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[SGL37-P03] 砕屑性ジルコンU-Pb年代から見た蝦夷層群中部層準基底不整合のハイエタス
キーワード:U-Pb 年代、砕屑性ジルコン、ハイエタス、白亜紀、前弧海盆、北海道
北海道中央部空知-エゾ帯の前弧海盆堆積体(蝦夷層群)の内部には,従来から不整合が存在するとされ,それが示す変動は“中蝦夷地変”と呼ばれてきた(猪間,1968).北海道南部地域において蝦夷層群中部層準が下位地質体(蝦夷層群下部層準と神居古潭帯岩清水コンプレックス)を部分的に不整合におおう関係が再確認されている(川村ほか,1999;Ueda et al., 2002).この不整合は,エゾ海盆中に短期間存在した“前弧リッジ(forearc ridge)”の存在を示すものと考えられており(Kawamura, 2004),その規模・形成年代・空間的な広がりを把握することは,前弧海盆のテクトニクスの理解に重要である.しかし,先行研究では不整合基底部からの直接の堆積年代は得られていない.
我々は,不整合が形成された年代・そのハイエタスの推定を目的とし,①三石地域咲梅川中流部に露出する蝦夷層群中部層準の基底部礫岩層中の砂岩礫(以下:SBR01),②その礫岩層と互層をなす砂岩(以下:SBR11),③富良野地域奈江川に露出する蝦夷層群下部層準タービダイト砂岩(以下:NER)の計3つの砂岩サンプル中の砕屑性ジルコンSHRIMP U-Pb年代を測定し検討を行った.
1.NERとSBR01中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代は非常に似た頻度分布を示し,もっとも若い粒子年代は,それぞれ126 ± 4 Ma,125 ± 2 Maであった.このことから,SBR01は蝦夷層群下部層準由来の砂岩礫であると考えられる.礫となった砂岩の堆積年代(125 ± 2 Ma: Late Barremian)と,その周囲の砂岩SBR11の堆積年代(110 ± 3 Ma: Late Albian)の差=ハイエタスは15 Maである.
2.この15 Maの間に,蝦夷層群下部層準の堆積→埋没固結→上昇→陸化浸食という過程が進行したことになる.上昇が開始するまでの期間は正確には不明であるが,下部層準の全層厚(800~2500 m; Takashima et al., 2004)と前弧海盆の一般的な堆積速度(200~300 m / my; 例えばEinsele, 2010)から,数myのオーダーと予想される.このことから,蝦夷層群下部層準は120Ma以降に上昇を開始し,不整合形成年代は120~110 Maであると考えられる.
3.岩清水コンプレックスの上昇は125 Ma前後には開始していた(Ueda et al., 2002)ため,蝦夷層群下部層準のタービダイト堆積作用は,その深部での上昇運動が起きた後も一定期間継続していたことになる.すなわち,下位地質体の上昇から蝦夷層群下部層準の上昇まで数myのタイムラグが存在していたことが予想される.岩清水コンプレックス最上部のピラシュケ・ユニットが上昇する際,その上位にあるウェッジマントルと海洋地殻(空知層群)がデタッチメント断層によって構造的に除去されていく(Ueda, 2005)ため,上昇運動が相殺され蝦夷層群下部層準に“波及”するまでにタイムラグがあった可能性が考えられる.
Einsele (2010) Sedimentary Basins, Springer, 598.
猪間(1968) 石油技協,34, 11-17.
Kawamura (2004) Proc. Int. Symp. "Dawn of a New Natural History", 109-119.
川村ほか(1999) 地質学論集,52, 37-52.
Takashima et al. (2004) Cret. Res., 25, 365-390.
Ueda (2005) Tectonics, 24, TC2007.
Ueda et al. (2002) Jour. Geol. Soc. Japan, 108, 186-200.
我々は,不整合が形成された年代・そのハイエタスの推定を目的とし,①三石地域咲梅川中流部に露出する蝦夷層群中部層準の基底部礫岩層中の砂岩礫(以下:SBR01),②その礫岩層と互層をなす砂岩(以下:SBR11),③富良野地域奈江川に露出する蝦夷層群下部層準タービダイト砂岩(以下:NER)の計3つの砂岩サンプル中の砕屑性ジルコンSHRIMP U-Pb年代を測定し検討を行った.
1.NERとSBR01中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代は非常に似た頻度分布を示し,もっとも若い粒子年代は,それぞれ126 ± 4 Ma,125 ± 2 Maであった.このことから,SBR01は蝦夷層群下部層準由来の砂岩礫であると考えられる.礫となった砂岩の堆積年代(125 ± 2 Ma: Late Barremian)と,その周囲の砂岩SBR11の堆積年代(110 ± 3 Ma: Late Albian)の差=ハイエタスは15 Maである.
2.この15 Maの間に,蝦夷層群下部層準の堆積→埋没固結→上昇→陸化浸食という過程が進行したことになる.上昇が開始するまでの期間は正確には不明であるが,下部層準の全層厚(800~2500 m; Takashima et al., 2004)と前弧海盆の一般的な堆積速度(200~300 m / my; 例えばEinsele, 2010)から,数myのオーダーと予想される.このことから,蝦夷層群下部層準は120Ma以降に上昇を開始し,不整合形成年代は120~110 Maであると考えられる.
3.岩清水コンプレックスの上昇は125 Ma前後には開始していた(Ueda et al., 2002)ため,蝦夷層群下部層準のタービダイト堆積作用は,その深部での上昇運動が起きた後も一定期間継続していたことになる.すなわち,下位地質体の上昇から蝦夷層群下部層準の上昇まで数myのタイムラグが存在していたことが予想される.岩清水コンプレックス最上部のピラシュケ・ユニットが上昇する際,その上位にあるウェッジマントルと海洋地殻(空知層群)がデタッチメント断層によって構造的に除去されていく(Ueda, 2005)ため,上昇運動が相殺され蝦夷層群下部層準に“波及”するまでにタイムラグがあった可能性が考えられる.
Einsele (2010) Sedimentary Basins, Springer, 598.
猪間(1968) 石油技協,34, 11-17.
Kawamura (2004) Proc. Int. Symp. "Dawn of a New Natural History", 109-119.
川村ほか(1999) 地質学論集,52, 37-52.
Takashima et al. (2004) Cret. Res., 25, 365-390.
Ueda (2005) Tectonics, 24, TC2007.
Ueda et al. (2002) Jour. Geol. Soc. Japan, 108, 186-200.