日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL38] 地球年代学・同位体地球科学

2016年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 303 (3F)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

14:00 〜 14:15

[SGL38-02] 年代表の年代数値に関する問題とは?

*兼岡 一郎1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:年代表、年代数値、有効数値

地球史における各種の現象の年代を参照するためにはさまざまな種類の年代表が用いられており、それらには年代数値が与えられている。しかしそれらの年代数値の表記は年代表によって異なり、有効数値に対応した数値になっているとは限らない。
地質年代表では地質層序などに基づいて年代表が作成され、相対年代としての地質年代が定義される。地質年代境界の年代数値は、当初各層に属する岩石・鉱物などの放射年代測定値を基に推定されてきた。しかし地質年代境界の年代数値は、時代とともに少しずつ変化している。現在用いられている地質年代表(ICS, 2009)では、地質年代範囲によって境界の年代数値を定めた定義が異なっており、それぞれで年代数値の信頼性の意味が異なっていることに注意すべきである。先 カンブリア紀以前の地質年代境界は年代数値でによって定義されるので、年代数値の誤差はない。一方、新第三紀以降の年代境界に対する年代数値は天文年代が採用され、誤差は表示されている年代数値の桁数未満であるとして誤差はつけられていない。しかし天文年代は、ミランコビッチサイクルが地球表面の平均的温度を支配しているとの前提で求められたモデル年代であるので、さらに検討される必要がある。古第三紀からカンブリア紀までの地質年代境界の年代値は、各層に含まれている岩石・鉱物などの放射年代測定値を基に推定されているので年代数値に誤差がつけられている。地質年代表で採用されている年代数値は4桁であるが、これは放射年代測定などの確度などを基準として採用されている。
また連続した海洋底堆積物が示す古地磁気の正磁極、逆磁極のパターンから、古地磁気層序年代表がつくられている。層序境界に対する年代数値は、基準となる複数の境界値を放射年代測定値に基づいて設定し、それらの間は堆積速度一定として年代数値を定めている。Cande and Kent (1995)による古地磁気層序年代表では、5桁から6桁までの数値が与えられているが、基準となる放射年代測定値の有効数値は3桁で、測定誤差はないものとして扱われている。そのため、与えられている年代数値に関しての有効数値としては、3桁程度の信頼性しか保証されていない。
同様に各種の年代層序に基づいた年代表がつくられているが、それらにつけられている年代数値に関しても、基準となる年代数値として放射年代測定値を採用している限り、有効数値としては3桁から高々4桁までしか保証されていないことに、十分注意する必要があろう。