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[SGL37-09] 仙台湾の海上ボーリングコアにおける鮮新統および更新統の層序の再検討.
キーワード:仙台湾、鮮新統、更新統、珪藻化石、火山灰
仙台湾には,反転構造を伴うNNW-SSE走向の断層群が存在し,活構造の可能性も指摘されていることから,マルチチャンネル方式にてウォーターガンとブーマーを音源とする海上音波探査と海底下約80mの海上ボーリングを組み合せた地質調査を実施し,層序および地質構造について考察を行なっていた(鳥越・橋本,2007)。
鳥越・橋本(2007)は,海上音波探査結果について音響層序学的な層序区分により,A層(完新統に相当),B層(更新統に相当),C層(鮮新統に相当),D層(中新統に相当)及びE層(音響基盤;先新第三系に相当)の5層に区分するとともに,海上ボーリング結果について,層相,堆積環境,固結の程度等から岩相層序区分として,A層(海底下0~5.17m;緩いシルト),B層(5.17~26.90m;やや締まったシルト~砂),C-1層(26.90~51.13m;締まりの良いシルト岩~砂岩)及びC-2層(51.13~78.75m;非常に締まりの良い凝灰質シルト岩~凝灰質砂岩)の4層に区分した。採取したボーリング試料については珪藻化石分析,火山灰分析,花粉化石分析等を実施した。珪藻化石は,全体として保存状況が悪く年代決定に有効な年代指標種が少ないものの,C-1層下部からはNeodenticula kamtschaticaとN. koizumiiが一緒に産出することからYanagisawa and Akiba(1998)のNPD8帯,C-1層上部の1試料からはN. koizumiiとN. seminaeが一緒に産出することからNPD9帯,B層からはNPD10帯以降の化石が産出することからNPD10帯と考えた。なお,火山灰については明瞭なテフラは見出せなかった。B層/C層境界について,海上音波探査と海上ボーリングの結果を比較すると,海上音波探査記録が約35m前後,海上ボーリングが約27mと,認定深度に数mの乖離があるものの,全体的には概ね良く対応しており,直接試料を得ている海上ボーリングの深度約27mのB層/C層境界を鮮新統と更新統の境界と評価した。
一方,その後の鮮新世/更新世境界の年代見直しに加え,上述の珪藻化石分析結果については年代指標種が少なく年代特定に不確実性が存在することから,今回海上ボーリングの層序及び年代について再検討を行なった。珪藻化石分析結果については,再堆積による影響を踏まえた珪藻化石帯の再考察を行なった。また,明瞭なテフラは見出せなかったことから,微量な火山灰成分の検出に着目し,鉱物組成分析,屈折率測定および火山ガラスの主成分分析による詳細火山灰分析により微量に含まれる火山灰(クリプトテフラ)の検出を試みた。
珪藻化石の再検討の結果,C-2層の最上部(海底下約55m付近)はNPD8帯,C-1層上部の1試料(海底下約33m)はNPD9帯上部(約2.2Ma前後)と再決定した。また,火山灰分析の結果,海底下約11m層準から阿多鳥浜(Ata-Th:240ka)及び鬼首池月(O-Ik:240~270ka),約16m層準から加久藤(Kkt:330~340ka),約17m層準からTE-5(350ka),約31m層準からHap-2(2.3Ma)と考えられる火山灰が検出された。
以上の結果を踏まえると,従来C-1層の上部としていた海底下約26~36m区間については,約31m層準から約2.3MaのHap-2火山灰を検出するとともに,約33m層準から珪藻化石NPD9帯上部(約2.2Ma前後)を産出していることからジェラシアンに対応すると考え,新たにB-2層と再定義した。この結果,鮮新世と更新世の境界の年代変更も踏まえると,鮮新統と更新統の境界も約27mから約36mに変更となる。この深度は海上音波探査記録の最も顕著な不整合に対応し,前述の乖離も解消することから,より妥当な層序区分と考えられる。
引用文献
鳥越・橋本(2007):日本応用地質学会平成19年度研究発表会講演論文集,p.51-52.
