日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL37] 地域地質と構造発達史

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 101B (1F)

コンビーナ:*大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、座長:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)

13:45 〜 14:00

[SGL37-01] 西部~中央ネパール,南部シワリク層群下部における砂岩記載と地域間比較

*中嶋 徹1吉田 孝紀1Regumi AmarRai Lalit (1.国立大学法人信州大学)

キーワード:ヒマラヤ山脈 シワリク層群 

ヒマラヤ山脈はインド亜大陸とアジア大陸の衝突により形成された造山帯であり,古第三紀に始まった大陸間の衝突が現在まで進行している貴重な例として様々な研究がなされてきた(本田・酒井 1988; Najman 2006).
特に中新世における上昇では,現在ヒマラヤ山脈の標高の高い地域に分布する高度変成岩が形成され地表に露出したとされている(酒井,2005).地下深部において形成された変成岩が形成され上昇,露出する過程はヒマラヤ全体の上昇と深く関わっていると考えられる.本研究ではネパール西部~中央部のKarnali Rier地域,Dang Valley地域,Surai Khola地域,Tinau Khola地域に分布する下部シワリク層群における砂岩記載と地域間比較を行い,後背地であるヒマラヤ山脈における高度変成岩の露出時期に関する考察を行った.
シワリク層群はヒマラヤ山脈の前縁堆積盆を埋積した中新統~鮮新統であり,特に下部シワリク層群が堆積した時期は後背地において高ヒマラヤが地表に露出したとされる時期に相当する.そこで本研究では主に下部シワリク層群より得られた25個の砂岩試料に関し、鏡下観察によりモード組成と重鉱物の組み合わせ,EDS分析により砕屑性ザクロ石の化学組成を検討した。砂岩の堆積年代は古地磁気層序より得られた年代を採用した。モード組成では全ての砂岩試料がDickinson et al. (1983)のrecycled orogenicの領域にプロットされ,シワリク層群の後背地として衝突型造山帯であるヒマラヤ山脈があげられる.またBasu et al. (1975)のダイヤグラムでは中~高度変成岩から砕屑粒子の供給があったことが示される.砂岩試料中からは藍晶石や珪線石、十字石など、高度変成岩を母岩とする鉱物が13~8Maのサンプルにおいて観察された.これらの鉱物は後背地における高度変成岩の露出を示唆する一方,産出が少ないため具体的な露出の時期の推定には至らなかった。そこで全ての砂岩試料中に認められる砕屑性ザクロ石の化学組成を検討し、後背地のより連続的な追跡を行った。その結果,下部シワリクの13~8Maにおいてザクロ石の化学組成の傾向が変化することがわかった。藍晶石や十字石の存在を考慮すると,この時期に後背地において高ヒマラヤが露出したと考えられる。各研究地域における高度変成岩の露出はKarnali River地域では13.2~12Ma、Dang Valley地域では13~10.9Ma,Surai Khola地域では10.9~9.5Maであったと推測された。露出時期は本研究地域においては西ほど古い傾向が見られ、高ヒマラヤの露出は西から進行する傾向にあったと考えられる。かつてのインド亜大陸北西部に相当するパキスタンやインドにおける先行研究では変成岩の露出が西より進行したことが示されているが(Najman et al., 2003a,b; White et al., 2002)、インド亜大陸北東部に相当する本研究地域においても同様な傾向が示された。