日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 測地学一般・GGOS

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*松尾 功二(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)、川畑 亮二(国土交通省国土地理院)

17:15 〜 18:30

[SGD23-P06] VLBI 周波数比較への応用とGALA-V システムの開発(VII)

*関戸 衛1岳藤 一宏1氏原 秀樹1近藤 哲朗1宮内 結花1堤 正則1川合 栄治1長谷川 新吾1瀧口 博士1市川 隆一2花土 ゆう子1小山 泰弘3渡部 謙一4鈴山 智也4小室 純一5寺田 健次郎6難波 難波6高橋 留美6岡本 慶大6青木 哲郎6池田 貴俊7 (1.情報通信研究機構 時空標準研究室、2.総務省情報通信国際戦略局技術政策課、3.情報通信研究機構 国際連携推進室、4.産業技術総合研究所 計量標準総合センター 時間標準研究グループ、5.情報通信研究機構 社会還元促進部門 研究開発支援室、6.情報通信研究機構 社会還元促進部門 情報システム室、7.情報通信研究機構 ネットワークアーキテクチャ研究室)

キーワード:超長基線電波干渉計(VLBI)、VLBI 全地球観測システム、長距離周波数比較

1. はじめに
NICT は、遠距離周波数比較を目的とした広帯域VLBIシステム(GALA-V)の開発を進めている。それぞれ原子周波数標準器のある場所に小型VLBI観測局を設置し、比較対象とする原子周波数標準器の信号を基準信号としてVLBI観測を行うことにより、それらの周波数差を比較することができる。GALA-Vプロジェクトではアンテナの受信感度と遅延計測精度を向上させるため3-14GHzの非常に広い帯域で電波星からの電波を受信する。GALA-Vは、国際VLBI事業(IVS)が次世代の測地VLBI観測システムとして開発をすすめているVGOS(VLBI Global Observing System)との共同観測を念頭に、互換性を持つ仕様で開発を進めている。VGOSシステムとの共同観測は、高精度な周波数比較にも有益であり、共同観測により測地と周波数比較の両立を目指している。

2. 国土地理院石岡局13m - NICT鹿島34m の超広帯域VLBI実験
2015年には国内のVGOS局として完成した国土地理院の石岡測地観測局(直径13m)と、広帯域受信機を搭載した鹿島34m局の間で試験観測を実施し、世界初となる8GHz帯域幅の超広帯域信号の合成に成功した。その後の実験では1秒間の観測でサブピコ秒(光速で約0.1mm)の遅延計測精度が実現できることを実証した。しかしながら遅延の計測精度が高くても、局位置の推定を行うためには、VGOSで求められている高速駆動のアンテナでなければ大気の遅延推定誤差が支配的となることが予想されており、2015年8月に行った鹿島34m-石岡局のVLBI観測では、このことを裏付ける結果が得られている。局位置推定の精度はそのまま周波数比較の精度と対応する。今後、高速駆動のVGOS局または、複数の広帯域VLBIアンテナとの共同観測等、更なる精度改善の方策を検討する。

3. 産総研―NICT小金井間の周波数比較VLBI実験
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、日本標準時を維持するNICTと原子周波数標準を開発している産総研に小型VLBIアンテナを設置し、VLBI技術を使った周波数比較のテストベッドとしてUTC[NICT] とUTC[NMIJ]の比較実験を行っている。前節述べた広帯域VLBI観測によって、小型でも十分な遅延計測精度と信号帯雑音比(SNR)でVLBI観測が可能であり、発表では現在までの精度検証実験の結果を報告する。

4. まとめ
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、IVSの進めるVGOSに対応した広帯域VLBI観測システムの開発を進めており、国土地理院石岡測地観測局との実証実験により、1秒で1ピコ秒を切る遅延計測精度を実現した。これは現在マイクロ波による世界最高レベルの群遅延計測である。現在、我々は産総研とNICT小金井の間で周波数比較実験進めており、精度検証の後、小型VLBI局の海外への移設と大陸間規模の周波数比較実験を目指す。

謝辞
広帯域VLBI実験の実施にあたって多大な協力を頂いている国土交通省国土地理院の方々に感謝します。