Yanagisawa and Akiba(1998):Jour. Geol. Soc. Japan, 104, 395-414.
鳥越・橋本(2007)は,海上音波探査結果について音響層序学的な層序区分により,A層(完新統に相当),B層(更新統に相当),C層(鮮新統に相当),D層(中新統に相当)及びE層(音響基盤;先新第三系に相当)の5層に区分するとともに,海上ボーリング結果について,層相,堆積環境,固結の程度等から岩相層序区分として,A層(海底下0~5.17m;緩いシルト),B層(5.17~26.90m;やや締まったシルト~砂),C-1層(26.90~51.13m;締まりの良いシルト岩~砂岩)及びC-2層(51.13~78.75m;非常に締まりの良い凝灰質シルト岩~凝灰質砂岩)の4層に区分した。採取したボーリング試料については珪藻化石分析,火山灰分析,花粉化石分析等を実施した。珪藻化石は,全体として保存状況が悪く年代決定に有効な年代指標種が少ないものの,C-1層下部からはNeodenticula kamtschaticaとN. koizumiiが一緒に産出することからYanagisawa and Akiba(1998)のNPD8帯,C-1層上部の1試料からはN. koizumiiとN. seminaeが一緒に産出することからNPD9帯,B層からはNPD10帯以降の化石が産出することからNPD10帯と考えた。なお,火山灰については明瞭なテフラは見出せなかった。B層/C層境界について,海上音波探査と海上ボーリングの結果を比較すると,海上音波探査記録が約35m前後,海上ボーリングが約27mと,認定深度に数mの乖離があるものの,全体的には概ね良く対応しており,直接試料を得ている海上ボーリングの深度約27mのB層/C層境界を鮮新統と更新統の境界と評価した。
一方,その後の鮮新世/更新世境界の年代見直しに加え,上述の珪藻化石分析結果については年代指標種が少なく年代特定に不確実性が存在することから,今回海上ボーリングの層序及び年代について再検討を行なった。珪藻化石分析結果については,再堆積による影響を踏まえた珪藻化石帯の再考察を行なった。また,明瞭なテフラは見出せなかったことから,微量な火山灰成分の検出に着目し,鉱物組成分析,屈折率測定および火山ガラスの主成分分析による詳細火山灰分析により微量に含まれる火山灰(クリプトテフラ)の検出を試みた。
珪藻化石の再検討の結果,C-2層の最上部(海底下約55m付近)はNPD8帯,C-1層上部の1試料(海底下約33m)はNPD9帯上部(約2.2Ma前後)と再決定した。また,火山灰分析の結果,海底下約11m層準から阿多鳥浜(Ata-Th:240ka)及び鬼首池月(O-Ik:240~270ka),約16m層準から加久藤(Kkt:330~340ka),約17m層準からTE-5(350ka),約31m層準からHap-2(2.3Ma)と考えられる火山灰が検出された。
以上の結果を踏まえると,従来C-1層の上部としていた海底下約26~36m区間については,約31m層準から約2.3MaのHap-2火山灰を検出するとともに,約33m層準から珪藻化石NPD9帯上部(約2.2Ma前後)を産出していることからジェラシアンに対応すると考え,新たにB-2層と再定義した。この結果,鮮新世と更新世の境界の年代変更も踏まえると,鮮新統と更新統の境界も約27mから約36mに変更となる。この深度は海上音波探査記録の最も顕著な不整合に対応し,前述の乖離も解消することから,より妥当な層序区分と考えられる。
引用文献
鳥越・橋本(2007):日本応用地質学会平成19年度研究発表会講演論文集,p.51-52.
Yanagisawa and Akiba(1998):Jour. Geol. Soc. Japan, 104, 395-414.