14:50 〜 15:15
[SGL36-05] 坑井層序や震探解釈を取り入れた西南日本の第四紀堆積盆研究の総括
★招待講演
キーワード:西南日本第四紀堆積盆、坑井層序、震探解釈
西南日本における第四紀テクトニクスの研究は、第四紀堆積盆地形成の古地理・構造発達史の研究とともに進展してきた。後期鮮新世以降の大阪湾や琵琶湖などの堆積盆地形成とその研究は、大阪層群相当層の研究として進められてきた。そのほとんどが水域や堆積平野でおおわれた地域の地質学的研究には、従来からの陸上露頭調査とは異なる調査手法の展開が必要であった。ここでは、西南日本の第四紀堆積盆地テクトニクス研究の進展について、大阪湾・琵琶湖・京都盆地および別府湾について紹介することとする。堆積盆地の地下構造を明確にするための重要な手法として掘削と地球物理学的探査がある。掘削による地下堆積物を取得し、その層序と年代を求めることは堆積盆研究では必須である。このうち、深層ボーリングと呼ばれる、第四紀の堆積層を掘りぬいて基盤まで到達する掘削や地下構造探査が戦後いくつかのフェーズで実施されてきた。大阪平野域では、地下水利用による地盤沈下対応のための掘削(ODシリーズの掘削)が実施された。琵琶湖では、堀江正治京大教授に主導された湖沼科学掘削が重要な成果となった。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を受けての行政主導の「活断層と地下構造調査」において、大阪湾と神戸・大阪地域、京都盆地では、深層掘削と地震探査や重力探査が実施され、貴重な情報が入手された。また、大阪湾に埋め立てられた関西国際空港の事業では、関連水域での物理探査とともに、二期島での基盤まで到達する掘削が行われた。別府湾では、1990年代初期に京都大学による物理探査と国・県による大分平野での調査が実施された。結果として、大阪堆積盆地では、中央構造線と有馬―高槻断層帯の横ずれ運動と南北の逆断層群の活動による盆地形成が明確になり、その時系列的な変形と局所的な変動様式が、10万年単位の海成粘土層の分布形態から高度化されてきた。琵琶湖堆積盆地は、琵琶湖西岸断層帯の活動による西傾斜の構造と、堆積盆地中心が北へ移動する様式との組み合わせが読み取ることができる。京都盆地は、盆地を画する南北性の逆断層の活動と海成粘土層の分布状況から北へ傾斜する運動が組み合わさっていることが明らかになった。別府湾および大分平野では、横ずれ断層の末端におけるプルアパート盆地構造の形成と関連した正断層の活動の様相が明らかになってきた。第四紀におけるこれらの堆積盆地形成は、フィリピン海プレートの運動の時系列的な運動と、前弧域での中央構造線断層帯の運動との関連が大きな営力として作用していることが明らかになった。今後の課題として、広域テクトニクスの中で、応力分配と三次元(4次元)構造、スケールとテクトニックな位置による集中変位・変形などの静的な物性情報と構造を明確にすること、それらを形作る要因を整理したシミュレーションによるテクトニクス解釈、および現在の観測による変動像との整合性の検証等が望まれる。