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[SIT09-12] オマーンオフィオライト・フィズ岩体マントルセクションの酸化還元状態:マントルウェッジのアナログ研究
キーワード:オマーンオフィオライト、酸化還元状態、マントルかんらん岩、マントルウェッジ、酸素フガシティー、沈み込み帯
岩石の酸化還元状態を知ることは、相平衡状態や元素分配を制約する重要な情報となり得る.マントルかんらん岩については、島弧域でのマントル捕獲岩などと比較して海洋底かんらん岩はより還元的との報告がなされている (Parkinson and Pearce, 1998).これは海洋リソスフェアが沈み込む過程において脱水作用を被り、水や二酸化炭素といった“酸化的な流体”がマントルウェッジの下部に供給されているためと考えられる.
オマーンオフィオライトのマントルセクションは衝上の過程で沈み込み帯のセッティングを経ており、マントルウェッジの酸化還元状態を探る上で格好のアナログになりうる.そこで本研究は、オマーンオフィオライト北部のFizh岩体を沈み込み帯のマントルウェッジのプロキシとして捉え、酸化還元状態の傾向とその要因について考察する.マントルセクションのかんらん岩を対象に、カンラン石とスピネルの化学組成からBallhaus et al. (1991) の計算式を用いてdelta log fO2 (FMQ)を算出した.スピネルの二価鉄と三価鉄の比はストイキオメトリーを仮定した。計算値をFizh岩体の上にプロットした結果、東部のモホ面側でより酸化的に、西部の基底スラスト面側でより還元的となることが分かった.これは沈み込むスラブと接触するマントルセクション最下部が最も還元的になることを示している.
EPMAによる分析値とストイキオメトリーによって計算したスピネルの二価鉄と三価鉄の比をメスバウアー分析による結果と比較したところ両者に有意の差は認められず、delta log fO2 (FMQ)の計算結果に与える影響は限定的であった.続いて,酸素フガシティーに敏感であるバナジウムとそうでないスカンジウムとの比を酸素フガシティーのプロキシとして捉え、delta log fO2 (FMQ)との関係を検討した.その結果、V/Sc比が減少する還元的な試料ほどdelta log fO2 (FMQ)は低く、反対にV/Sc比が増加する酸化的な試料ほどdelta log fO2 (FMQ)は高くなるような負の相関が認められた.この結果からもマントルセクション最下部がマントルセクション上部よりも還元的であることが支持される.
Fizh岩体マントルセクションの最下部が還元的となる要因として、沈み込んだ還元的な堆積物の溶融で生じた還元的なメルトとの反応が考えられる.基底スラスト面付近にあたるdelta log fO2 (FMQ)値の低い試料は、全岩および単斜輝石でともに比較的高いTh/Ce比を持つ傾向がある.高いTh/Ce比は海洋性堆積物の寄与を示す特徴の一つであり,それらの影響が示唆される。また、基底スラスト面付近のかんらん岩のかんらん石中の流体包有物のラマンスペクトルからはメタンのピークが検出された.一方,モホ面付近の試料中の流体包有物からはメタンのピークは認められず,流体包有物のメタンは蛇紋岩化作用によるものではなく,沈み込んだ堆積物由来である可能性が示唆される.すなわち,オマーンオフィオライトはその衝上の過程で海洋性堆積物がメルトの供給に関与し、その還元的なメルトがマントルウェッジの下部から浸透し、周囲のかんらん岩をより還元的にさせたと考えられる。
オマーンオフィオライトのマントルセクションは衝上の過程で沈み込み帯のセッティングを経ており、マントルウェッジの酸化還元状態を探る上で格好のアナログになりうる.そこで本研究は、オマーンオフィオライト北部のFizh岩体を沈み込み帯のマントルウェッジのプロキシとして捉え、酸化還元状態の傾向とその要因について考察する.マントルセクションのかんらん岩を対象に、カンラン石とスピネルの化学組成からBallhaus et al. (1991) の計算式を用いてdelta log fO2 (FMQ)を算出した.スピネルの二価鉄と三価鉄の比はストイキオメトリーを仮定した。計算値をFizh岩体の上にプロットした結果、東部のモホ面側でより酸化的に、西部の基底スラスト面側でより還元的となることが分かった.これは沈み込むスラブと接触するマントルセクション最下部が最も還元的になることを示している.
EPMAによる分析値とストイキオメトリーによって計算したスピネルの二価鉄と三価鉄の比をメスバウアー分析による結果と比較したところ両者に有意の差は認められず、delta log fO2 (FMQ)の計算結果に与える影響は限定的であった.続いて,酸素フガシティーに敏感であるバナジウムとそうでないスカンジウムとの比を酸素フガシティーのプロキシとして捉え、delta log fO2 (FMQ)との関係を検討した.その結果、V/Sc比が減少する還元的な試料ほどdelta log fO2 (FMQ)は低く、反対にV/Sc比が増加する酸化的な試料ほどdelta log fO2 (FMQ)は高くなるような負の相関が認められた.この結果からもマントルセクション最下部がマントルセクション上部よりも還元的であることが支持される.
Fizh岩体マントルセクションの最下部が還元的となる要因として、沈み込んだ還元的な堆積物の溶融で生じた還元的なメルトとの反応が考えられる.基底スラスト面付近にあたるdelta log fO2 (FMQ)値の低い試料は、全岩および単斜輝石でともに比較的高いTh/Ce比を持つ傾向がある.高いTh/Ce比は海洋性堆積物の寄与を示す特徴の一つであり,それらの影響が示唆される。また、基底スラスト面付近のかんらん岩のかんらん石中の流体包有物のラマンスペクトルからはメタンのピークが検出された.一方,モホ面付近の試料中の流体包有物からはメタンのピークは認められず,流体包有物のメタンは蛇紋岩化作用によるものではなく,沈み込んだ堆積物由来である可能性が示唆される.すなわち,オマーンオフィオライトはその衝上の過程で海洋性堆積物がメルトの供給に関与し、その還元的なメルトがマントルウェッジの下部から浸透し、周囲のかんらん岩をより還元的にさせたと考えられる。