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[SGL37-02] モンゴル中北部・中部の付加体の起源と進化過程
キーワード:ウランー鉛年代、(砕屑性)ジルコン、レーザー誘導結合プラズマ質量分析計、ゴンドワナ大陸、古生代
はじめに 中央アジア造山帯のモンゴルは,複雑に分布する数多くの地質体から構成され,その構造発達史は十分解明されていない.筆者らは,構造発達史解明の一段階として,砕屑性ジルコンのU-Pb年代分布からモンゴル中北部・中部の付加体の形成過程と後背地の解明を試みた.
地質概説 モンゴル中北部は,北西からバヤンゴル,ハラー,及びヘンテイの3帯に分けられる.前2者は,前期古生代の付加体及び浅海成層から成り,後者は中古生代の付加体及び浅海成被覆層から成る.付加体はNE走向N傾斜である.ヘンテイ帯付加体の遠洋性チャート層は後期シルル紀及び前期-後期デボン紀の微化石を産出し(Kurihara et al., 2009),浅海成層の泥岩は前期石炭紀腕足類化石を産する.また,同じく被覆層の中~上部ペルム系ウルメグテイ層は,ドロップストーンを有する周氷河堆積物である.モンゴル中部は,南からザグ帯及びハンガイ帯に区分される.前者は中期カンブリア~前期シルル紀の結晶片岩から成り,後者はWNW走向のタービダイトとチャート-砕屑岩シークェンスを有する付加体及び被覆層から成る.モンゴル中北部の3帯とは左横ずれ剪断帯を介して接し,ザグ帯との境界は北傾斜である.既存のハンガイ帯の地質図では,ペルム系分布域を中心としたWNWトレンドの向斜軸が推定される.また,向斜軸部付近の下部ペルム系とされる砂岩は,植物の印象化石を産し,その直上に安山岩礫をもつ礫岩層が水平に覆うことから,火成弧近辺で付加体を被覆した陸成層と解釈される.
測定結果 中北部・中部から採取した砂岩21試料のモード測定を行い,名古屋大学環境学研究科設置のLA-ICP-MSで砕屑性ジルコンの年代分布を求めた.本測定結果と先行研究(Kelty et al., 2008; Bussien et al., 2014)19試料の結果を併せると,モンゴル中北部付加体の見かけ下部をなす31試料と,モンゴル中部,ハンガイ帯の5試料は,相対確率分布図上で410-374 Ma,358-332 Ma,304-259 Maに最も若い年代ピーク(以下YP)を持ち,先カンブリア年代を示すジルコンの個数比(以下%Pc)が12 未満であった(準単峰型).一方,モンゴル中北部付加体見かけ上位の3試料と,モンゴル中部のザグ帯の1試料は,526-426 Maに卓越したYPをもち,1000-700 Ma,2200-1600 Ma,2700-2300 Maに小ピークをもつ(多峰型).
考察 本研究の砂岩試料は火山岩片を多く含む石質砂岩で,堆積時,火成活動起源のジルコンを含むと考えられるため,YPを堆積年代と捉えた.変成岩はその有無が確認できないためYPを堆積年代上限値とした.
モンゴル中北部の計34試料測定結果をまとめると,上位より,カンブリア-シルル紀(526-426 Ma)の多峰型と,前期-中期デボン紀(410-374 Ma),前期石炭紀(358-332 Ma),及び前期ペルム紀(304-259 Ma)の準単峰型に区分された.同様に,モンゴル中部のハンガイ帯付加体にも見かけ下位に年代が若くなる極性が認められ,日本の付加体と同じ特徴をもつ.
モンゴル北部に分布する火山弧性地帯のTuva-Mongol Massifには,古生代の火成岩体が広く分布するが,中期-後期デボン紀(385-345 Ma)の火成岩を欠く.この年代幅にモンゴル中北部・中部の付加年代欠如期の一つ(373-359 Ma)が収まるため,モンゴル中北部・中部の付加体はTuva-Mongol Massifの縁辺で形成された蓋然性が高い.また,モンゴル中北部及び中部のカンブリア-シルル系は,年代分布や岩質が一致するため同一の地質体の蓋然性が高い.多峰型の変成岩は750-450 MaのPan-Africa造山運動時のジルコンを含む事からGondwana大陸を形成していた諸大陸縁辺で堆積したと考えられる.多峰型とよく似たピーク形態として,Saharan Metacraton,Kufra Basinのカンブリア-オルドヴィス系(Meinhold et al., 2013)が挙げられる.
ハンガイ帯陸成層の砂岩はYP(322 Ma)より上部石炭系と判断され,ハンガイ帯付加体が322 Maまでに陸化したことを示す.また,ウルメグテイ層は,後期ペルム~前期三畳紀に上盤北方変位の剪断変形を受けており(Fujimoto et al., 2012),ザグ帯構成岩類とその南側の地質体が衝突し衝上剪断変形を被ったNNE方向の圧縮変形(前期ペルム~後期三畳紀;Jian et al., 2010)と概ね時期が一致する.この衝突に伴う圧縮変形が,ウルメグテイ層の剪断変形とハンガイ帯のWNW方向の向斜形成をもたらしたと考えられる.
