日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP44] メルト-延性-脆性岩体のダイナミクスとエネルギー・システム

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 301A (3F)

コンビーナ:*土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)、小川 康雄(東京工業大学火山流体研究センター)、長縄 成実(東京大学大学院工学系研究科)、座長:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)

15:30 〜 15:45

[SMP44-07] 超臨界地熱貯留層における誘発地震発生現象理解のための実験的アプローチ

★招待講演

*増田 幸治1 (1.産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

キーワード:脆性-塑性遷移領域、岩石実験、誘発地震、超臨界地熱貯留層

地下深部数kmにある超臨界状態の岩体を利用した発電を実現するにあたって,誘発地震(注水等の人為的行為によって発生する地震)のリスク低減は重要課題のひとつである.現在開発されている地熱貯留層は比較的低温・低圧領域であるため脆性的な力学挙動を示し,誘発地震を引き起こすが,超臨界地熱貯留層では高温・高圧環境下のために,岩盤が延性的な力学挙動を示し,誘発地震の問題はないと考えられてきた.しかし,最近の地震観測によると,地下10km程度の地殻深部においても,微小地震が発生していることが観測されている.また,KTBなどの深部掘削でも脆性-塑性遷移領域においても地殻が脆性的性質を示すということがしられている.このように超臨界地熱貯留層領域でも地殻が脆性的性質をもち,微小地震が発生する場合があることがわかってきたが,その発生条件やメカニズムについては,超臨界地熱開発にとっても学問的にも重要な課題であるにもかかわらず,まだよくわかっていない.特に,超臨界地熱貯留層あたりの温度圧力条件,500℃,100MPa近傍での誘発地震発生条件についての検証が今後の超臨界地熱開発にとっても重要な知見となる.実際の開発前に,超臨界状態にある岩体内で発生する地震関連現象を理解しておくためには,脆性-塑性遷移領域での地震観測とともに,室内実験による検証が有用な手段となる.そこで,超臨界領域における誘発地震理解のために実験的アプローチの現状についてレビューし,その問題点や今後の課題を整理した.地殻深部環境において,間隙圧や間隙流体の温度変化による地震発生条件やそれによって誘発された地震のメカニズムと観測可能性を検証することが室内岩石実験における重要課題のひとつである.