日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL37] 地域地質と構造発達史

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)

17:15 〜 18:30

[SGL37-P11] 砂箱実験で作ったクーロンウェッジの間欠的隆起

桑名 沙也加1、*藤内 智士1 (1.高知大学理学部応用理学科)

キーワード:クーロンウェッジ、付加体、隆起、スラスト、アナログモデル実験

クーロンウェッジの発達過程を研究するための基礎的なモデルとして臨界尖角モデルがある.しかし,実際の地質構造から得られる値は理論値から間欠的に変化することがわかっている.この間欠的変化の理解は,クーロンウェッジの研究にとって重要である.本研究では,クーロンウェッジの隆起過程に注目し,1.間欠的隆起の程度はどのくらいか,2.間欠的隆起はなぜおこるか,の2点の解明を目的とした.そのために,アナログモデル実験によりクーロンウェッジを作り,観察,写真・動画の撮影,PIV解析を行った.
ウェッジは,シートを敷いたアクリル容器(幅11.8 cm,長さ69.3 cm)に乾燥砂を厚さ2.0–3.0 cmで敷き詰め,シートを引いて砂を固定壁に押し付けて作った.実験を25回行い,ウェッジの隆起に関して以下の特徴が見られた.一部が隆起する時期と全体が隆起する時期があり,これを交互に繰り返す.場所ごとの隆起速度は全体的には理論値に合うものの,急上昇期と緩上昇期がある.
本研究の目的に関して2点の成果を得た.1点目は,間欠的な隆起の特徴をこれまでの研究よりも具体的に明らかにした.今回作ったクーロンウェッジが示す急上昇期と緩上昇期は,シートを引く距離で1−7 cmごとに切り替わる.隆起速度は,急上昇期で0.05−0.13 mm/sec,緩上昇期で0.00−0.05 mm/secである.これらを天然のクーロンウェッジの空間スケールに換算すると,隆起速度の変化は約0.8−12万年ごとに起こり,そのときの隆起速度は,急上昇期で10万年あたり400−1000 m,緩上昇期で10万年あたり0−400 mとなる.これは,間欠的隆起が地質記録から見出だせる可能性を示す.2点目は,間欠的な隆起は内部変形に伴っていることがわかった.特に,歪集中域のうち固定壁に近いもの(バックストレインゾーン:BSZ)の位置がウェッジ内で動くことで急上昇期と緩上昇期が切り替わる.その結果,隆起速度が変化するタイミングは固定壁からの水平距離によって少しずつずれる.
今後の展望として2点挙げられる.ひとつは,天然のクーロンウェッジにおける間欠的隆起の探索である.もうひとつは,間欠的隆起の原因であるBSZの成因や挙動の仕組みを詳しく調べることである.これらによって,間欠的隆起の理解はさらに進むと期待される.