17:15 〜 18:30
[SGL37-P07] アジア大陸東縁の後期ジュラ~前期白亜紀右横すべり剪断運動
キーワード:砕屑性ジルコン、ウラン-鉛年代、日本列島、東アジア、中生代
地質情報に乏しい日本の後期ジュラ~前期白亜紀テクトニクスを解明するために,飛騨帯,北部北上帯,及び南部秩父帯の中部ジュラ~下部白亜系の砕屑性ジルコン年代スペクトルを求め,東アジアの火成岩年代分布図と比較検討した.結果と考察を以下に示す.尚,先カンブリア時代ジルコンの個数比(%)を%Pcと呼ぶ.
飛騨帯:手取層群分布域西部(白山区,石徹白川ルート)では,上部ジュラ系(%Pc=5.4)から下部白亜系(%Pc>80)へと%Pcが上昇した.一方,分布域東部(神通区,長倉林道)では,上部ジュラ~下部白亜系最下部アプチアン階まで10未満であった%Pcが,上位へ18,32と増加し,温暖化・乾燥化を示唆する赤色岩層を挟在するようになった.川越ほか(2014)は,%Pcの高い白山区の下部白亜系は現韓半島を,%Pcの低い神通区の下部白亜系は現中国東北部を,それぞれ後背地にすると考えた.神通区の手取層群最上部における%Pcの増加は,飛騨帯の相対的西進(現在の座標で;変位量0~500 km)と神通区の韓半島への接近を示唆する.
北部北上帯:中期ジュラ紀付加体の槇木沢層は,%Pcが59~87で,次いでジュラ紀ジルコン(190-170 Ma)を含んだ.付加体を被覆する下部白亜系小本層及び原地山層は,古原生代ジルコンを20-40%含み,ジュラ紀及び三畳紀のジルコンを,それぞれ10-22%含んだ.特に,韓半島の火成活動静穏期(Magmatic Hiatus=158-110 Ma: Sagong et al., 2005;以下MH期)にあたる140-120 Maジルコンを含み,160-145 Maのジルコンを欠く点が注目された.槇木沢層の後背地は,先カンブリア時代と三畳紀~ジュラ紀前半の火成岩類が卓越する現韓半島であると考えられる.一方,火成活動静穏期のジルコンを含む下部白亜系は,南中国と同じ領石型植物群を含むため,南半球で古原生代及び三畳~ジュラ紀火成岩類の分布する現温州市~汕頭市を後背地とすると考えた.中期ジュラ紀~前期白亜紀に,槇木沢層の形成場は大陸に対して最大約1,500 km相対的に南進したと判断される.
南部秩父帯:中期ジュラ紀付加体は,槇木沢層と同様に,%Pcが50超で,次いで中生代前半のジルコン(250-170 Ma)を含んだ.一方,後期ジュラ紀付加体は,%Pcが30 %以下で,MH期を含むジュラ紀ジルコン(170-150 Ma)を50 %以上含んだ.中期ジュラ紀付加体の後背地は,現韓半島と考えられる.古原生代及び190-170 Maの火成岩の分布は韓半島で特に広く,南中国には乏しいためである.一方,後期ジュラ紀付加体の後背地は,170-150 Maの火成岩が広く分布し,古原生代火成岩類が点在する南中国の現温州市~汕頭市付近と判断される.中期~後期ジュラ紀に,付加体の形成場は大陸に対して最大約1,500 km相対的に南進したこととなる.
以上の様に,日本列島の3地帯から,後期ジュラ紀~前期白亜紀に,大陸に対して相対的に右横すべり変位した痕跡が見出された.その変位量は,現太平洋側の地帯の方が大きく見積もられる.西南日本内帯の超丹波帯~丹波帯北縁には,北傾斜の右横すべり剪断帯が知られており(大藤ほか,1990),上記の右横すべり変位の実体の一つである可能性がある.
飛騨帯:手取層群分布域西部(白山区,石徹白川ルート)では,上部ジュラ系(%Pc=5.4)から下部白亜系(%Pc>80)へと%Pcが上昇した.一方,分布域東部(神通区,長倉林道)では,上部ジュラ~下部白亜系最下部アプチアン階まで10未満であった%Pcが,上位へ18,32と増加し,温暖化・乾燥化を示唆する赤色岩層を挟在するようになった.川越ほか(2014)は,%Pcの高い白山区の下部白亜系は現韓半島を,%Pcの低い神通区の下部白亜系は現中国東北部を,それぞれ後背地にすると考えた.神通区の手取層群最上部における%Pcの増加は,飛騨帯の相対的西進(現在の座標で;変位量0~500 km)と神通区の韓半島への接近を示唆する.
北部北上帯:中期ジュラ紀付加体の槇木沢層は,%Pcが59~87で,次いでジュラ紀ジルコン(190-170 Ma)を含んだ.付加体を被覆する下部白亜系小本層及び原地山層は,古原生代ジルコンを20-40%含み,ジュラ紀及び三畳紀のジルコンを,それぞれ10-22%含んだ.特に,韓半島の火成活動静穏期(Magmatic Hiatus=158-110 Ma: Sagong et al., 2005;以下MH期)にあたる140-120 Maジルコンを含み,160-145 Maのジルコンを欠く点が注目された.槇木沢層の後背地は,先カンブリア時代と三畳紀~ジュラ紀前半の火成岩類が卓越する現韓半島であると考えられる.一方,火成活動静穏期のジルコンを含む下部白亜系は,南中国と同じ領石型植物群を含むため,南半球で古原生代及び三畳~ジュラ紀火成岩類の分布する現温州市~汕頭市を後背地とすると考えた.中期ジュラ紀~前期白亜紀に,槇木沢層の形成場は大陸に対して最大約1,500 km相対的に南進したと判断される.
南部秩父帯:中期ジュラ紀付加体は,槇木沢層と同様に,%Pcが50超で,次いで中生代前半のジルコン(250-170 Ma)を含んだ.一方,後期ジュラ紀付加体は,%Pcが30 %以下で,MH期を含むジュラ紀ジルコン(170-150 Ma)を50 %以上含んだ.中期ジュラ紀付加体の後背地は,現韓半島と考えられる.古原生代及び190-170 Maの火成岩の分布は韓半島で特に広く,南中国には乏しいためである.一方,後期ジュラ紀付加体の後背地は,170-150 Maの火成岩が広く分布し,古原生代火成岩類が点在する南中国の現温州市~汕頭市付近と判断される.中期~後期ジュラ紀に,付加体の形成場は大陸に対して最大約1,500 km相対的に南進したこととなる.
以上の様に,日本列島の3地帯から,後期ジュラ紀~前期白亜紀に,大陸に対して相対的に右横すべり変位した痕跡が見出された.その変位量は,現太平洋側の地帯の方が大きく見積もられる.西南日本内帯の超丹波帯~丹波帯北縁には,北傾斜の右横すべり剪断帯が知られており(大藤ほか,1990),上記の右横すべり変位の実体の一つである可能性がある.