日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)

17:15 〜 18:30

[SCG63-P05] 単斜輝石細粒多結晶体の焼結

*坪川 祐美子1石川 正弘1 (1.横浜国立大学大学院環境情報)

キーワード:焼結、単斜輝石

実験室において地球内部と同じ変形メカニズムを再現するためには,実験試料の粒径の細粒化 (数µm程度) が必要な場合がある (e.g. Karato, 2010).このように細粒な鉱物多結晶体を得るためには,粒径・空隙率を精密に制御できる利点から,試薬粉末を用いた合成法が有効である.しかしながら,試薬合成では天然鉱物に少量含まれる主要元素組成や微量元素組成を再現することは難しい.そこで本研究では天然鉱物の単結晶を原料として用い,天然鉱物の組成を反映した鉱物多結晶体を得ることに着目し,細粒かつ緻密な単斜輝石多結晶体の焼結を試みた.
本研究でははんれい岩・かんらん岩の主要構成鉱物の1種である単斜輝石のうち,ヘデンバージャイト (Hed:CaFeSi2O6) 成分の異なる天然ディオプサイド単結晶 (Di97Hed3:Ca0.99Na0.01Mg0.97Fe0.03Si2O6, Di99Hed1:Ca0.97Na0.02Al0.02Mg0.86Fe0.13Si2O6 ) 2種類と天然サーラ輝石単結晶 (Di87Hed13:Ca0.97Na0.02Mg0.86Fe0.13Al0.02Si2O6 ) 1種類を原料として用いた.3種類の単結晶はそれぞれ微粉砕を行い,その粉末を一軸加圧成型後,アルゴンガス雰囲気中または真空中で温度1230-1280℃,保持時間2-6時間で焼結した.得られた焼結体は鏡面研磨後,表面組織と残留空孔の観察を走査型電子顕微鏡 (SEM) で行い,SEM像をもとに画像解析ソフトを用いて粒径と空隙率を計算した.焼結体の同定には,X線回折分析 (XRD) ,蛍光X線分析 (XRD) およびラマン分光分析を行った.
得られた各焼結体の表面組織観察を行った結果,Di97Hed3焼結体は多角形状の粒子,Di99Hed1焼結体は比較的角ばった粒子から構成される組織を示した.1230℃の焼結では,それぞれの焼結体は径2µm以下の均質な粒子からなり,緻密化は粒成長と共に進行し,それぞれ理論密度の98.0%および93.5%まで到達した.これに対して1280℃の焼結では,各焼結体は粒成長が進み5µm程度の粗粒な粒子で構成され,緻密化はそれぞれ理論密度の94.1%および90.5%以下であった.これらの結果から,各焼結体において焼成温度の上昇に伴い空隙が残留したままの状態で,緻密化が十分に進まずに粒成長が促進されたと考えられる.また,Di87Hed13焼結体では細粒な粒子 (<1µm) と粗大化した粒子 (>5µm) とが混在している組織を示しており,他の焼結体と比較し緻密化はあまり進まなかった.本研究の結果,1280℃よりも1230℃で焼結した場合に,より緻密化が進行し細粒 (<2µm) かつ緻密な単斜輝石多結晶体が得られることが分かった.