地質概説 モンゴル中北部は,北西からバヤンゴル,ハラー,及びヘンテイの3帯に分けられる.前2者は,前期古生代の付加体及び浅海成層から成り,後者は中古生代の付加体及び浅海成被覆層から成る.付加体はNE走向N傾斜である.ヘンテイ帯付加体の遠洋性チャート層は後期シルル紀及び前期-後期デボン紀の微化石を産出し(Kurihara et al., 2009),浅海成層の泥岩は前期石炭紀腕足類化石を産する.また,同じく被覆層の中~上部ペルム系ウルメグテイ層は,ドロップストーンを有する周氷河堆積物である.モンゴル中部は,南からザグ帯及びハンガイ帯に区分される.前者は中期カンブリア~前期シルル紀の結晶片岩から成り,後者はWNW走向のタービダイトとチャート-砕屑岩シークェンスを有する付加体及び被覆層から成る.モンゴル中北部の3帯とは左横ずれ剪断帯を介して接し,ザグ帯との境界は北傾斜である.既存のハンガイ帯の地質図では,ペルム系分布域を中心としたWNWトレンドの向斜軸が推定される.また,向斜軸部付近の下部ペルム系とされる砂岩は,植物の印象化石を産し,その直上に安山岩礫をもつ礫岩層が水平に覆うことから,火成弧近辺で付加体を被覆した陸成層と解釈される.
測定結果 中北部・中部から採取した砂岩21試料のモード測定を行い,名古屋大学環境学研究科設置のLA-ICP-MSで砕屑性ジルコンの年代分布を求めた.本測定結果と先行研究(Kelty et al., 2008; Bussien et al., 2014)19試料の結果を併せると,モンゴル中北部付加体の見かけ下部をなす31試料と,モンゴル中部,ハンガイ帯の5試料は,相対確率分布図上で410-374 Ma,358-332 Ma,304-259 Maに最も若い年代ピーク(以下YP)を持ち,先カンブリア年代を示すジルコンの個数比(以下%Pc)が12 未満であった(準単峰型).一方,モンゴル中北部付加体見かけ上位の3試料と,モンゴル中部のザグ帯の1試料は,526-426 Maに卓越したYPをもち,1000-700 Ma,2200-1600 Ma,2700-2300 Maに小ピークをもつ(多峰型).
考察 本研究の砂岩試料は火山岩片を多く含む石質砂岩で,堆積時,火成活動起源のジルコンを含むと考えられるため,YPを堆積年代と捉えた.変成岩はその有無が確認できないためYPを堆積年代上限値とした.
モンゴル中北部の計34試料測定結果をまとめると,上位より,カンブリア-シルル紀(526-426 Ma)の多峰型と,前期-中期デボン紀(410-374 Ma),前期石炭紀(358-332 Ma),及び前期ペルム紀(304-259 Ma)の準単峰型に区分された.同様に,モンゴル中部のハンガイ帯付加体にも見かけ下位に年代が若くなる極性が認められ,日本の付加体と同じ特徴をもつ.
モンゴル北部に分布する火山弧性地帯のTuva-Mongol Massifには,古生代の火成岩体が広く分布するが,中期-後期デボン紀(385-345 Ma)の火成岩を欠く.この年代幅にモンゴル中北部・中部の付加年代欠如期の一つ(373-359 Ma)が収まるため,モンゴル中北部・中部の付加体はTuva-Mongol Massifの縁辺で形成された蓋然性が高い.また,モンゴル中北部及び中部のカンブリア-シルル系は,年代分布や岩質が一致するため同一の地質体の蓋然性が高い.多峰型の変成岩は750-450 MaのPan-Africa造山運動時のジルコンを含む事からGondwana大陸を形成していた諸大陸縁辺で堆積したと考えられる.多峰型とよく似たピーク形態として,Saharan Metacraton,Kufra Basinのカンブリア-オルドヴィス系(Meinhold et al., 2013)が挙げられる.
ハンガイ帯陸成層の砂岩はYP(322 Ma)より上部石炭系と判断され,ハンガイ帯付加体が322 Maまでに陸化したことを示す.また,ウルメグテイ層は,後期ペルム~前期三畳紀に上盤北方変位の剪断変形を受けており(Fujimoto et al., 2012),ザグ帯構成岩類とその南側の地質体が衝突し衝上剪断変形を被ったNNE方向の圧縮変形(前期ペルム~後期三畳紀;Jian et al., 2010)と概ね時期が一致する.この衝突に伴う圧縮変形が,ウルメグテイ層の剪断変形とハンガイ帯のWNW方向の向斜形成をもたらしたと考えられる.