日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT08] Structure and Dynamics of Suboceanic Mantle

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*是永 淳(イェール大学地球科学科)、川勝 均(東京大学地震研究所)、Gaherty James(Lamont Doherty Earth Observatory)、馬場 聖至(東京大学地震研究所)

17:15 〜 18:30

[SIT08-P09] Effects of chemical composition and melting on viscosity and electrical conductivity of synthesized lherzolite.

*末善 健太1平賀 岳彦1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:viscosity, electrical conductivity, melt

マントルの粘性率と電気伝導度はマントル上昇中にソリダス温度で急激に変化すると考えられている。上昇マントル(例:中央海嶺)の物性へのメルトの影響を評価するため、またメルトを含まない試料との間の相違をはっきりさせるため、合成レールゾライト試料の粘性率と電気伝導度を大気圧下でソリダス以下から温度を上げつつ測定した。
50nm以下のMg(OH)2, SiO2, CaCO3 とスピネル粉末を原料とし、フォルステライト, エンスタタイト, ダイオプサイド, アノーサイトの4相で構成されるレールゾライトを合成した。試料はソリダス温度(~1230°C)以下で焼結され、添加するAl量(スピネルとして添加)を調節することによりソリダス温度以上で生じる初期メルト量を調節し、メルト分率φ = 0.005 ~ 0.06 の範囲で測定した。
ソリダス以上でのメルトの効果を評価する基準となるソリダス温度以下での測定結果にも、新しい発見がいくつかあった。Alによる粘性率の減少と、Caによる電気伝導度の増加である。フォルステライト + エンスタタイト + ダイオプサイドにスピネルを加えた試料は加えない試料と比べて1桁近く柔らかい。fo + en + diはfo + en (Tasaka et al., 2013)と一致し、フォルステライト + エンスタタイトにスピネルを加えた試料においても同様の粘性率低下が見られたことから、これはAlの効果であると推定できる。一方でダイオプサイドを含む全ての試料の電気伝導度は、フォルステライト + エンスタタイト で報告されているMg2+の粒界拡散 (活性化エネルギー~320kJ/mol)による値(ten Grotenhuis et al., 2004)よりも高い値と低い活性化エネルギー(~180kJ/mol)を示し、粒径依存性は見られなかった。このことから、添加されたCaによってフォルステライトの粒内拡散速度が上がったと解釈できる。
ソリダス以上では、生じたメルト量に応じた変化が粘性率と電気伝導度の両方で見られた。初出メルト量の最も少ない(φ= 0.005)試料ではサブソリダスから連続的な変化が見られたが、φ= 0.04の試料ではソリダス前後で粘性率・電気伝導度にそれぞれ階段状の減少・増加が見られた。粘性率へのメルトの効果は、経験的な表式η ∝ exp(αφ) で表すとα = 69となり、この値は天然鉱物を原料とするレールゾライトの拡散クリープにおいて報告されている値α= 21 (Zimmerman and Kohlstedt, 2004)と比べてかなり大きい。