日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP43] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:00 201B (2F)

コンビーナ:*河上 哲生(京都大学大学院理学研究科)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、座長:河上 哲生(京都大学大学院理学研究科)

11:00 〜 11:15

[SMP43-08] 変成岩中の炭質物の見かけの格子面間隔d002とラマンR2パラメータの相関

*白石 彩華2星野 健一1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻、2.広島大学理学部地球惑星システム学科)

キーワード:炭質物、d002、ラマン R2

堆積岩中の炭質物の格子面間隔d002は,変成程度の指標としてこれまで多くの研究がなされてきた。Itaya (1981)は,三波川帯の汗見川に沿って変成度の上昇とともに見かけのd002値が減少することを指摘し,高見・西村(2000)は,広島県弥栄峡の玖珂層群中の炭質物の見かけのd002が,広島型花崗岩との接触境界に向けて減少すると報告している。また,千々和ほか(1993)も,山口県須佐地域の須佐層群中の炭質物の見かけのd002が,高山はんれい岩との接触境界に向けて減少すると述べている。一方で,Beyssac et al.(2002)は,炭質物のラマンスペクトルのR2パラメータを用いた地質温度計,T (℃) = -445 R2 + 641,を提唱し,上記汗見川沿いの三波川帯の変成温度解析を行った。
本研究では,上記3地域の変成岩中の炭質物のR2パラメータの測定を行い,上記の研究で報告された見かけのd002との比較を行った。その結果,R2パラメータは岩石ごとに標準偏差が大きいものの,その最頻値とd002は,R2 ≤ 0.75かつd002 < 3.60の範囲で良い相関を示すことが明らかとなった(Fig. 1)。
この相関は単純な双曲線関数,(R2 - a) (d002 - b) = k,で近似される。従って,これまで多く測定されてきた見かけのd002に対して,T (℃) = -445 (k / (d002 - b) + a) + 641で示される温度スケールを当てはめることが出来る。上記の条件を満たす全ての地域のデータでは,R2の漸近値(a)とd002の漸近値(b)およびkの値は,それぞれ0.95,3.26,-0.064である(R2 = 0.94)。また,汗見川地域のみでは,それぞれ0.96,3.28,-0.058(R2 = 0.94),弥栄地域のみでは,それぞれ0.89,3.27,-0.046(R2 = 0.97)となるが,須佐地域ではほとんどの炭質物が上記の条件を満たさないため,これらを求めることは出来ない。
Beyssac et al.(2002)の地質温度計の適応可能範囲はR2 < 0.7であるため,上記の相関を地質温度計として使用するには,ほとんどがこの範囲内のデータの回帰から求めた汗見川地域のパラメータセットを用いた方が良い。