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[SMP43-P15] 糸魚川市青海地域に分布する蓮華変成岩の源岩年代について
キーワード:蓮華変成岩、U-Pb年代
新潟県糸魚川市西部の青海地域には、古生代のK-Ar年代を持つ様々な変成岩類が産出することは古くから知られている。それら変成岩類は蛇紋岩を伴いヒスイ輝石岩や藍閃石片岩、角閃岩やエクロジャイトなど様々なテクトニックブロックからなる蛇紋岩メランジュを形成しているとされている(松本ほか2011)。またエクロジャイトや藍閃石片岩などの高圧変成岩が分布するエリアとしてECユニットを設定されそれ以外の地域はNon-ECユニットとされており(Tsujimori, 2002)異なる変成作用を受けた岩石が近接して分布している。青海地域は約280~340MaのK-Ar年代を持つ結晶片岩が卓越し(椚座ほか2004など)、古生代の沈み込み帯のテクトニクスを解明するうえで重要な地域とされている。しかし青海地域は1980年代から詳細な岩石学的検討が行われてきた反面、前述の二つのユニット間の関係など構造やその成因はいまだ不明瞭な点が多い。以上の問題を解決する一助とするため、ECユニットに区分されている地域から高圧変成作用を受けた岩石を採取し、ジルコンを分離後U-Pb年代測定を行った。
年代分析に使用した試料は、青海地域上路集落近くのしな谷中流で採取したザクロ石藍閃石岩である。サンプルは直径2~5㎜のザクロ石斑状変晶が、長軸約2~4㎜の藍閃石が卓越する基質中に見られ、一部緑泥石に富む部分が層状に認められる。サンプルは野外において直径約1~5mmのザクロ石が含まれる黒色泥質片岩中に、層状~レンズ状に見られ変質部分以外には雲母類は全く見られない。このザクロ石藍閃石岩中に含まれるジルコンを抽出した。抽出したジルコン粒子についてCL像観察を行ったところ、ほとんどの粒子が比較的発光の弱いコアと発光の強いリムを持つことがわかった。U-Pb年代測定には新潟大学のLA-ICPMSを用い、115個のジルコン粒子について行った。その結果34地点からコンコーディア年代を得た。測定したジルコン粒子のコアの年代の多くが約420~690Maの年代を示し約450~460Maに最も顕著な年代ピークが認められた。また約1200~1460Maの年代を示す粒子も認められた。
今回得られた年代値は、本地域において過去の研究で得られた結晶片岩の冷却年代(K-Ar年代)である約280~340Ma(椚座ほか2004など)や、エクロジャイト相の高圧変成作用の年代とされる380Ma(辻森, 2010)より古い。また今回年代分析に用いた試料はXRFを用いた全岩化学組成分析では玄武岩質の組成を示している。しかしジルコンを多量に含むことや様々な年代を持つジルコン粒子が含まれていることなどから原岩が玄武岩であるとは考えにくく、様々な可能性が考えられるため今後さらなる検討が必要である。
・Tsujimori, T,. 2002. Prograde and Retrograde P-T Paths of the Late Paleozoic Glaucophane Eclogite grom the Renge Metamorphic Belt, Hida Mountains, Southwestern Japan. International Geology Review 44, 797-818.
・椚座圭太郎ほか, 2004, 年代学からみた飛騨外縁帯の構造発達史:高圧変成岩類のK-Ar年代と蛇紋岩に接触変成作用を与えた花崗岩類のU-Th-Pb EMPからの制約. 地質学雑誌, 110, 580-590.
・辻森 樹, 2010, 日本列島に記録された古生代高圧変成作用―新知見とこれから解決すべき問題点―. 地学雑誌, 119(2), 294-312.
・松本謙一ほか, 2011, 飛騨外縁帯糸魚川-青海地域の地質と変成作用―日本列島地質体最古の沈み込み型変成作用と上昇期の加水変成作用―. 地学雑誌, 第120巻 4-29.
年代分析に使用した試料は、青海地域上路集落近くのしな谷中流で採取したザクロ石藍閃石岩である。サンプルは直径2~5㎜のザクロ石斑状変晶が、長軸約2~4㎜の藍閃石が卓越する基質中に見られ、一部緑泥石に富む部分が層状に認められる。サンプルは野外において直径約1~5mmのザクロ石が含まれる黒色泥質片岩中に、層状~レンズ状に見られ変質部分以外には雲母類は全く見られない。このザクロ石藍閃石岩中に含まれるジルコンを抽出した。抽出したジルコン粒子についてCL像観察を行ったところ、ほとんどの粒子が比較的発光の弱いコアと発光の強いリムを持つことがわかった。U-Pb年代測定には新潟大学のLA-ICPMSを用い、115個のジルコン粒子について行った。その結果34地点からコンコーディア年代を得た。測定したジルコン粒子のコアの年代の多くが約420~690Maの年代を示し約450~460Maに最も顕著な年代ピークが認められた。また約1200~1460Maの年代を示す粒子も認められた。
今回得られた年代値は、本地域において過去の研究で得られた結晶片岩の冷却年代(K-Ar年代)である約280~340Ma(椚座ほか2004など)や、エクロジャイト相の高圧変成作用の年代とされる380Ma(辻森, 2010)より古い。また今回年代分析に用いた試料はXRFを用いた全岩化学組成分析では玄武岩質の組成を示している。しかしジルコンを多量に含むことや様々な年代を持つジルコン粒子が含まれていることなどから原岩が玄武岩であるとは考えにくく、様々な可能性が考えられるため今後さらなる検討が必要である。
・Tsujimori, T,. 2002. Prograde and Retrograde P-T Paths of the Late Paleozoic Glaucophane Eclogite grom the Renge Metamorphic Belt, Hida Mountains, Southwestern Japan. International Geology Review 44, 797-818.
・椚座圭太郎ほか, 2004, 年代学からみた飛騨外縁帯の構造発達史:高圧変成岩類のK-Ar年代と蛇紋岩に接触変成作用を与えた花崗岩類のU-Th-Pb EMPからの制約. 地質学雑誌, 110, 580-590.
・辻森 樹, 2010, 日本列島に記録された古生代高圧変成作用―新知見とこれから解決すべき問題点―. 地学雑誌, 119(2), 294-312.
・松本謙一ほか, 2011, 飛騨外縁帯糸魚川-青海地域の地質と変成作用―日本列島地質体最古の沈み込み型変成作用と上昇期の加水変成作用―. 地学雑誌, 第120巻 4-29.