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[SGL37-04] 四国,物部川層群・南海層群中の火成岩礫のジルコンU-Pb同位体年代測定
キーワード:ウラン―鉛年代、レーザー誘導結合プラズマ質量分析計、秩父累帯下部白亜系、西南日本、東アジア、火成岩礫
はじめに 四国の秩父累帯下部白亜系は,二枚貝動物相や岩相の違いから物部川層群と南海層群に二分され,後者は前者より低緯度で堆積したとされる(田代,1985).一方,両層群を,寒流系・暖流系アンモナイトの混在する同一堆積盆の同時異相とする意見もある(例えば,松川・江藤,1987).また,松川・江藤(1987)は,徳島県勝浦地域の南海層群Hauterivian階菖蒲層に含まれる礫の一部が,同層堆積盆の南方に露出した現在の黒瀬川構造帯をなす先白亜系に由来すると解釈した.以上の問題を解決するため,本研究では,高知県物部地域の物部川層群日比原層(1試料)・柚ノ木層(1試料),徳島県勝浦地域の物部川層群傍示層(1試料)および南海層群菖蒲層(2試料)の火成岩礫に含まれるジルコンのU-Pb同位体年代を測定した.
手 法 ジルコンのU-Pb年代は,名古屋大学大学院環境学研究科のLA-ICP-MSで測定した.議論には,(206Pb/238U年代)/(207Pb/235U年代)=0.9–1.1の範囲に収まるコンコーダンスが良い測定値を採用した.
結 果 Nは測定ジルコン粒子数.
日比原層(Albian)花崗岩礫(N33゚39′34.01″・E133゚46′01.60″):
120–133 Maの範囲に収まるコンコーダンスの良い14粒子が見出された.加重平均年代は,126.4±2.5 Ma(N=14)となった.
柚ノ木層(Aptian)花崗斑岩礫(N33゚42′43.20″・E133゚50′06.09″):
129–122 Ma(N=6),137–135 Ma(N=2),181–174 Ma(N=2),269 Ma(N=1),および2,334 Ma(N=1)のコンコーダンスの良い12粒子が見出された.最も若いクラスター6粒子の加重平均年代は,125.4±2.6 Maとなった.
傍示層(Aptian)花崗斑岩礫(N33゚54′01.55″・E134゚25′22.44″):
143–118 Maの範囲に収まるコンコーダンスの良い13粒子が見出された.加重平均年代は,130.0±4.4 Ma(N=13)となった.
菖蒲層(Hauterivian)花崗岩礫(N33゚50′36.51″・E134゚24′18.94″):
173 Ma(N=1),186–184 Ma(N=2),218–193 Ma(N=27),および232–224 Ma(N=4)のコンコーダンスの良い34粒子が見出された.最もジルコンが形成された218–193 Maのクラスターを構成する27粒子の加重平均年代203.9±2.5 Maを,花崗岩の形成年代と考えた.
菖蒲層石英斑岩礫(N33゚50′36.51″・E134゚24′18.94″):
204–203 Ma(N=2),241–228 Ma(N=3),263 Ma(N=1),287 Ma(N=1),1,910–1,879 Ma(N=2),2,090 Ma(N=1),および2,263 Ma(N=1)のコンコーダンスの良い11粒子が見いだされた.最も若い2粒子のコンコーディア年代203.4±2.8 Maを,石英斑岩の形成年代と考えた.
考 察 物部川層群の火成岩礫は,130–125 Maの年代を示した.東アジア縁辺での同時期の火成岩体は,東北日本北上帯,渤海湾周辺,および南中国沿岸域に分布し(Kiminami and Imaoka, 2013; Li et al., 2014; 土谷ほか,2015; Wang et al., 2013など),これらが礫の供給源の候補地となる.しかし,今回測定した火成岩礫は,大礫以上の大きさであり,アジア大陸棚の東縁から離れた渤海湾周辺からもたらされたとは考えにくい.また,後期ジュラ~前期白亜紀の古植物地理より,領石型植物化石を産する物部川層群は浙江省以南で形成された蓋然性が高い(Kimura, 1987).
