17:15 〜 18:30
[SMP43-P08] 沈み込み帯における地殻―マントル物質境界の交代作用:四国中央部三波川帯富郷地域の蛇紋岩岩体における例
キーワード:地殻ーマントル境界、交代作用、蛇紋岩、三波川帯、泥質片岩、塩基性片岩
沈み込み帯において,地殻とマントルの物質境界は大規模な物質移動が起きると考えられており,マントルかんらん岩の加水反応・交代作用によって生成した蛇紋岩(蛇紋石,ブルース石,滑石など)がスラブの滑りの挙動に大きく寄与していることが指摘されている (e.g., Peacock and Hyndman, 1999; Mizukami et al., 2014). マントルかんらん岩とシリカに富む地殻起源の流体との交代作用は,MgO-SiO2-H2O系における反応が考えられているが (Manning, 1995, 1997), 地殻とマントル物質境界の交代作用に着目した研究は限られており(e.g., Peacock, 1987; King et al., 2003), 多元素の移動プロセスや加水・脱水反応との関係はよくわかっていない.
本研究では,四国中央部三波川帯の富郷地域に産する蛇紋岩ブロック(以下,富郷岩体と呼ぶ)における2つの地殻-マントル境界について検討を行う.この蛇紋岩体は約20メートルほどのサイズであり,北側と南側で地殻物質と接している.そのため,沈み込み帯における交代作用を読み解くのに適している.富郷岩体はざくろ石帯のに位置している.富郷岩帯はほぼすべて蛇紋岩化しているが,ブルース石の産出は見られない.また,輝石の痕跡はなく源岩はダナイトであると考えられる.地殻物質との境界から離れた場所ではブロックとマトリックスのアンチゴライトが観察され,ブレッチャ化もしくはblock-in-matrix構造をなす.ブロックのアンチゴライトは細粒であるのに対して,マトリックスのアンチゴライトは粗粒の板状結晶からなっている.
富郷岩体北側の地殻とマントルの物質境界は塩基性片岩と超塩基性岩が接しており,超塩基性岩内に透閃石+滑石の脈が産出する.一方,富郷岩体南側の地殻とマントルの物質境界は,泥質片岩と超塩基性岩が接しており,超塩基性岩内に滑石の脈が発達する特徴がある.北側境界では,超塩基性岩との境界では塩基性片岩が産出するが,境界から離れると泥質片岩が産出する.蛇紋岩は塩基性片岩との境界から離れるにつれ,透閃石 + アンチゴライト + 滑石 ± クロライト / アンチゴライト + 滑石 / アンチゴライトという鉱物組合せに変化し,透閃石と滑石はそれぞれ境界から~80 cm,~110 cmまでに確認される.一方,南側境界は,蛇紋岩と泥質片岩の境界である.蛇紋岩は泥質片岩との境界から離れるにつれ,アンチゴライト + 滑石 / アンチゴライト という鉱物組合せに変化し,滑石は境界から~80cmまでに確認される. 透閃石+滑石の脈や滑石の脈はブロックのアンチゴライトを網目状に埋めるように産出しており,これらの脈を伴う場合,マトリックスのアンチゴライトが観察されない場合が多い.以上の観察を踏まえると,両境界とも塊状のアンチゴライトが生成した後,Siに富んだ流体により交代作用を受けたと考えられる.今後更なる検討を行い, (1)いつ三波川帯に取り込まれたのか, (2)どのステージでの交代作用を記録しているのか, (3)地殻物質とマントル物質間で物質量は保存されているのか, (4)交代作用による流体の発生と水圧破砕の可能性について議論を行う.
本研究では,四国中央部三波川帯の富郷地域に産する蛇紋岩ブロック(以下,富郷岩体と呼ぶ)における2つの地殻-マントル境界について検討を行う.この蛇紋岩体は約20メートルほどのサイズであり,北側と南側で地殻物質と接している.そのため,沈み込み帯における交代作用を読み解くのに適している.富郷岩体はざくろ石帯のに位置している.富郷岩帯はほぼすべて蛇紋岩化しているが,ブルース石の産出は見られない.また,輝石の痕跡はなく源岩はダナイトであると考えられる.地殻物質との境界から離れた場所ではブロックとマトリックスのアンチゴライトが観察され,ブレッチャ化もしくはblock-in-matrix構造をなす.ブロックのアンチゴライトは細粒であるのに対して,マトリックスのアンチゴライトは粗粒の板状結晶からなっている.
富郷岩体北側の地殻とマントルの物質境界は塩基性片岩と超塩基性岩が接しており,超塩基性岩内に透閃石+滑石の脈が産出する.一方,富郷岩体南側の地殻とマントルの物質境界は,泥質片岩と超塩基性岩が接しており,超塩基性岩内に滑石の脈が発達する特徴がある.北側境界では,超塩基性岩との境界では塩基性片岩が産出するが,境界から離れると泥質片岩が産出する.蛇紋岩は塩基性片岩との境界から離れるにつれ,透閃石 + アンチゴライト + 滑石 ± クロライト / アンチゴライト + 滑石 / アンチゴライトという鉱物組合せに変化し,透閃石と滑石はそれぞれ境界から~80 cm,~110 cmまでに確認される.一方,南側境界は,蛇紋岩と泥質片岩の境界である.蛇紋岩は泥質片岩との境界から離れるにつれ,アンチゴライト + 滑石 / アンチゴライト という鉱物組合せに変化し,滑石は境界から~80cmまでに確認される. 透閃石+滑石の脈や滑石の脈はブロックのアンチゴライトを網目状に埋めるように産出しており,これらの脈を伴う場合,マトリックスのアンチゴライトが観察されない場合が多い.以上の観察を踏まえると,両境界とも塊状のアンチゴライトが生成した後,Siに富んだ流体により交代作用を受けたと考えられる.今後更なる検討を行い, (1)いつ三波川帯に取り込まれたのか, (2)どのステージでの交代作用を記録しているのか, (3)地殻物質とマントル物質間で物質量は保存されているのか, (4)交代作用による流体の発生と水圧破砕の可能性について議論を行う.