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[SMP43-06] ざくろ石のケリファイト化に伴う物質移動ーその2:内部応力によって生じた変成分化?
キーワード:ケリファイト、ざくろ石、物質移動、変成分化、内部応力、ロンダかんらん岩
ざくろ石が分解してケリファイトに転移するとき,長距離物質移動によりバルク組成が元のざくろ石から変化することはよく知られた現象である。このことからケリファイト化は物質の出入りを伴う開放系の反応であると従来考えられていた。我々はかつて,局所的にはバルク組成が変化するもののケリファイト全体平均組成としてはざくろ石組成に一致する,累帯構造を有するケリファイトを報告し,閉じた系における物質移動の例として報告した(小畑,2014)。本講演では同じ素材を用いてこの変成分化のメカニズムをより具体的に考察する。エッセンスは体積増加反応と反応の進行によって発生すると考えられる内部応力および応力勾配にある。使ったサンプルはスペインロンダ岩体に産するざくろ石輝岩(サンプル,R410)である。岩石はざくろ石,Alに富んだ単斜輝石(Cpx),斜長石(Pl, An60)と少量の石英からなるマフィックグラニュライトである。ざくろ石を置き換えるように発達するケリファイトは斜方輝石(Opx), スピネル(Sp), Pl,Cpxからなる細粒集合体(シンプレクタイト)であるが次の様な同心円的組成累帯構造を示す。すなわち内側は,Opx, Sp, Plからなり,組織的には斜長石マトリクス中に繊維状のOpx が整然と並んだマトリクス中にSp-Opx シンプレクタイトがパッチ状に散在するという2重構造を示す。外側はこのSp-Opx シンプレクタイトパッチの占める割合が多くなり斜長石は存在しなくなる。この外側に偏在するSp-Opxシンプレクタイト部には,局所的に極端に細粒のSp-Cpx-Opxシンプレクタイトが産する。加えてSp-Opxシンプレクタイトの粗大化した部分には少量のCpxも産する。これら種々のシンプレクタイト,ケリファイトについて電子線マイクロプローブで拡大ビーム径(3 ,10 ミクロン)を使い分けてバルク組成を求めたところ,内側のバルクはざくろ石組成よりもSi, Al, Caに富み,Mg, Feに乏しく,外側のSp-Cpx-Opxシンプレクタイトバルク組成はその逆であり,両者を適当な比に混ぜると,Na以外は元のざくろ石組成に一致させることができるということが分かった。ざくろ石の分解反応は全体としては
Grt → Opx + Cpx + An + Sp (1)
であるが,局所的には元素の出入りを伴う二つの交代反応(metasomatic reaction)の組み合わせで考えられることを示す。具体的には,ざくろ石分解反応はケリファイトとざくろ石境界部の第1反応前線で起きるはずであるが,ここは固体ケリファイト殻に囲まれているので体積の自由な増加は許されないので,応力の増大と物質の流出が起こることが考えられる。内側から外に向かって移動する成分は外周の第2の反応前線で再び反応して前にできていた斜長石を消費しSp-Cpx-Opxシンプレクタイトを形成したと考えられる。講演ではケリファイトのローカルバルク組成に基づいて各部における交代反応と物質移動を導出し,このような物質移動と変成分化は反応の進行によりケリファイト内に発生した応力と応力勾配によって引き起こされたという新しいモデルを提示する。
Grt → Opx + Cpx + An + Sp (1)
であるが,局所的には元素の出入りを伴う二つの交代反応(metasomatic reaction)の組み合わせで考えられることを示す。具体的には,ざくろ石分解反応はケリファイトとざくろ石境界部の第1反応前線で起きるはずであるが,ここは固体ケリファイト殻に囲まれているので体積の自由な増加は許されないので,応力の増大と物質の流出が起こることが考えられる。内側から外に向かって移動する成分は外周の第2の反応前線で再び反応して前にできていた斜長石を消費しSp-Cpx-Opxシンプレクタイトを形成したと考えられる。講演ではケリファイトのローカルバルク組成に基づいて各部における交代反応と物質移動を導出し,このような物質移動と変成分化は反応の進行によりケリファイト内に発生した応力と応力勾配によって引き起こされたという新しいモデルを提示する。