日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 A08 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、座長:加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、吉田 圭佑(独立行政法人 防災科学技術研究所 観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)

12:00 〜 12:15

[SCG63-36] ダイク貫入時における非地震性横ずれすべりの検出:2005-2010年エチオピア・Afar

*姫松 裕志1古屋 正人1 (1.北海道大学大学院理学院)

キーワード:ダイク貫入、合成開口レーダ、非地震性すべり、プレート発散境界、群発地震、ALOS/PALSAR

Himematsu and Furuya (2015) は2007年にNatron湖 (タンザニア北部) で発生したダイク貫入イベント時にグラーベン構造の沈降領域で非地震性横ずれ滑りの発生を示唆するシグナルを検出した.これまではリフト帯で発生する群発地震とマグマ貫入を伴うダイク貫入イベント時に生じる地殻変動において,変動域中央部に位置するグラーベンの沈降領域は水平変動を伴わずに,ただ鉛直下向きに沈降する挙動が想定されていた.東西の引張応力場下にあるNatron湖において拡大軸と平行方向のおよそ南向きへの変動の発生を指摘したシグナルは,これまでリフト帯で発生したダイク貫入イベントに伴う地殻変動を扱ったどの先行研究でも指摘されていなかった.
そこで我々は2005-2010年にエチオピアのAfar盆地で断続的に発生したダイク貫入イベントに伴う地殻変動データの再解析を行った.グラーベンの沈降領域における横ずれ滑りを示すシグナルは2007年Natron湖のイベントで特有なものなのか,リフト帯におけるダイク貫入イベントで普遍的に発生しているものなのかを検証することが本研究の目的である.一連のイベントで一番初めに発生した2005年9月のイベントに伴う3次元地殻変動はSARデータや光学画像データを用いて先行研究で既に報告されている (Wright et al., 2005; Grandin et al., 2009).先行研究が示したイベントに伴う地表3次元変位はグラーベンの沈降領域において顕著な横ずれ滑りの発生を指摘しなかった.一方,2006年以降のイベントに伴う地殻変動データには変動域中央部にデータの欠損が見られ,詳細に地殻変動を検出したとは言えない.我々は先行研究よりも長波長のマイクロ波で観測するSARデータを用いたInSAR解析の結果は,先行研究が示した解析結果のように変動域中央部で変位データの欠損領域が表れてしまった.InSAR解析よりも強健に地殻変動データを得る為にALOS/PALSARデータにOffset trackingを適用した.Offset trackingによって得られる衛星進行方向の変位に感度を持つAzimuth offsetの解析結果は,グラーベン構造を形成するような変動の沈降領域,特に群発地震の震源域の北側において,水平北西向きの変動を示すシグナルを明らかにした.このシグナルはグラーベンの沈降領域における横ずれ滑りに伴う変位が生じなければ説明できない.Azimuth offsetと同様に衛星進行方向の変位に感度を持つMAI(Multiple Aperture Interferometry)の結果も,Azimuth offsetが明らかにしたようにグラーベンの沈降領域において水平北西方向の水平変位を示すシグナルを捉えた.一方衛星視線方向の変動を示すRange offsetの結果は,先行研究でも報告されているグラーベン構造を形成する変位が生じたことを示す地殻変動の発生を明らかにした.これまでAfarのダイク貫入イベントに伴う地殻変動を扱った先行研究はグラーベンの沈降領域における横ずれすべりの存在を明らかにしていない.イベント時における地震波観測の結果も横ずれ地震の発生を指摘していないため,本研究で我々が捉えたグラーベンの沈降領域における横ずれ滑りを示すシグナルは「非地震性横ずれ滑り」の発生を示唆した.我々が検出した沈降領域における水平北西方向の水平横ずれ滑りの発生メカニズムを,群発地震と非地震性横すべりの関連性に注目しながら解明するために,議論をする.