17:15 〜 18:30
[SIT09-P06] オマーンオフィオライトFizh岩体北部における蛇紋岩化プロセスの推定
キーワード:オマーンオフィオライト、蛇紋岩化作用、蛇紋石、リザダイト、磁鉄鉱
オマーンオフィオライトのマントルセクションは,蛇紋岩化したハルツバージャイト,ダナイト,レルゾライトで構成される.オマーンオフィオライトは高速拡大軸の海洋リソスフェアの断片が衝上することで形成されたと考えられており,マントルセクションのかんらん岩は海洋底下での熱水活動を保存している可能性が高い.また,オマーンオフィオライト下底部分にはメタモルフィックソールと呼ばれる接触変成岩が分布しており,基底スラスト直上のかんらん岩は衝上時に流体の供給を受けた可能性がある.したがって,本研究ではオマーンオフィオライトのかんらん岩は複数の段階を経て熱水変質を被っていると考え,オマーンオフィオライトFizh岩体北部地域から採取したかんらん岩の蛇紋石鉱物の産状及び鉱物化学組成に基づき,オマーンオフィオライトが被った蛇紋岩化のプロセスを推定した.
オマーンオフィオライトでは,マントルセクション全域に渡って低温型蛇紋石であるリザダイトがメッシュ状,あるいは脈状に観察できる.さらに,一部の単斜輝石がトレモライトに変質していることと,高温型蛇紋石であるアンチゴライトが観察されないことから,約600~900℃程度の温度下で流体が供給されたと推定される.従来,海洋底における蛇紋岩化は400~500℃以下の低温で進行すると考えられてきたが,本研究結果はオマーンオフィオライトのような高速拡大軸における海水の浸透がより高温で起きている可能性を示唆する.
また,基底部のかんらん岩とマントルセクション内部~モホ遷移帯のかんらん岩を鏡下で比較した結果,基底スラスト直上の蛇紋石中にはその他の地域と比較して多量のマグネタイトが形成されていること,基底スラスト直上の斜方輝石の周囲に滑石が生じていることが明らかとなった.先行研究では蛇紋岩化作用は少なくとも二段階のプロセスを経て進行すると考えられており,マグネタイトの形成は蛇紋岩化の後期に起こるとされている.また,650~750℃(>6kbar)で斜方輝石に流体が供給されると滑石とフォルステライトが形成されることから,基底部のかんらん岩はオフィオライトの衝上の初期に比較的高温下で多量の流体の供給を受けたと推定される.
本研究では先行研究を参考にマグネタイトの形成とSiO2活動度に関係があると仮説を立て,基底部とマントルセクション内部~モホ遷移帯の蛇紋石の組成をマグネタイトの有無や蛇紋石の組織(メッシュ組織・脈状組織)で比較した.マントルセクション内部のハルツバージャイトにおいては,蛇紋石のメッシュ組織にはマグネタイトはほぼ見られず,蛇紋石の脈中にのみまれにマグネタイトが形成されている.これをEPMAで測定した結果,マグネタイトを形成する脈はマグネタイトを形成しない脈・メッシュ組織よりもSi+Al(O=7)の値が高く,Fe+Mg(O=7)の値が低い傾向が示された.これは,Bach et al. (2006)における高いSiO2アクティビティ下でブルーサイトから蛇紋石とマグネタイトが形成(9Fe(OH)2+SiO2=2Fe3Si2O5(OH)4+Fe3O4+4H2O+H2)するという仮説と調和的である.また,基底部におけるマグネタイトと共存する蛇紋石のMg#は,マントルセクション内部におけるマグネタイトと共存する蛇紋石のMg#よりもやや低い値を示す。基底部では蛇紋岩化がマントルセクション内部よりもFe,Mgの拡散速度が速い高温下で起きたために,マグネタイトの形成に必要なFeをより広範囲の蛇紋石から得ることができたと考えられる.マントルセクション内部には一様にリザダイトが存在し,モホ面からの距離と蛇紋岩化の程度や産状に相関が認められないことから,低温下(<300℃)の蛇紋岩化作用は衝上後から現在にいたるまで天水等の浸透により進行したものと推測する.
オマーンオフィオライトでは,マントルセクション全域に渡って低温型蛇紋石であるリザダイトがメッシュ状,あるいは脈状に観察できる.さらに,一部の単斜輝石がトレモライトに変質していることと,高温型蛇紋石であるアンチゴライトが観察されないことから,約600~900℃程度の温度下で流体が供給されたと推定される.従来,海洋底における蛇紋岩化は400~500℃以下の低温で進行すると考えられてきたが,本研究結果はオマーンオフィオライトのような高速拡大軸における海水の浸透がより高温で起きている可能性を示唆する.
また,基底部のかんらん岩とマントルセクション内部~モホ遷移帯のかんらん岩を鏡下で比較した結果,基底スラスト直上の蛇紋石中にはその他の地域と比較して多量のマグネタイトが形成されていること,基底スラスト直上の斜方輝石の周囲に滑石が生じていることが明らかとなった.先行研究では蛇紋岩化作用は少なくとも二段階のプロセスを経て進行すると考えられており,マグネタイトの形成は蛇紋岩化の後期に起こるとされている.また,650~750℃(>6kbar)で斜方輝石に流体が供給されると滑石とフォルステライトが形成されることから,基底部のかんらん岩はオフィオライトの衝上の初期に比較的高温下で多量の流体の供給を受けたと推定される.
本研究では先行研究を参考にマグネタイトの形成とSiO2活動度に関係があると仮説を立て,基底部とマントルセクション内部~モホ遷移帯の蛇紋石の組成をマグネタイトの有無や蛇紋石の組織(メッシュ組織・脈状組織)で比較した.マントルセクション内部のハルツバージャイトにおいては,蛇紋石のメッシュ組織にはマグネタイトはほぼ見られず,蛇紋石の脈中にのみまれにマグネタイトが形成されている.これをEPMAで測定した結果,マグネタイトを形成する脈はマグネタイトを形成しない脈・メッシュ組織よりもSi+Al(O=7)の値が高く,Fe+Mg(O=7)の値が低い傾向が示された.これは,Bach et al. (2006)における高いSiO2アクティビティ下でブルーサイトから蛇紋石とマグネタイトが形成(9Fe(OH)2+SiO2=2Fe3Si2O5(OH)4+Fe3O4+4H2O+H2)するという仮説と調和的である.また,基底部におけるマグネタイトと共存する蛇紋石のMg#は,マントルセクション内部におけるマグネタイトと共存する蛇紋石のMg#よりもやや低い値を示す。基底部では蛇紋岩化がマントルセクション内部よりもFe,Mgの拡散速度が速い高温下で起きたために,マグネタイトの形成に必要なFeをより広範囲の蛇紋石から得ることができたと考えられる.マントルセクション内部には一様にリザダイトが存在し,モホ面からの距離と蛇紋岩化の程度や産状に相関が認められないことから,低温下(<300℃)の蛇紋岩化作用は衝上後から現在にいたるまで天水等の浸透により進行したものと推測する.