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[SMP43-05] 地殻スケールの粘性流体上昇パターンと高温型変成帯に関連した北部九州白亜紀中頃の地質
キーワード:地殻、変成帯、粘性流体、北部九州、高温型変成岩
粘性流体が浮力上昇する場合に形成される地殻スケールのパターンと,白亜紀中頃の北部九州における高温型変成帯と同時期に形成された地層岩体の分布形態との比較を行った.地殻スケールの粘性流体シミュレーションでは,粘性流体浮力上昇パターンが.粘性率及び密度コントラストが小さい場合はダイヤピル状に,大きい場合は枝分かれした岩脈状になった.両者の遷移領域では,岩脈状と瘤状からなるパターンが出現する.このパターンはストックあるいはバソリス状深成岩体と類似している.シミュレーションでは下底部をゆっくり水平移動させている.粘性率及び密度コントラストが小さく,ダイヤピル上昇速度が水平移動速度と同程度の場合,水平方向へ引き延ばされた変成帯様の構造が形成された.このように,粘性率及び密度コントラストが大きくなるにつれ,浮力上昇する粘性流体のパターンが変成帯様,ダイヤピル状,瘤-岩脈状,岩脈状へと変化した.
一方,白亜紀中頃の北部九州の地層岩体分布から以下のことが言える.1)地殻浅部から深部(〜25km)まで,周防変成岩(智頭変成岩相当も含む)が分布していた.2)大量の珪長質深成岩バソリスが深度10km前後で周防変成岩に貫入している,3)北部九州南部の大牟田地域では、周防変成岩を原岩とし,深度20-25 kmで形成された高温型変成岩が露出している.4)北部九州北部では関門層群中に珪長質火山岩が挟在する.上記2)及び3)のジルコンU-Pb年代は107-97 Ma(珪長質深成岩類)と105.1±5.1 Ma(高温型変成岩)である(宮崎ほか,2014).今回,関門層群珪長質火山岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,111.6±0.8 Ma(脇野亜層群)と106.3±0.7 Ma(下関亜層群)の年代を得た.白亜紀中頃の北部九州では,火山岩噴出を伴う堆積盆,深成岩バソリス,高温型変成帯の形成が同時期に起きていたことを示している.
高温型変成帯,バソリス状深成岩体,堆積盆堆積物に挟在する火山岩はいずれも,地殻深部からメルト,マグマ,メルト・固体の混合体が上昇してきたものである.シミュレーションの結果から,地殻深部でのメルトと固体岩石の分離が進まない場合は,粘性率及び密度コントラストが小さく,変成帯様の構造を生じながら部分溶融した変成岩がゆっくり上昇する.すなわち,火山弧から海溝側へのマントルの水平移流に引きずられて北部九州地殻深部に広範囲に高温型変成帯が形成されていた可能性が示唆される.一方,メルトと固体岩石の分離が進んだ場合,バソリス状深成岩体の貫入,あるいは岩脈状に上昇し火山岩として噴出する.シミュレーションでは,低密度低粘性流体の岩脈状上昇パターンを生じるが,その場合,粘性流体地殻の変形速度は極端に速くなる.実際の地殻はそのように速く塑性変形できない.現実的には,マグマが周囲の地殻を脆性破壊し,岩脈として上昇すると考えられる.加えて,巨大なバソリス形成域や高温型変成帯上昇域周囲には,地表面の相対的下降域が形成されると予想される.北部九州北部の関門層群はそのような下降域(堆積盆)に堆積した可能性がある.
引用文献:宮崎ほか(2014) 日本地質学会第121年学術大会, 講演要旨,p.70.
一方,白亜紀中頃の北部九州の地層岩体分布から以下のことが言える.1)地殻浅部から深部(〜25km)まで,周防変成岩(智頭変成岩相当も含む)が分布していた.2)大量の珪長質深成岩バソリスが深度10km前後で周防変成岩に貫入している,3)北部九州南部の大牟田地域では、周防変成岩を原岩とし,深度20-25 kmで形成された高温型変成岩が露出している.4)北部九州北部では関門層群中に珪長質火山岩が挟在する.上記2)及び3)のジルコンU-Pb年代は107-97 Ma(珪長質深成岩類)と105.1±5.1 Ma(高温型変成岩)である(宮崎ほか,2014).今回,関門層群珪長質火山岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,111.6±0.8 Ma(脇野亜層群)と106.3±0.7 Ma(下関亜層群)の年代を得た.白亜紀中頃の北部九州では,火山岩噴出を伴う堆積盆,深成岩バソリス,高温型変成帯の形成が同時期に起きていたことを示している.
高温型変成帯,バソリス状深成岩体,堆積盆堆積物に挟在する火山岩はいずれも,地殻深部からメルト,マグマ,メルト・固体の混合体が上昇してきたものである.シミュレーションの結果から,地殻深部でのメルトと固体岩石の分離が進まない場合は,粘性率及び密度コントラストが小さく,変成帯様の構造を生じながら部分溶融した変成岩がゆっくり上昇する.すなわち,火山弧から海溝側へのマントルの水平移流に引きずられて北部九州地殻深部に広範囲に高温型変成帯が形成されていた可能性が示唆される.一方,メルトと固体岩石の分離が進んだ場合,バソリス状深成岩体の貫入,あるいは岩脈状に上昇し火山岩として噴出する.シミュレーションでは,低密度低粘性流体の岩脈状上昇パターンを生じるが,その場合,粘性流体地殻の変形速度は極端に速くなる.実際の地殻はそのように速く塑性変形できない.現実的には,マグマが周囲の地殻を脆性破壊し,岩脈として上昇すると考えられる.加えて,巨大なバソリス形成域や高温型変成帯上昇域周囲には,地表面の相対的下降域が形成されると予想される.北部九州北部の関門層群はそのような下降域(堆積盆)に堆積した可能性がある.
引用文献:宮崎ほか(2014) 日本地質学会第121年学術大会, 講演要旨,p.70.