日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 変動帯ダイナミクス

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、重松 紀生(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)

17:15 〜 18:30

[SCG63-P27] 混合確率分布のあてはめによる応力逆解析の解の自動検出

*佐藤 活志1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:応力逆解析、小断層解析、混合確率分布

小断層解析による古応力状態の推定手法は応力逆解析法と呼ばれ,構造地質学的研究において普及した技術である.また,地震学の分野でも,発震機構解から地殻応力を推定する手法として広く用いられている.しかしながら,地質時代に記録された複数の応力状態を分離して検出する手法は完全には自動化されておらず,応力状態の認定において解析者の主観を排除できていない.本研究は,応力逆解析の解を自動的に検出する手法を提案する.
応力逆解析に必要な観測データは,断層面の方位と滑り方向(断層スリップデータ)である.断層の滑り方向が剪断応力と平行であるとの仮定に基づけば,1条の断層スリップデータに適合する応力テンソルは,5次元空間(偏差応力空間)の半円弧上の点に相当する(Fry, 1999; Sato and Yamaji, 2006).Hough変換に基づく応力逆解析法(Yamaji et al., 2006,以下Hough法)は,多数の断層に対応する半円弧を重ね合わせて,偏差応力空間上に適合度の分布を得た後,適合度のピークの位置を最適解と見なす.適合度の分布が複数のピークを持つならば,複数の応力テンソルが解として得られる.ただし,Hough法はステレオ投影図上でピークを視認するか,閾値を設定してピーク検出処理を行う必要がある.本研究は,適合度の分布に混合確率分布を当てはめることで,ピークの認定を自動化した.上記の半円弧は偏差応力空間で異方的な形状を持つので,異方性を持つ確率分布として5次元Kent分布を採用した.また,ピークの数はベイズ情報量基準に基づいて決定した.
本研究の自動検出法のテストとして,人工断層データを解析した.2つの応力に起因する断層群を混合して解析したところ,2つの適合度のピークが正しく検出された.また,天然の断層データへの適用例として,大分県別府湾の北方に分布する更新統碩南層群を切る小断層群を解析した.この地域は水平引張応力場におかれていると考えらえれているが,本手法によってNNE-SSWとNNW-SSEの2つの引張方向が検出された.上位の大分層群ではNNE-SSW方向の引張応力のみが検出されたことから,本地域において1 Ma頃に引張方向が変化したことが示唆された.
References
Fry, N., 1999, Journal of Structural Geology, 21, 7-21.
Sato, K. and Yamaji, A., 2006, Journal of Structural Geology, 2006, 28, 957-971.
Yamaji, A., Otsubo, M. and Sato, K., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 980-990.