日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 測地学一般・GGOS

2016年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*松尾 功二(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)、川畑 亮二(国土交通省国土地理院)、座長:瀧口 博士(情報通信研究機構電磁波計測研究所)

09:45 〜 10:00

[SGD23-04] 経験的加速度の時間変化で探る衛星の摂動

*服部 晃久1大坪 俊通2 (1.一橋大学社会学部、2.一橋大学)

キーワード:衛星レーザー測距、経験的加速度

1 cm を下回る精度のレーザー測距データを用いて行われる精密軌道決定において、人工衛星に及ぼされる力、その個々のモデル自体はそこまで精微なレベルに達しておらず、未だ原理がよく解明されていない部分も残る。
モデルの精度は軌道決定の精度に直結するものであり、これを補う目的で、未知の加速度要因が吸収されるよう簡単な経験的加速度を加速度モデルに組み込み、解析後の残差を小さくすることが一般的に行われている(大坪ほか 2014)。
現在の加速度モデルでは経験的加速度に吸収させている、まだモデル化されていない加速度要因を特定・分離し、モデル化することは、測地学的・地球物理学的な意味付けを行う上で有効である。事実、LAGEOS-1 ではこの経験的加速度の分析の中から熱力学的なモデルが発見されている(Scharrooほか 1991)。
一橋大学・情報通信研究機構・Chalmers工科大学が共同で開発・運用を行っている宇宙測地解析ソフトウェア ”c5++” では、along-track(人工衛星の進行する)方向・cross-track(人工衛星の軌道面に直交する)方向・radial (動径)方向の3方向それぞれについて、定数項および周期項の経験的加速度パラメータを推定することが可能である。
”c5++” を用いて、AJISAI・LAGEOS-1・LAGEOS-2・LARES・STELLA・STARLETTE の6つの測地衛星において、それぞれで過去5年間の経験的加速度を推定した。推定した経験的加速度は、along-track 方向の定数項1変数・along-track 方向の周期項2変数・cross-track 方向の周期項2変数の計5つのパラメータである。
解析後の残差の RMS は、LAGEOS-1・LAGEOS-2 では 7-10 mm、その他の低軌道衛星では 20-40 mm 程度である。
経験的加速度の大きさについては、LAGEOS-1・LAGEOS-2 では、along-track 方向の定数項が 0-10 pm/s2、周期項が 0-200 pm/s2、 cross-track 方向の周期項が 0-1 nm/s2 であった。その他の低軌道衛星では、 along-track 方向の定数項が 0-2 nm/s2、周期項が 0-2 nm/s2、 cross-track 方向の周期項が 0-10 nm/s2 であった。
これらの経験的加速度パラメータを5年分蓄積し、その時間変化を周波数解析などを通して分析した。一例として、AJISAI の along-track 方向の周期項は、衛星軌道面と太陽がなす角の絶対値と相関が高いことがわかった。このような経験的加速度の系統的な時間変化及びこれらの要因として考えられる摂動について議論する。