日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 測地学一般・GGOS

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*松尾 功二(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)、川畑 亮二(国土交通省国土地理院)

17:15 〜 18:30

[SGD23-P05] 広帯域バンド幅合成について(その3)

*近藤 哲朗1岳藤 一宏1 (1.国立研究開発法人情報通信研究機構)

キーワード:ブイエルビーアイ、広帯域バンド幅合成、電離層補正

1.はじめに
受信帯が10GHz以上にも及ぶ広帯域VLBI観測データのバンド幅合成処理方法をほぼ確立した。実際の広帯域VLBI観測データを使用して処理方法の検証を行なったところ、広帯域バンド幅合成に成功しその有効性が検証できた。電離層遅延補正に関しては短基線観測のため電離層の影響が顕著には現れないため、電離層の影響をシミュレーションしたデータを使用した処理を行なった。その結果、補正に必要な電離層全電子数(TEC)の相対値が推定できることが示され、電離層補正法についても検証することができた。

2.処理アルゴリズム
確立された広帯域バンド幅合成の処理アルゴリズムを以下に示す。
1)参照スキャンの決定:一連の観測の中で強度の強い電波星のスキャン(観測)を1つ決めて処理の参照スキャンとする。
2)バンド間遅延補正データの作成:参照スキャンデータを用いて従来法でバンド毎に遅延残差および遅延変化率残差を決定し、更にこれらの残差を補正したクロススペクトルを求める。またバンド毎の遅延残差から一番低い周波数バンドを基準としたバンド間遅延補正データ作成する。
3)バンド内位相補正データの作成:2)で得られたクロススペクトルの位相の周波数特性をバンド毎に多項式または移動平均で近似しバンド毎の位相補正データを作成する。
4)全スキャンの処理:2), 3)で得られた「バンド間遅延補正データ」および「バンド内位相補正データ」を使用してすべてのスキャンデータの広帯域バンド幅合成処理を行う。更に広帯域バンド幅合成処理で得られた遅延残差および遅延変化率残差を補正した広帯域クロススペクトル(バンド幅合成後のクロススペクトル)を求める。
5)電離層補正処理:4)で得られた広帯域クロススペクトルを用いて電離層全電子数の補正量ΔTECを求め、このΔTECを使って各バンドの相関データの位相補正を行なった後、再度広帯域バンド幅合成処理を行う。

3.実処理結果
2015年1月16日に鹿島-石岡基線(基線長約50km)で実施した広帯域VLBI観測データを使用して実際に広帯域バンド幅合成を行なったところ良好な結果を得ることができた。鹿島-石岡基線は基線長が短く電離層の影響は顕著には現れないのでシミュレーションにより電離層の影響を被った相関データを生成し、そのデータを処理することにより電離層補正方法の検証を行なったところ、電離層補正に関しても良好な結果を得ることができた。

4.おわりに
広帯域バンド幅合成アルゴリズムを開発し実データを処理することによりアルゴリズムの有効性を検証した。その結果、広帯域バンド幅合成に成功し実用的手法をほぼ確立することができたといえる。電離層補正手法に関しては実データの基線長が短かったため検証はシミュレーションデータを用いて行なったが、今後、大陸間基線等の長距離基線観測を通しての検証を進めて行く予定である。最後に、今回の検証に使用したデータは国土地理院の協力の下に石岡局と鹿島局の間で実施した広帯域VLBI観測によって得られたデータである。観測にご尽力いただいた国土地理院のVLBIグループの皆様に感謝する。