11:45 〜 12:00
[SCG63-35] 高密度GNSS速度場のクラスタ解析による日本列島の変形場の解析
キーワード:GNSS、地殻変動、統計処理
地震活動や活断層の形成は,固体地球内部の変形の集中によるものと考えられる。したがって,観測データから変形境界をとらえることは,テクトニクスの理解において根本的で重要な課題である。近年、GNSS速度場にクラスタ解析を適用し、地殻変動の空間的な分類を行う試みがアメリカ西海岸でなされて大きな成果を上げている。Simpson et al. (2012)およびSavage and Simpson (2013)は,それぞれアメリカ・カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリア,モハーベ砂漠のGNSS速度場データにクラスタ解析を適用し、地殻ブロックの運動境界を推定した。得られた境界は既知の断層系とよい対応関係を示し、地殻ブロックを定量的な基準で決定する方法として,有力な手法の一つであることを示した.
本研究では先行研究の手法に改良を加えて、日本列島に適用し、得られたクラスタ境界の結果を地質情報等と比較することにより,手法の有効性を検証した。本研究ではGNSS観測データの水平成分に,クラスタ解析のアルゴリズムの一つである階層型凝集クラスタリング(Hierarchical Agglomerative Clustering)アルゴリズムを適用し解析した。階層型凝集アルゴリズムとは,速度空間上の構成要素(以下,データと呼ぶ)を,その幾何学的な距離に応じて順番に結合していく手法である.まず,初期データ数をN個用意し,初期クラスタとする。次に、データ間の距離を計算し、もっとも距離の近いデータを選び,その重心に新たなデータを作成する.選ばれたデータをクラスタの構成要素(以下,メンバーと呼ぶ)に追加し,そのデータを削除する.この処理をデータが最後の一つになるまで繰り返すことで、クラスタの階層を作成する手法である。高い階層のクラスタは大きな運動像を反映し、低い階層のクラスタは小さな地殻構造を反映する。
しかし,主要な地殻構造を反映した適切なクラスタ階層の決定方法には任意性が残る。先行研究はクラスタ階層を決める際の手法にGap Statisticsという統計評価関数を用いた。この手法はランダムな標本と得られたデータのまとまり具合を比較することで分割の有意度を決定する手法である。しかしながら、ランダム標本のサンプリング方法に任意性が残っており、サンプリングエリアのサイズを変えれば有意に違う結果を導けてしまう根本的な問題があった。
本研究ではクラスタ間、クラスタ内標準偏差比を使ったシンプルなクラスタ評価関数を提案し導入した。基本的な考えは、主要な構造よりも細分割すると、クラスタのサイズの変化率が大きく鈍るという特徴を使い、その屈曲点を最適値として選ぶ方法である。その結果、先行研究の手法面での問題を解決し、最適なクラスタ階層(クラスタ数)を決定し、観測されている速度場の中に見られる主要なグループを特定した。
導入した評価関数に基づいてクラスタ階層を決定した結果、地理的な拘束条件を課していないにもかかわらず、地域的に相関をもった速度場のグループを推定することができた。その結果、地域的な運動像を見通しよく考えられるようになった。加えて、大部分のクラスタ境界は既知の主要な断層系とよい対応を示した。よって、求まったクラスタ境界は地殻ブロックの境界の候補を、GNSSデータのみから統計的に提案することが出来た。加えて相対運動の大まかな様子も捉えられた。さらに、解析地域の内部変形の度合いが最適値をとったときのクラスタ間・クラスタ内標準偏差比として求めることができ、地域性を反映した。
具体的な結果として、九州地方中部では、南北伸長、東西圧縮を示すダブルカップルを示唆するクラスタ境界が得られた。近畿地方では有馬・高槻構造線や花折断層・琵琶湖西岸断層系がクラスタ境界と対応した。
本研究では先行研究の手法に改良を加えて、日本列島に適用し、得られたクラスタ境界の結果を地質情報等と比較することにより,手法の有効性を検証した。本研究ではGNSS観測データの水平成分に,クラスタ解析のアルゴリズムの一つである階層型凝集クラスタリング(Hierarchical Agglomerative Clustering)アルゴリズムを適用し解析した。階層型凝集アルゴリズムとは,速度空間上の構成要素(以下,データと呼ぶ)を,その幾何学的な距離に応じて順番に結合していく手法である.まず,初期データ数をN個用意し,初期クラスタとする。次に、データ間の距離を計算し、もっとも距離の近いデータを選び,その重心に新たなデータを作成する.選ばれたデータをクラスタの構成要素(以下,メンバーと呼ぶ)に追加し,そのデータを削除する.この処理をデータが最後の一つになるまで繰り返すことで、クラスタの階層を作成する手法である。高い階層のクラスタは大きな運動像を反映し、低い階層のクラスタは小さな地殻構造を反映する。
しかし,主要な地殻構造を反映した適切なクラスタ階層の決定方法には任意性が残る。先行研究はクラスタ階層を決める際の手法にGap Statisticsという統計評価関数を用いた。この手法はランダムな標本と得られたデータのまとまり具合を比較することで分割の有意度を決定する手法である。しかしながら、ランダム標本のサンプリング方法に任意性が残っており、サンプリングエリアのサイズを変えれば有意に違う結果を導けてしまう根本的な問題があった。
本研究ではクラスタ間、クラスタ内標準偏差比を使ったシンプルなクラスタ評価関数を提案し導入した。基本的な考えは、主要な構造よりも細分割すると、クラスタのサイズの変化率が大きく鈍るという特徴を使い、その屈曲点を最適値として選ぶ方法である。その結果、先行研究の手法面での問題を解決し、最適なクラスタ階層(クラスタ数)を決定し、観測されている速度場の中に見られる主要なグループを特定した。
導入した評価関数に基づいてクラスタ階層を決定した結果、地理的な拘束条件を課していないにもかかわらず、地域的に相関をもった速度場のグループを推定することができた。その結果、地域的な運動像を見通しよく考えられるようになった。加えて、大部分のクラスタ境界は既知の主要な断層系とよい対応を示した。よって、求まったクラスタ境界は地殻ブロックの境界の候補を、GNSSデータのみから統計的に提案することが出来た。加えて相対運動の大まかな様子も捉えられた。さらに、解析地域の内部変形の度合いが最適値をとったときのクラスタ間・クラスタ内標準偏差比として求めることができ、地域性を反映した。
具体的な結果として、九州地方中部では、南北伸長、東西圧縮を示すダブルカップルを示唆するクラスタ境界が得られた。近畿地方では有馬・高槻構造線や花折断層・琵琶湖西岸断層系がクラスタ境界と対応した。