日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22] 重力・ジオイド

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:今西 祐一(東京大学地震研究所)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)

13:45 〜 14:00

[SGD22-01] ニュージーランドでの絶対重力測定

*福田 洋一1瀧口 博士2風間 卓仁1西島 潤3Gulyaev Sergei4Natusch Tim4Atmos Matt5 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室、2.情報通信研究機構電磁波計測研究所、3.九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門、4.Institute for Radio Astronomy and Space Research, Auckland University of Technology、5.Land Information New Zealand)

キーワード:絶対重力測定、南アルプス、重力変化、絶対重力基準システム

度量衡の基準である長さと時間の測定に基づく絶対重力測定は、長期安定なモニタリングが必要な問題にとって最適な手法であるが、絶対重力計を保有している国は、世界的にはまだ限れている。ニュージーランド(NZ)も絶対重力計 を保有しておらず、これまでに実施された測定はすべて国外の研究機関によるものである。この内、1995年のNZで初の絶対重力測定を含め、これまでに実施された測定の多くは,米国やフランスが南極での絶対重力測定のため、マクマード基地に向かう中継点としてクライストチャーチに立ち寄った際に実施したものである。それ以外の特筆すべき測定は、2000年に米コロラド大学とオタゴ大学が共同で、NZ 南アルプスで行ったものである。NZ の南アルプスは、太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界にあたるアルパイン断層の南東側に位置し、トランスフォーム断層沿いの大規模な隆起によって形成されていることから、GPSと共に実施されたこの観測は、その形成メカニズム解明を目的としたものである。
その後、NZでの絶対重力測定は、クライストチャーチで何度か実施されたのみで、北島での測定は全く行われていなかった。しかし、2015年2月に、Geological and Nuclear Science (GNS)とLand Information New Zealand(LINZ)がGeoscience Australia(GA)の協力を得て、南島の絶対重力点3点に加え、北島で新たに重力点5点を設置し、GAのFG5-237を用いた測定を実施した(Stagpoole et al., 2015)。また、南アルプスについても、2014年12月~2015年1月に、コロラド大とオタゴ大が共同で、FG5-111による15年ぶりの測定を実施している(Bilham et al., submitted)。
本研究は、当初、長らく行われていなかった絶対重力測定による南アルプスでのテクトニクス研究や、ワークワースのVLBI観測局での測定によるGlobal Geodetic Observing System (GGOS) への貢献も含め、NZでの絶対重力基準点網の拡充などを主な目的として、2013年度のNZとの2国間共同研究として計画したものである。しかし、2013年度、2014年度と2国間共同研究としては採択されず、昨年、4カ年(2015年~2018年度)の科研費海外学術調査としてようやく採択された。上述のとおり、最近になってNZで新たな絶対重力測定が実施されているが、まだ、十分なデータが得られているとは言えず、南アルプスの測定点を含め、絶対重力測定の重要性は変わっていない。また、NZ側からも繰り返し絶対重力測定の実施を要望されており、今後、NZ側の研究者と協力しながら、当初計画どおり研究を進める予定である。以下では、この内、2016年1月~3月に実施したNZでの絶対重力測定の概要について述べる。
本研究で使用した絶対重力計は、京都大学所属のFG5-210で、2015年12月中旬に日本から発送、2015年12月末までにNZでの通関手続きを経て、2016年1月11日にオークランド工科大学(AUT)のワークワースVLBI観測局内の重力点に配送された。NZ国内での測定は、輸送中のトラブル等への対応も考慮して、1月と3月の2回に分けて計画した。1月の測定では、11日に重力計が到着後、落下槽の真空引きや調整作業を行い、16日まで測定を行った。この間、幾つかトラブルもあったが、33 set (3300 drop) の良好な測定値を得ることができた。今回得られた重力値(暫定値)は、昨年のGAによる測定値に比べ、+2.80μgalであった。この後、重力計は落下槽の真空を保持した状態で保管しており、3月の測定では、ワークワースでの再測定の後、北島での測定を行いながら、 ウェリントン経由で南島に移動し、クライストチャーチや南アルプス周辺地域での測定を予定している。
本講演では、これらの測定結果や今後の計画の概要について報告する。
謝辞:本研究はJSPS科研費(15H05205)の助成を受けて実施したものである。コロラド大のRoger Bilham教授、オタゴ大のChristopher Pearson博士、GNSのVaughan Stagpoole博士には、測定に関する資料の提供や貴重な助言を頂いた。記して謝意を表する。