日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL39] 上総層群における下部ー中部更新統境界GSSP

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*岡田 誠(茨城大学理学部理学科)、菅沼 悠介(国立極地研究所)、風岡 修(千葉県環境研究センター地質環境研究室)

17:15 〜 18:30

[SGL39-P04] 房総半島中部に分布する上総層群下部-中部更新統の石灰質ナンノ化石層序と古海洋環境

*渡辺 賢人1亀尾 浩司1 (1.千葉大学理学研究科地球生命圏科学専攻地球科学コース)

本邦中部太平洋側に位置する房総半島には第四系の海成堆積物から構成される上総層群が分布する. 露頭条件が良いことや化石を多く含むことから, 岩相層序学的研究や古地磁気層序学, テフラ層序学, 微化石層序学のような年代層序学的な研究が行われてきた (新妻, 1976; 佐藤ほか, 1988; 五十嵐, 1994など). このうち下部-中部更新統に相当する国本層には, ブリュンヌ/松山境界 (Matuyama/Brunhes Boundary: MBB) が記録されており, GSSP (Global Boundary Stratotype Section and Point) 模式地の有力な候補のうちの一つとなっている (Kazaoka. et al., 2015). そのため, 前期-中期更新世の正確な年代を決定するために, より詳細な年代層序の検討が必要であると言える. ところが, 国本層に産出する石灰質ナンノ化石は, 必ずしも高い時間解像度で解析されているわけではない (佐藤ほか,1988). そのため, 当層準における石灰質ナンノ化石層序は十分に検討されておらず, 化石基準面も明らかにされていない. よって本研究ではMBB相当層準の石灰質ナンノ化石基準面を明らかにするとともに, 群集変化に基づいて同層準堆積当時の北西太平洋の表層海洋環境を推定するために, 国本層の石灰質ナンノ化石の検討を行った. 検討した66試料からは, 10属19種の石灰質ナンノ化石が産出した. 検討層準を通じて種組成に変化はないが, そのうち, 小型のGephyrocapsa属が多産する層準がMBB直上に位置し, この多産イベントは顕著である. この層準のイベントはイタリア南部のMontalbano JonicoやValle di Mancheでも指摘されていることから (Girone et al., 2013), グローバルに追跡可能なイベントである可能性がある. さらに, 寒冷な環境指標種であるCoccolithus pelagicusや温暖な環境指標種であるUmbilicosphaera sibogaeの産出には逆相関する関係が見られた. 層位分布をみるとUmbilicosphaera sibogaeが全層準を通して増減を繰り返す傾向が見られることから, 黒潮水域と混合水域の北上, 南下が交互に起きていたと考えられる.
引用文献
Girone et al., 2013, Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 371, 62-79. http://www.elsevier.com
五十嵐, 1994, 地質学雑誌, 100, 348-359
Kazaoka et al., 2015, Quaternary International, 383, 116-135.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quaint.2015.02.065
新妻, 1976, 地質学雑誌, 82, 163-181
佐藤ほか, 1988, 石油技術協会誌, 53, 475-491