日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL38] 地球年代学・同位体地球科学

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

17:15 〜 18:30

[SGL38-P02] 化学的前処理法の違いによる放射性炭素年代測定に対する影響評価

*山田 隆二1國分(齋藤) 陽子2若月 強1安江 健一2 (1.防災科学技術研究所、2.日本原子力研究開発機構)

キーワード:放射性炭素年代測定法、酸-アルカリ-酸処理、酸-アルカリ-酸化処理、セルロース抽出

斜面崩壊、地すべり、土石流などマスムーブメント及び断層変位は、発生地域の地形を大きく変える自然現象であり、将来の地質環境の予測・評価ではそれらの履歴を復元し長期的な地形の安定性を評価することが重要である。過去に発生した現象により堆積物に埋没した樹木片試料などを用いた放射性炭素年代測定に基づいて履歴の復元を行うためには、既存文献のデータをコンパイルし、分析者や前処理法が異なる年代測定結果を比較することが必要となる。
本研究では、島根県・津和野町の土砂堆積物の中から採取した約600〜2200年及び約4万5千年前に枯死したと考えられる樹木試料(木片や炭質物試料)を用いて、化学的洗浄法(酸-アルカリ-酸処理、セルロース抽出、酸-アルカリ-酸化処理と段階加熱処理の組合せ)、洗浄処理者や同位体比測定者を様々に組み合わせて得られる放射性炭素年代測定結果を評価した。放射性炭素の測定には加速度質量分析法を用いた。
放射性炭素年代値が約2200年より若い試料(3個)において、それぞれの実験プロトコルに従っている限りにおいては、作業者、測定者の違いによる年代値のばらつき、不一致は測定誤差より小さい。約4万5千年の試料(5個)において、年代測定結果は化学的洗浄法、作業者、測定者の組合せによって測定誤差(約200〜900年、約0.5〜1.7%程度)を超えたばらつきが見られる(約2100〜3500年、約5〜8%程度)ものの、結果の加重平均値は試料採取した露頭層序と一致する。年代値のばらつきは従来研究と同等であった(例えばReimer et al., 2013, Radiocarbon, 55, 1869-1887)。したがって、特定の実験上の要素に起因する系統誤差の影響は小さいと考えられる。