17:15 〜 18:30
[SIT06-P05] 金属メルトのマントルレオロジーに対する効果
キーワード:粘性率、金属メルト、オリビン
コア‐マントル境界域では、主にポストぺロブスカイト相からなるマントル物質に外核物質である鉄合金メルトが混ざった状態であると推定されている。しかしながら、マントル物質とコア物質の化学的・力学的相互作用についてはよくわかっていないことが多い。本研究では、こうした問題を考える上で重要な、金属メルトがマントル物質の流動に与える影響を実験により検証した。
Hirth & Kohlstedt (2003) によれば、一定応力下でのメルトを含む多結晶体のクリープ速度はメルトの体積分率の指数関数で表わされ(dε/dt ∝ exp(αφ))、メルト分率が多いほど柔らかい。濡れ性の良い玄武岩質メルトでは、高いα値を取るのに対して (Scott & Kohlstedt, 2006)、Hustoft et al. (2007) は濡れ性の悪い金や硫化鉄の入ったオリビン多結晶体の変形実験を行い、低いα値を得た。メルトと固相の濡れ性がα値を決めていることが分かっているものの、結晶に対するメルトの相対的な大きさや歪の効果は未だ不明である。本研究では、Hustoft et al. (2007) と同様に、オリビン多結晶体に金を混ぜた物質の変形実験を行い、その粘性率と先行研究のそれとを比較することで、これらの因子がマントル物質のレオロジーにどういう影響を与えるのかを調べた。
水酸化マグネシウム、二酸化ケイ素及び金の微粒粉を混合し、固相反応からフォルステライト+エンスタタイトを合成し、得られた鉱物粉を真空下で焼結することで金入りオリビン多結晶体を作製した。フォルステライト、エンスタタイト、金の体積分率はそれぞれ81 %, 9 %, 10 %であった。また、オリビンの平均粒径は0.7 μm、金の平均粒径は0.8 μmであった。この試料を用いて、大気圧下で一軸圧縮の高温クリープ実験を行った。一定温度下(1200℃・1300℃)で 10 MPa, 20 MPa, 40 MPa, 80 MPaと階段状に応力を変化させ、その時の歪速度を測定した。時間と歪の関係が線形になったところを試料の定常クリープとみなし、その際の歪速度を得た。実験後、回収試料の微細構造を走査型電子顕微鏡によって観察した。
得られた応力―歪み速度の関係から、dε/dt ∝ σ1.7 を得た。また、等方形状をした金粒子が、実験後に圧縮方向に対し垂直につぶれていることを観察した。また、金を含まないフォルステライト+エンスタタイト試料のクリープ強度と比較すると、本研究の試料は4 ~ 8倍柔らかかった。さらに、Hustoftの結果と比較しても、同じメルト分率で本研究の試料が 3 ~ 4倍柔らかかった。
Hustoftの実験では変形による金粒子の変形が見られないのに対し、本研究では、金の著しい変形が観察された。本研究の試料が柔らかかったことは、オリビンに対する金メルトの粒径が大きいために金メルトが大きく変形し、それに伴ってオリビンにかかる応力が増大したことで説明できるかもしれない。
Hirth & Kohlstedt (2003) によれば、一定応力下でのメルトを含む多結晶体のクリープ速度はメルトの体積分率の指数関数で表わされ(dε/dt ∝ exp(αφ))、メルト分率が多いほど柔らかい。濡れ性の良い玄武岩質メルトでは、高いα値を取るのに対して (Scott & Kohlstedt, 2006)、Hustoft et al. (2007) は濡れ性の悪い金や硫化鉄の入ったオリビン多結晶体の変形実験を行い、低いα値を得た。メルトと固相の濡れ性がα値を決めていることが分かっているものの、結晶に対するメルトの相対的な大きさや歪の効果は未だ不明である。本研究では、Hustoft et al. (2007) と同様に、オリビン多結晶体に金を混ぜた物質の変形実験を行い、その粘性率と先行研究のそれとを比較することで、これらの因子がマントル物質のレオロジーにどういう影響を与えるのかを調べた。
水酸化マグネシウム、二酸化ケイ素及び金の微粒粉を混合し、固相反応からフォルステライト+エンスタタイトを合成し、得られた鉱物粉を真空下で焼結することで金入りオリビン多結晶体を作製した。フォルステライト、エンスタタイト、金の体積分率はそれぞれ81 %, 9 %, 10 %であった。また、オリビンの平均粒径は0.7 μm、金の平均粒径は0.8 μmであった。この試料を用いて、大気圧下で一軸圧縮の高温クリープ実験を行った。一定温度下(1200℃・1300℃)で 10 MPa, 20 MPa, 40 MPa, 80 MPaと階段状に応力を変化させ、その時の歪速度を測定した。時間と歪の関係が線形になったところを試料の定常クリープとみなし、その際の歪速度を得た。実験後、回収試料の微細構造を走査型電子顕微鏡によって観察した。
得られた応力―歪み速度の関係から、dε/dt ∝ σ1.7 を得た。また、等方形状をした金粒子が、実験後に圧縮方向に対し垂直につぶれていることを観察した。また、金を含まないフォルステライト+エンスタタイト試料のクリープ強度と比較すると、本研究の試料は4 ~ 8倍柔らかかった。さらに、Hustoftの結果と比較しても、同じメルト分率で本研究の試料が 3 ~ 4倍柔らかかった。
Hustoftの実験では変形による金粒子の変形が見られないのに対し、本研究では、金の著しい変形が観察された。本研究の試料が柔らかかったことは、オリビンに対する金メルトの粒径が大きいために金メルトが大きく変形し、それに伴ってオリビンにかかる応力が増大したことで説明できるかもしれない。