日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL36] プレート収束境界における堆積盆形成テクトニクスの新たな展望

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)

17:15 〜 18:30

[SGL36-P01] 棚倉断層沿いに発達するstrike-slip basinを埋積する新第三系の古地磁気学的研究

*澤畑 優理恵1岡田 誠2細井 淳3天野 一男4 (1.茨城大学大学院理工学研究科、2.茨城大学理学部、3.産業技術総合研究所、4.日本大学文理学部自然科学研究所)

キーワード:棚倉断層、横ずれ堆積盆、日本海拡大、中期中新世、古地磁気学的研究

日本列島は新第三紀に日本海拡大に伴い,ユーラシア大陸から離れ,現在の弧状列島に進化した(Otofuji et al., 1985).棚倉断層は日本海拡大と関連して活動したと考えられていることから(e.g., Jolivet and Tamaki, 1992),棚倉断層周辺に発達した新第三系は日本列島形成過程を考える上で極めて重要な地層群である.これら新第三系は主として棚倉断層の西側に沿って分布し,棚倉断層の左横ずれ運動によって形成されたstrike-slip basinを埋積したものと考えられている(e.g., 天野,1991; 澤畑・天野,2013).本研究では,古地磁気学的手法を用いて層序の再検討および構造運動の復元を行い,棚倉断層の運動を日本海拡大前後のテクトニクスに関連づけて議論する.
矢祭・西部大子・東部大子・山方堆積盆に分布する新第三系を対象とし,下部より,基盤岩への貫入岩(谷地下流紋岩類),陸成中新統(北田気層・北田気層大沢口凝灰岩部層)および海成中新統(苗代田層)から試料を採取した.各サイト3~6本のコアを用いて,それぞれ段階交流消磁および熱消磁を行った.さらにフィールドテスト(褶曲,逆転テスト)に合格したものを初生磁化と判断し,傾動補正後のデータをサイト別平均磁化方位とした.また,北田気層~苗代田層間の陸成・海成中新統における古地磁気記録として,小島(2001)および橋本(1999MS)の残留磁化測定データを使用した.
Ⅰ.層序
残留磁化測定結果に加え,従来報告されているデータを整理し,周辺地域の新第三系(常磐・茂木地域)との対比から本地域の層序を再検討した.
谷地下流紋岩類は逆帯磁を示し,K-Ar年代17.1±0.4Ma(田切ほか,2008)から,約17.2~16.7Maに基盤岩に貫入したと考えられる.堆積盆形成後,北田気層大沢口凝灰岩部層をもたらした珪長質な火山活動を西方の茂木地域に分布する茂木層に求めた.茂木層は,K-Ar年代15.9±0.2Ma,逆帯磁を示す(星,1998).大沢口凝灰岩部層も逆帯磁を示し,U-Pb年代16.2±0.4Ma(天野・細井,私信)から,約16~15.8Maと考えられる.
北田気層~男体山火山角礫岩は,全サイトで逆帯磁を示した.浅川層から,熱帯域性の貝類化石Acid-Potamid群集(高橋,2001),台島型植物群(永戸,2008)が報告されており,浅川層中部以降の海進を裏付けている.中新世最温暖期は,軟体動物化石の八尾-門ノ沢動物群から16.4~15Ma(Ogasawara et al., 2008)と考えられており,矛盾がない.したがって浅川層は,15.8Ma以降に堆積した可能性がある.
苗代田層は正・逆両極性を示す.浅川層~苗代田層の層相変化から推定される相対的海水準の上昇は,深海底コアの酸素同位体比曲線で示される中期中新世の汎世界的な温暖化とタイミングがよく一致している.
Ⅱ.テクトニクス
Stage1:~約16Ma(strike-slip basin形成前)
Stage2~3:約16Ma~15.2Ma(strike-slip basin形成初期~後期)
棚倉断層の左横ずれ運動によりstrike-slip basinが形成され,反時計回り運動を伴いながら,拡大・沈降を繰り返す.北田気層,大沢口凝灰岩部層,浅川層,男体山火山角礫岩が堆積する.
Stage4:~約14.6Ma(strike-slip basin形成以降)
苗代田層堆積以降,棚倉断層の右横ずれ運動により,時計回り運動を伴う.
各ステージにおいて,日本海拡大前のテクトニクス(Stage1),日本海拡大初期のリフティングテクトニクス(Stage2),日本海拡大最盛期のテクトニクス(Stage2-3),その後のテクトニクス(Stage4)と考えた.