[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

[SCG63-P26] 小断層データを制約条件に加えたトライシアー・逆モデリングの新手法

*古角 晃洋¹、山路 敦¹、佐藤 活志¹ (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード：トライシアー、断層伝播褶曲、断層スリップデータ、逆モデリング、魚沼層

本研究では，地下の地質構造を推定するトライシアー・逆モデリング（e.g., Allmendinger, 1998; Cardozo, 2005）の手法を改良した．トライシアー・逆モデリングとは，断層伝播褶曲の運動学的モデルであるトライシアー・モデル（e.g., Erslev, 1991; Hardy and Ford, 1997; Allmendinger, 1998）を順モデルとして，断層の形状や変位量などのパラメタを求める手法である．従来のトライシアー・逆モデリングでは，地層の位置と姿勢のデータを制約として，データに対するモデルの適合度を評価してきた．しかし，観測できる地層のデータは限られているため，適合度が同程度でありながら断層の形状などのパラメタが大きく異なる複数のトライシアー・モデルが得られることがある（Cardozo et al., 2011）．それらのモデルから最適なモデルを選択するために，著者らは逆モデリングの制約条件として小断層データを用いる手法を開発した．本手法では，モデルから計算される小断層面上の最大剪断歪み方向と，観測された小断層のすべり方向との角度差に基づいて定義した適合度を最大化する．本手法の有効性は，正解のモデルを仮定した人工データによるテストによって確かめられた．すなわち，正解のモデルに適合するように生成した小断層データを用いて，正解のモデルに近いトライシアー・モデルを選択することができた．さらに，本手法を新潟県中部の真人背斜に適用した．真人背斜は，伏在断層による断層伝播褶曲と解釈されている．ただし，この伏在断層の傾斜方向については，東向きと西向きの2つの主張がある（山田ほか, 1992; 防災科学技術研究所, 2012）．解析の結果，東傾斜のモデルの方が観測された地層面および小断層データと調和的であった．