一方,南海層群菖蒲層の火成岩礫の形成年代は,204 Ma前後と解釈される.この火成岩礫の年代は,黒瀬川構造帯に分布する火成岩類の年代(400 Ma前後:Hada et al., 2000; 村田ほか,2006)とは一致しない.さらに礫岩層直上の砂岩も,200 Ma付近に最大のジルコン年代クラスターをもち,400 Maや前期白亜紀のジルコンを含まない.従って,菖蒲層の火成岩礫は,黒瀬川構造帯の火成岩類とは別物であり,堆積盆南方から供給されたものではない.さらに物部川層群の砂岩はワッケ質,南海層群の砂岩はアレナイト質という相違もある(田代,1985).以上より,両層群のHauterivian階は異なる地域で堆積したものと解釈される.菖蒲層の後背地は,三畳紀火成岩が広く分布し前期白亜紀火成岩に乏しいベトナム以南が候補として挙げられる.
手 法 ジルコンのU-Pb年代は,名古屋大学大学院環境学研究科のLA-ICP-MSで測定した.議論には,(206Pb/238U年代)/(207Pb/235U年代)=0.9–1.1の範囲に収まるコンコーダンスが良い測定値を採用した.
結 果 Nは測定ジルコン粒子数.
日比原層(Albian)花崗岩礫(N33゚39′34.01″・E133゚46′01.60″):
120–133 Maの範囲に収まるコンコーダンスの良い14粒子が見出された.加重平均年代は,126.4±2.5 Ma(N=14)となった.
柚ノ木層(Aptian)花崗斑岩礫(N33゚42′43.20″・E133゚50′06.09″):
129–122 Ma(N=6),137–135 Ma(N=2),181–174 Ma(N=2),269 Ma(N=1),および2,334 Ma(N=1)のコンコーダンスの良い12粒子が見出された.最も若いクラスター6粒子の加重平均年代は,125.4±2.6 Maとなった.
傍示層(Aptian)花崗斑岩礫(N33゚54′01.55″・E134゚25′22.44″):
143–118 Maの範囲に収まるコンコーダンスの良い13粒子が見出された.加重平均年代は,130.0±4.4 Ma(N=13)となった.
菖蒲層(Hauterivian)花崗岩礫(N33゚50′36.51″・E134゚24′18.94″):
173 Ma(N=1),186–184 Ma(N=2),218–193 Ma(N=27),および232–224 Ma(N=4)のコンコーダンスの良い34粒子が見出された.最もジルコンが形成された218–193 Maのクラスターを構成する27粒子の加重平均年代203.9±2.5 Maを,花崗岩の形成年代と考えた.
菖蒲層石英斑岩礫(N33゚50′36.51″・E134゚24′18.94″):
204–203 Ma(N=2),241–228 Ma(N=3),263 Ma(N=1),287 Ma(N=1),1,910–1,879 Ma(N=2),2,090 Ma(N=1),および2,263 Ma(N=1)のコンコーダンスの良い11粒子が見いだされた.最も若い2粒子のコンコーディア年代203.4±2.8 Maを,石英斑岩の形成年代と考えた.
考 察 物部川層群の火成岩礫は,130–125 Maの年代を示した.東アジア縁辺での同時期の火成岩体は,東北日本北上帯,渤海湾周辺,および南中国沿岸域に分布し(Kiminami and Imaoka, 2013; Li et al., 2014; 土谷ほか,2015; Wang et al., 2013など),これらが礫の供給源の候補地となる.しかし,今回測定した火成岩礫は,大礫以上の大きさであり,アジア大陸棚の東縁から離れた渤海湾周辺からもたらされたとは考えにくい.また,後期ジュラ~前期白亜紀の古植物地理より,領石型植物化石を産する物部川層群は浙江省以南で形成された蓋然性が高い(Kimura, 1987).
一方,南海層群菖蒲層の火成岩礫の形成年代は,204 Ma前後と解釈される.この火成岩礫の年代は,黒瀬川構造帯に分布する火成岩類の年代(400 Ma前後:Hada et al., 2000; 村田ほか,2006)とは一致しない.さらに礫岩層直上の砂岩も,200 Ma付近に最大のジルコン年代クラスターをもち,400 Maや前期白亜紀のジルコンを含まない.従って,菖蒲層の火成岩礫は,黒瀬川構造帯の火成岩類とは別物であり,堆積盆南方から供給されたものではない.さらに物部川層群の砂岩はワッケ質,南海層群の砂岩はアレナイト質という相違もある(田代,1985).以上より,両層群のHauterivian階は異なる地域で堆積したものと解釈される.菖蒲層の後背地は,三畳紀火成岩が広く分布し前期白亜紀火成岩に乏しいベトナム以南が候補として挙げられる.