日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 測地学一般・GGOS

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*松尾 功二(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)、川畑 亮二(国土交通省国土地理院)

17:15 〜 18:30

[SGD23-P04] 倒立振子を利用した望遠鏡姿勢制御方式

*花田 英夫1,2鶴田 誠逸1浅利 一善1荒木 博志1,2船崎 健一3佐藤 淳3谷口 英夫3 (1.国立天文台RISE、2.総研大物理、3.岩手大学工学部)

キーワード:倒立振子、姿勢制御、望遠鏡

国立天文台水沢地区を中心に月の回転観測のための月面望遠鏡を開発してきたが、小型ロケットが主流となる今後の日本の月惑星探査の流れの中で、望遠鏡の小型化も必須である。この観点から、倒立振子を利用した望遠鏡鏡筒の鉛直制御を提案する。
倒立振子は重心が支点より上に来る不安定な系で、これを直立させる技術は、古くから制御工学の代表的な課題の一つとして多くの研究がなされてきた。また、最近では二足歩行ロボットに必要な技術として新たな展開を見せているが、望遠鏡の鉛直制御に利用するのは初の試みである。
鏡筒自体を倒立振子本体とし、底部を点で支持すると、一見不安定であるが、逆に、鉛直からのズレに対する感度が高いので、高精度の鉛直制御が期待できる。ここでは、円筒(鏡筒)の底部を円錐形とし、先端部をXY自動ステージ上に置く。一方、鏡筒上部を円環で囲み、4方から圧力センサーで支える(図1参照)。円筒が鉛直からずれると、重力により倒そうとするトルクが働き、そのトルクによる力を圧力センサーが検知し、それをゼロにするように、底面のXYステージを微小変位させる。
この方式は、水平面の基準を光学系の中に組み込むこと無く、かつ、下げ振りのように入射方向に支点等の構造を置く必要が無いので、望遠鏡の方式にほとんど影響を与えない。したがって、小型の望遠鏡の新しい方式として発展性が期待できる。
おもりの質量m (kg)の倒立振子が角度θ傾いた時に、水平方向にかかる力は P = mgsinθと表される。m = 1kg、θ = 1秒角(4.8×10-6rad)とすると、P=4.8×10-5 N(約50μN)となる。現在市販の最高感度のセンサーは、分解能が0.005μNであるので、1秒角傾いた場合の1/10,000の力を検出できることに相当し、角度の分解能としては0.1mas(ミリ秒角)となる。一方、ダイナミックレンジは分解能の約2万倍あるので、最高感度のセンサーを用いる場合は、姿勢を常に20秒角以内に保つ別の機構が必要である。また、倒立振子が鉛直から1mas傾いた状態から、鉛直にもどすために必要な支点の移動量は、支点からおもりの重心までの高さが10cmの場合には、5×10-10m(0.5nm)であるので、XYステージにはこの精度の位置決め精度が要求される。
今回提案する制御方式によって、月、惑星探査用の望遠鏡の大幅な小型軽量化による新しい道を開くことが可能である。