日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2016年5月24日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)

11:00 〜 11:15

[SEM34-02] 秋田県一ノ目潟のコア堆積物から得られた古地磁気方位の変動の信頼性

*安樂 和央1林田 明2北場 育子3スタッフ リチャード4原口 強5篠塚 良嗣6山田 和芳7五反田 克也8米延 仁志9 (1.同志社大学大学院理工学研究科、2.同志社大学理工学部環境システム学科、3.立命館大学古気候学研究センター、4.オックスフォード大学考古学美術史学研究所、5.大阪市立大学大学院理学研究科、6.立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構、7.静岡県 文化・観光部 文化学術局 ふじのくに地球環境史ミュージアム整備課、8.千葉商科大学政策情報学部、9.鳴門教育大学大学院学校教育研究科)

キーワード:残留磁化、古地磁気永年変化、一ノ目潟、完新世

近年、完新世の古地磁気永年変化 (PSV) の全球的モデルが提案されているが、その基礎となる堆積物の古地磁気データの中には近接地点にもかかわらず調和的な変化を示さないものも存在する。モデルの構築に用いられるデータの分布と質を改善するためには、得られている古地磁気データの数が少ない地域で高精度編年に基づいた複数のコア間や特定の地域内で調和的な古地磁気データを得る必要である。本研究では秋田県男鹿半島に位置する一ノ目潟の湖底堆積物について、複数のコアの残留磁化を測定し、PSVの記録としての信頼性を検討した。
一ノ目潟では、2006年と2013年にシンウォール・サンプラーを用いたコアリングが行われ、年縞を伴う泥質堆積物と砂質タービダイトを含むコア試料IMG06(全長37m)およびIMG13(全長118m)が採取された。これらのコアの完新世堆積物から得たUチャネル試料のパススルー測定と合わせ、2013年に採取したピストン・コアIMG13P-1およびIMG13P-2(全長5.9m、6.2m)について7cm3キューブ試料の磁化測定を行った。IMG06コアについてはEvent free depth (EFD) で制約を加えたベイズ統計モデルによるウイグルマッチ法により(Bronk Ramsey et al., 2012)、高精度の年代決定を行った。IMG13コアおよびIMG13P-1とIMG13P-2については特徴的な岩相および初磁化率の変動をIMG06と対比することによって年代推定を行った。得られる残留磁化の偏角については、コアのセクション境界にて不連続となることの補正が困難であるため、相対値を用いて議論を行う。
Uチャネル試料とキューブ試料の段階交流消磁の結果、ラミナ層と砂質タービダイト層のいずれにおいてもNRMが原点に向かって直線的に減衰することが確認できた。このうち、約120年前の厚さ20-30cmのタービダイト層について主成分解析によって求めた磁化方位を4つのコア間で比較したところ、伏角の値に有意な差が見られた。その原因として、コア採取時あるいはサブサンプリング時に砂質粒子の擾乱が起こった可能性が考えられる。ラミナ層の磁化の伏角と相対的な偏角の変動はコア間でよく一致しており、PSVを反映している可能性が高い。さらに、琵琶湖から報告されたPSVの記録(Ali et al., 1999)とも類似していることから、地域的な再現性も高く、日本列島および周辺地域におけるPSVの標準的な記録として堆積物の編年やモデルの基礎として利用できることが明らかになった。