17:15 〜 18:30
[SCG63-P37] 重力異常解析から推定した西南日本下の地下密度構造とマントルウェッジの蛇紋岩化率
キーワード:蛇紋岩化、マントルウェッジ、重力異常
四国地方では南海トラフの海溝軸に平行な方向に変成帯が発達し、また四国下に沈み込むフィリピン海(PHS)プレートの遷移領域では深部低周波微動やスロースリップが発生する。微動や短期的SSEは高Vp/Vs領域に分布しており、蛇紋岩化したマントルウェッジとPHSスラブの境界部で発生していると考えられている(e.g. Matsubara et al., 2008)。本研究では重力異常データに基づき西南日本下の地下密度構造を推定し、マントルウェッジの蛇紋岩化率について議論する。
本研究で使用した重力データは、2015年までに金沢大学が測定した既存重力異常に加え、産業技術総合研究所地質調査総合センター(2004)、国土地理院(2006)、Yamamoto et al. (2011) 、西南日本重力研究グループ (2001)、澤田ほか(2009)による測定または公表されたデータを引用した。仮定密度は2670kg/m3 とし、澤田ほか(2015)の地形補正処理を行った。
密度構造解析を行う際の初期モデルとして、基盤深度(防災科学技術研究所 J-SHIS)、コンラッド面・大陸モホ面(Katsumata, 2010)、PHSスラブの海洋モホ面(Shiomi et al. 2008)の形状データを使用した。
上記のデータを用いて初期モデルを作成し、設定した測線において二次元タルワニ法による逐次的な密度構造解析を行うことで観測重力値と理論重力値が一致する地下密度構造を推定した。今回は四国から中国地方にかけての陸域部の測線を南北方向に7本、東西方向に5本設定した。密度構造解析の拘束条件として、Katsumata (2010) によるコンラッド面と大陸モホ面の推定誤差(±1σ)の2倍の範囲を初期構造からの変化量とした。
まず初めに蛇紋岩化領域が存在しない場合の密度構造の推定を行った。西南日本中央部以外の南北方向の測線では、表層やスラブの効果による不一致を除いて観測値と理論値を概ね一致させることができた。東西方向の測線では、四国東部で一致させることができなかった。この原因としては、四国東部ではPHSスラブの形状が複雑であり、二次元解析が適切ではなかった可能性が考えられる。
マントルウェッジの蛇紋岩化領域として、(i)スラブの表面上、(ii)高Vp/Vs領域、(iii)(i)と(ii)の組み合わせの3パターンを考えた。タイプ(i)では、スラブ上面からの厚さ3kmまでは蛇紋岩化率100 %まであり得る範囲と考えられる。タイプ(ii)では、四国東部のみ蛇紋岩化率20%が上限であり、その他では40 %が上限であると考えられる。タイプ(iii)では四国東部では蛇紋岩化率20 %、四国西部では40 %が上限であり、タイプ(ii)と(iii)では東部で割合が小さくなっていた。
四国東部と西部における蛇紋岩化の程度の違いは、これらの地域下でのPHSスラブの沈み込み形状の違いとプレート年齢の不均質による温度構造の違いや、それに伴うスラブ脱水と蛇紋岩化反応速度の違いに起因することが考えられる。微動の発生数は蛇紋岩化度が低い東部で相対的に少ないことから、蛇紋岩化度とスラブ脱水による間隙流体圧が相関する傾向があると考えられる。
謝辞:本研究では、基盤の等深線データは防災科学技術研究所により、PHSプレートの海洋モホ面の等深線データは同研究所の汐見勝彦博士により、地震波トモグラフィのデータを同じく松原誠博士により公表・報告されたものを使用しました。大陸モホ面・コンラッド面の等深線データは気象庁の勝間田明男博士によるものを使用しました。産業技術総合研究所地質調査総合センター、国土地理院、西南日本重力研究グループ、中部大学の山本明彦教授による重力データを使用しました。なお、本研究はJSPS科研費 24340122の助成の一部を受けて行ったものです。ここに記して感謝します。
本研究で使用した重力データは、2015年までに金沢大学が測定した既存重力異常に加え、産業技術総合研究所地質調査総合センター(2004)、国土地理院(2006)、Yamamoto et al. (2011) 、西南日本重力研究グループ (2001)、澤田ほか(2009)による測定または公表されたデータを引用した。仮定密度は2670kg/m3 とし、澤田ほか(2015)の地形補正処理を行った。
密度構造解析を行う際の初期モデルとして、基盤深度(防災科学技術研究所 J-SHIS)、コンラッド面・大陸モホ面(Katsumata, 2010)、PHSスラブの海洋モホ面(Shiomi et al. 2008)の形状データを使用した。
上記のデータを用いて初期モデルを作成し、設定した測線において二次元タルワニ法による逐次的な密度構造解析を行うことで観測重力値と理論重力値が一致する地下密度構造を推定した。今回は四国から中国地方にかけての陸域部の測線を南北方向に7本、東西方向に5本設定した。密度構造解析の拘束条件として、Katsumata (2010) によるコンラッド面と大陸モホ面の推定誤差(±1σ)の2倍の範囲を初期構造からの変化量とした。
まず初めに蛇紋岩化領域が存在しない場合の密度構造の推定を行った。西南日本中央部以外の南北方向の測線では、表層やスラブの効果による不一致を除いて観測値と理論値を概ね一致させることができた。東西方向の測線では、四国東部で一致させることができなかった。この原因としては、四国東部ではPHSスラブの形状が複雑であり、二次元解析が適切ではなかった可能性が考えられる。
マントルウェッジの蛇紋岩化領域として、(i)スラブの表面上、(ii)高Vp/Vs領域、(iii)(i)と(ii)の組み合わせの3パターンを考えた。タイプ(i)では、スラブ上面からの厚さ3kmまでは蛇紋岩化率100 %まであり得る範囲と考えられる。タイプ(ii)では、四国東部のみ蛇紋岩化率20%が上限であり、その他では40 %が上限であると考えられる。タイプ(iii)では四国東部では蛇紋岩化率20 %、四国西部では40 %が上限であり、タイプ(ii)と(iii)では東部で割合が小さくなっていた。
四国東部と西部における蛇紋岩化の程度の違いは、これらの地域下でのPHSスラブの沈み込み形状の違いとプレート年齢の不均質による温度構造の違いや、それに伴うスラブ脱水と蛇紋岩化反応速度の違いに起因することが考えられる。微動の発生数は蛇紋岩化度が低い東部で相対的に少ないことから、蛇紋岩化度とスラブ脱水による間隙流体圧が相関する傾向があると考えられる。
謝辞:本研究では、基盤の等深線データは防災科学技術研究所により、PHSプレートの海洋モホ面の等深線データは同研究所の汐見勝彦博士により、地震波トモグラフィのデータを同じく松原誠博士により公表・報告されたものを使用しました。大陸モホ面・コンラッド面の等深線データは気象庁の勝間田明男博士によるものを使用しました。産業技術総合研究所地質調査総合センター、国土地理院、西南日本重力研究グループ、中部大学の山本明彦教授による重力データを使用しました。なお、本研究はJSPS科研費 24340122の助成の一部を受けて行ったものです。ここに記して感謝します。