日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL40] 「泥火山」の新しい研究展開に向けて

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*土岐 知弘(琉球大学理学部)、浅田 美穂(国立研究法人海洋研究開発機構)、井尻 暁(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、森田 澄人(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門)、辻 健(九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)、喜岡 新(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、田中 和広(山口大学大学院理工学研究科)

17:15 〜 18:30

[SGL40-P04] 背斜軸および断層に沿った泥火山から噴出する流体の上昇過程

*浅野 慶治1田中 和広1鈴木 浩一2 (1.山口大学、2.電力中央研究所)

キーワード:泥火山、台湾、流体、背斜、断層帯、CSAMT法

泥火山の噴出箇所や流体の上昇過程に地質・地質構造の与える影響について一般化することを目的として,台湾南西部の古亭坑背斜軸沿いの泥火山(KMV)と旗山断層沿いの泥火山(CMV)において地表踏査及び噴出する水,ガスの地化学的検討を行った.また,旗山断層沿いにおいて,CSAMT法を用いて地下の比抵抗分布を求めた.
台湾南西部燕巣地域には,中新世の泥岩,砂岩,鮮新世のシルト岩が分布する.また,NE-SW方向に南東傾斜の逆断層(旗山断層)が分布し,NNW-SSE方向に褶曲軸をもつ背斜構造が認められる.そして台湾南西部の泥火山を形態的特徴によって4つのタイプに分けた.コーン型は1 m以上の比高を持つ円錐状の高い高まりであり,プリン型は1 m以下の比高を持つ円錐状の高まりである.クレーター型は内部に壁面が見られること,プール型は高まりを持たないプールでそれぞれ特徴付けられる.その中でもコーン型はCMVのみに見られることが明らかとなった.断層沿いでは流体が上昇する過程で,泥や粘土を取り込むことで含水比が低くなっていると考えられる.CMVから噴出する地下水の酸素同位体比はKMVのものに比べて重い.このことは,断層沿いではより深部の地温の高い領域で十分に同位体交換が起こったことを示唆する.CMVから噴出するガスの起源は,熱分解起源である.KMVのガスの起源は,微生物起源と熱分解起源が混合したものであり,微生物起源ガスが地下浅部で生成され,より深部から上昇してきた熱分解起源ガスと混合していると考えられる.さらに台湾南西部の泥火山から噴出するガスは全体的に微生物分解を受けており,CMVではその程度に差がみられる.一方,KMVでは一様に微生物分解を受けている.また,台湾南西部の泥火山から噴出する泥に含まれる,ビトリナイトの反射率による古地温から推定される最大埋没深度は,CMVのものは約3,500 mであり,約2,500 mのKMVのものよりも深い.CSAMT法により得られた比抵抗分布からは,台湾南西部燕巣地域では,旗山断層沿いに低比抵抗帯が分布していることが明らかとなり,断層沿いに流体が上昇していることが明らかとなった.
台湾における検討結果と我が国における既往の研究成果をもとに,泥火山での流体の上昇過程を以下のように推定した.まず,流体の生成深度は断層沿いの泥火山が背斜軸沿いの泥火山よりも深いことが明らかとなった.背斜軸沿いに分布する泥火山では,流体は地下浅部の泥チャンバーで一旦滞留し,その後,脱ガスによるガス圧により,流体は多くの割れ目を作りながら上昇する.そして流体は地表で激しく噴出し,泥火山を形成する.また,流体の噴出後に陥没構造が形成される.一方,断層沿いに分布する泥火山では,流体は粘土質の断層ガウジを含む断層破砕帯に沿って粘土や泥を取り込みながら上昇する.そして断層破砕帯の中をさまざまな経路で上昇し,ほとんどの流体は断層沿いに地表で穏やかに噴出すると考えられる.