日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT09] Hard-Rock Drilling: Oceanic Lithosphere to Continental Crust Formation

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*田村 芳彦(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、Straub Susanne(コロンビア大学ラモント地球科学研究所)、佐野 貴司(国立科学博物館地学研究部)、海野 進(金沢大学理工研究域自然システム学系)、高澤 栄一(新潟大学理学部地質科学科)、道林 克禎(静岡大学学術院理学領域)

17:15 〜 18:30

[SIT09-P07] オマーンオフィオライトのメタモルフィックソールの原岩としてのHaybi火山岩類の地球化学的検証

*坂下 雅1森 菜美子1高澤 栄一2野原 里華子2高橋 俊郎2田村 芳彦3 (1.新潟大学大学院自然科学研究科、2.新潟大学理学部地質科学科、3.海洋掘削科学研究開発センター,海洋開発研究機構)

キーワード:オマーンオフィオライト、メタモルフィックソール、Haybi火山岩類、OIB、N-MORB、E-MORB

本研究は,オマーンオフィオライト北部Fizh岩体Sumeini Window のAsh Shiyah地域から得られたHaybi火山岩類とメタモルフィックソールの角閃岩の主成分および微量元素組成およびNd同位体を比較し,メタモルフィックソールの原岩の検討を行った.Haybi火山岩類は枕状溶岩とシート状溶岩の互層からなる.一部の火山岩類は,メタモルフィックソールの下位に分布する赤色チャートに包有されたブロック状の枕状溶岩として産する。一方,メタモルフィックソールは,角閃岩相から緑色片岩相の変成岩類からなる.これらの変成岩類の原岩は,メタモルフィックソールの下位に位置するHaybiコンプレックスとされている.
変質の影響を受けにくい元素を用いた組成判別図と希土類元素(REE)のC1コンドライト規格化パターンによる検討の結果,本地域の火山岩類は海洋島玄武岩(OIB)とEタイプ中央海嶺玄武岩(E-MORB)に分けられることが明らかになった.層序的に,OIBが下位に,E-MORBが上位に位置し,前者が枕状溶岩とシート状溶岩に,後者が赤色チャートに包有されたブロック状の枕状溶岩に対応する.一方,同様な検討の結果,角閃岩の原岩は,Nタイプ中央海嶺玄武岩(N-MORB)とE-MORBに分けられることが明らかになった.E-MORB的な角閃岩はE-MORB的な枕状溶岩と組成が似ている.Sumeini Windowを横断するワジに沿った角閃岩の分布では,タイプごとの系統性はとくに認められず,N-MORBとE-MORBが混在するところもある.また角閃岩のεNd(96Ma)とLa/Yb比は緩やかな負の相関を示し,その分布はケルゲーレン諸島の玄武岩類と似ている.このような組成の玄武岩は,MORBソースマントルとNd同位体にエンリッチしたマントルを様々な度合で混合し,それらを様々な度合で溶融させることによって説明が可能である.
本研究の結果から,オマーンオフィオライトの下位に沈み込んだ海洋地殻上には,N-MORB, E-MORB, OIBが分布していたことが明らかとなった。これらのうち,N-MORBとE-MORBは深部まで沈み込み,オフィオライトの余熱による接触変成作用によって角閃岩に変成しつつ,オフィオライトの衝上によって基底部に付加した.OIBは接触変成作用を被っていないことから,N-MORBやE-MORBよりもあとに,低温でメタモルフィックソールの下位に付加し,Haybiコンプレックスを形成したと考えられる.