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[SGL37-P19] 岡山県柵原の白亜紀火砕岩に挟在する泥岩の堆積環境
キーワード:黒色シルト岩、CHNS分析、カルデラ湖堆積物
中国地方中央部,岡山県柵原地域には,古生代の舞鶴層群・夜久野岩類を基盤とする白亜紀の火山岩類(火山岩,火砕岩,少量の堆積岩)および同時期の貫入岩類が分布する.これらは,南北約20km,東西約7kmのコールドロン(火山性陥没構造)を構成している(石川・小室,2015).白亜紀火山岩類は,溶結または非溶結の流紋岩質火砕岩類を主体とし,全層厚は1700mを超えるが,下部にやや厚い泥岩層(層厚約100m)を挟在する.この泥岩には,厚さ数mmの平行葉理が連続しており,級化層理が発達していることから,湖底堆積物とみられ,コールドロンを火砕岩類が埋積するときに一時的に湖(カルデラ湖)が存在したことを示唆する.この泥岩は,有機物を含んでいるとみられる黒色シルト岩なので,堆積環境を推定するためCHNS分析を行なった. 分析に使用した泥岩は,明灰色を呈しラミナが明瞭に見られる部分と,暗灰色を呈しラミナがあまり明瞭ではない部分にサンプルを分けて分析した.その結果,検出された窒素と炭素の値は両者であまり差は見られなかった.全窒素の検出値は0.1%に満たないが(0.087~0.089%),少量ながら栄養塩の供給が行われていたと考えられる.また,全有機炭素の値が1%に満たないこと(0.33~0.38%)およびC/N比が小さいこと(3.8~4.3)から,含まれる有機物は,カルデラ周囲に生育していた植物の遺骸が河川によって大量に流入したものではなく,カルデラ湖に発生したプランクトン起源であると推測される. また,カルデラ湖堆積物であるにもかかわらず,この泥岩からはイオウが全く検出されなかった.このことからこの泥岩は,かなり長期にわたって火山活動が休止していた期間に堆積したものであろうと推測される.火山活動が休止したカルデラ湖で,少量の栄養塩が供給され,プランクトンが細々と増えていくような環境下で堆積した泥岩であると分析結果からは判断される.堆積にどの程度の時間がかかったかは定かではないが,厚さ数mmの平行葉理が発達していることから,葉理が季節変化を反映していると考えるならば,数千~数万年程度の時間で堆積したと推測できる.カルデラ壁は開析されていたが,大規模河川の流入が起きるほどではなく,外輪山内側のみの小規模な集水域であった可能性が高い.