日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL36] プレート収束境界における堆積盆形成テクトニクスの新たな展望

2016年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:*伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、座長:高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)

14:15 〜 14:35

[SGL36-03] 日本海拡大以来の東北・西南日本弧の堆積盆形成テクトニクス概論

★招待講演

*中嶋 健1 (1.産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

キーワード:堆積盆形成テクトニクス、東北日本弧、西南日本弧、リフト期、ポストリフト期、日本海拡大

プレート収束境界における堆積盆形成テクトニクスは,沈み込むプレートの性質や沈み込みの性質により多様性を示すと考えられる.ここでは,東北日本弧と西南日本弧の日本海拡大以来の堆積盆形成テクトニクスを比較する.
東北・西南日本弧のテクトニクスをリフト期とポストリフト期に分けて比較する.リフト期の中でも始新世に始まる早期リフト期には,東北・西南日本弧ともに日本海沿岸に火成活動を伴って小規模なリフト堆積盆地が形成された.後期漸新世には東北・西南日本弧全域に広域不整合が形成され,東北日本弧と西南日本弧で同じようなテクトニクス場におかれたと考えられる.引き続くシンリフト期も前期中新世に同時に始まり,特に18 Ma頃に背弧域で始まる広域海進は東北日本弧と西南日本弧で共通している.一方,西南日本弧においては大規模なリフト堆積盆地は日本海沿岸に限られるのに対して,東北日本弧では脊梁部にまで深いリフト堆積盆地が形成された.
15 Ma頃に西南日本弧は広域に隆起・陸化し,外帯での火成活動や瀬戸内での高Mg安山岩で代表される特異な火成活動が開始され,リフト期は終結する.一方,東北日本背弧域は沈降して海域が拡がり,脊梁部では13.5 Ma頃までリフトの沈降と火成活動が継続する.シンリフト期の後期に明確になった西南日本弧と東北日本弧のテクトニクスの差異は,ポストリフト期にも引き継がれた.西南日本弧では鮮新世になるまで堆積盆地の形成は一部に留まり,広域に陸地が拡がっていたのに対して,東北日本弧では後期中新世から間歇的に隆起・不整合イベントが繰り返されて深海から徐々に陸化していった.
既存のプレートモデルによると,早期リフト期には,東北日本弧と西南日本弧には同じ太平洋プレートが沈み込んでいたが,シンリフト期からポストリフト期のどこかで西南日本弧に沈み込むプレートは拡大して間もない四国海盆へと転換したとされる.シンリフト期の後期以降の両弧の堆積盆形成テクトニクスの差異は,沈み込むプレートの性質の違いや,複雑な日本海の海盆形成様式を反映した背弧でのリフティングの違いや,両弧の移動様式の違い等が原因となった可能性がある.