、被害推定に必要となる全国を対象とした建物モデルや人口モデルのデータベース構築、被害推定・状況把握に係わる手法の開発について述べる。
被害推定に用いる建物モデルは、全国をほぼ網羅し現地調査によって作成されている住宅地図データを用いて、250m四方のメッシュに分割したエリア毎に、建物構造分類や建築年等の被害推定に必要な属性を持つモデルを構築する。建物構造は、住宅地図データから一棟毎の建物種別を利用して、住居系と業務系の分類と建物の構造判定(木造、S造、RC造)を行う。建築年については、固定資産概要調書の建築年次区分を用いて、全国の市町村毎に年次区帯別の残存率を算出することで推定する。人口モデルは、国勢調査、経済センサス、社会生活基本調査等の統計データと、地図データの建物形状・種別・建物内業種情報、携帯電話のGPSの位置情報、学校毎の就学生数データを用いることで、統計的な時間帯別の人口移動を考慮した建物内滞留人口モデルとして構築する。
地震動の推定については、全国を対象に計測震度データに対して、AVS30による増幅を考慮した面的推定を行う他に、関東及び東海地域においてはK-NET観測点において連続観測を行うこと等により、リアルタイム震度や周期別の地震動情報を取り入れ、広域地下構造モデルに基づく高精度の地震動推定を行う。
こうして得られる地震動を入力とし、前章で述べた建物モデルに被害関数を適用することで全壊等の建物被害推定を行う。被害関数は、建物の大半を占める木造家屋と、人口集中部(都市部)に多い非木造建物や高層建物では、被害と対応する建物の周期帯が異なることを考慮する。すなわち、周期特性を考慮した建物の耐力分布及び建物被害程度に対応する、層間変形角をパラメータとした建物モデルを設定して地震応答解析を行い、入力地震動と建物被害程度を関係付けることで構築する。更に、被害状況を早期にかつ精度よく把握するために、被害の推定情報を、時間的空間的に断片的であるが、正確性の高い実被害情報を用いてベイズ更新することで融合させ、被害推定の精度向上あるいは情報の確定化をする手法の検討を進めている。
ここで述べたモデルや手法については、リアルタイム地震被害推定・状況把握システムに順次取り入れ、地震動分布、震度曝露人口分布、建物・人的被害分布等の推定結果を数値データ等の2次利用可能な形式で自治体等の災害対応の意思決定を支援する利活用システムにリアルタイムに提供していく予定である。
謝辞
本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施された。なお、リアルタイム地震被害推定・状況把握システムで用いている地方公共団体及び気象庁の震度データは気象庁より提供して頂いている。
被害推定に用いる建物モデルは、全国をほぼ網羅し現地調査によって作成されている住宅地図データを用いて、250m四方のメッシュに分割したエリア毎に、建物構造分類や建築年等の被害推定に必要な属性を持つモデルを構築する。建物構造は、住宅地図データから一棟毎の建物種別を利用して、住居系と業務系の分類と建物の構造判定(木造、S造、RC造)を行う。建築年については、固定資産概要調書の建築年次区分を用いて、全国の市町村毎に年次区帯別の残存率を算出することで推定する。人口モデルは、国勢調査、経済センサス、社会生活基本調査等の統計データと、地図データの建物形状・種別・建物内業種情報、携帯電話のGPSの位置情報、学校毎の就学生数データを用いることで、統計的な時間帯別の人口移動を考慮した建物内滞留人口モデルとして構築する。
地震動の推定については、全国を対象に計測震度データに対して、AVS30による増幅を考慮した面的推定を行う他に、関東及び東海地域においてはK-NET観測点において連続観測を行うこと等により、リアルタイム震度や周期別の地震動情報を取り入れ、広域地下構造モデルに基づく高精度の地震動推定を行う。
こうして得られる地震動を入力とし、前章で述べた建物モデルに被害関数を適用することで全壊等の建物被害推定を行う。被害関数は、建物の大半を占める木造家屋と、人口集中部(都市部)に多い非木造建物や高層建物では、被害と対応する建物の周期帯が異なることを考慮する。すなわち、周期特性を考慮した建物の耐力分布及び建物被害程度に対応する、層間変形角をパラメータとした建物モデルを設定して地震応答解析を行い、入力地震動と建物被害程度を関係付けることで構築する。更に、被害状況を早期にかつ精度よく把握するために、被害の推定情報を、時間的空間的に断片的であるが、正確性の高い実被害情報を用いてベイズ更新することで融合させ、被害推定の精度向上あるいは情報の確定化をする手法の検討を進めている。
ここで述べたモデルや手法については、リアルタイム地震被害推定・状況把握システムに順次取り入れ、地震動分布、震度曝露人口分布、建物・人的被害分布等の推定結果を数値データ等の2次利用可能な形式で自治体等の災害対応の意思決定を支援する利活用システムにリアルタイムに提供していく予定である。
謝辞
本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施された。なお、リアルタイム地震被害推定・状況把握システムで用いている地方公共団体及び気象庁の震度データは気象庁より提供して頂いている。