17:15 〜 18:30
[SMP44-P01] 深部地熱貯留層のナチュラルアナログ -秋田県比立内花崗岩体-
キーワード:深部地熱貯留層、脆性-延性境界、地熱流体、鉱物脈
現在、日本における地熱開発は温度が200-300℃、深度が1000-2000mの岩石が脆性的な領域で行われている。近年、再生可能エネルギーによる発電量の増加が期待される中で、純国産エネルギーで二酸化炭素排出量の少ない地熱発電でもより大きな発電が望まれている。
そこで本研究では、さらに大きなエネルギーを得るために既存の地熱開発よりも深部である、温度が350℃以上、深度が2000-5000mの領域を対象にしている。この領域では岩石が延性的な挙動をすると考えられ、誘発地震発生の可能性が低いことや流体が超臨界状態でありエンタルピーが高いことが期待できる。
これまで深部地熱資源に関する地球科学的な研究から、深部地熱資源は静岩圧下で存在すると考えられているため、深部地熱開発を目指す上で重要な静岩圧-静水圧境界の詳細な情報が求められている。そこで本研究の目的はその境界の物質的な証拠を明らかにし、深部地熱資源のナチュラルアナログを提示することとした。そのため花崗岩質岩体周辺のフィールド調査や岩体周辺の鉱物脈や変質帯、流体包有物などの地球化学的な検討を行う。
東北地方には火山やカルデラが多く存在しており、その下部に深部熱源として花崗岩があると考えられている。先行研究では秋田県田沢湖の西に位置する小相沢・大水端花崗岩体の研究が行われており、花崗岩-斑岩の系が超臨界地熱資源のナチュラルアナログとして提示されている。また、Fournier(1999)では静岩圧平衡のもとマグマ性流体を含み形成した脈がセルフシーリング帯とともに存在していることや斑岩銅鉱床型の変質帯を伴っていることが示されている。
そこで本研究では、花崗岩体と縁辺部の安山岩や玄武岩との接触部分にある鉱物脈や変質帯が深部地熱貯留層のアナロジーとなるか検討するために、秋田県中央部に位置する田沢湖複合岩体の北端、比立内花崗岩体を対象として研究をおこなった。ここでは熱源と考えられる花崗岩体とその縁辺部にある鉱物脈や変質帯には静岩圧-静水圧境界の物質的な証拠が期待できる。
フィールド調査の結果、変質部には珪化帯や粘土化帯がみられ、それに伴い数種類の鉱物脈もみられた。主に肉眼で白色の石英脈と暗灰色のガラス質脈、及び熱水角礫岩脈である。本研究では深部熱源と考えられる花崗岩とその周囲の岩石、及びそれらに伴う鉱物脈の主要成分、微量成分などの組成分析や流体包有物分析から、地熱流体が存在した深度や温度を推測し、また元素移動を考慮することで各鉱物脈の形成がどの段階なのかを考察する。脈形成にマグマ性流体もしくは熱水のどちらが関与しているのかは、静岩圧から静水圧へ遷移する段階と関連していると考えられ、深部地熱貯留層の新たな知見につながっていくことが期待できる。今回の発表では深部熱源である花崗岩の定置深度及び温度、さらに各鉱物脈の形成温度圧力条件、鉱物脈の分布から深部地熱貯留層の熱エネルギーなどのポテンシャルについて検討した。
そこで本研究では、さらに大きなエネルギーを得るために既存の地熱開発よりも深部である、温度が350℃以上、深度が2000-5000mの領域を対象にしている。この領域では岩石が延性的な挙動をすると考えられ、誘発地震発生の可能性が低いことや流体が超臨界状態でありエンタルピーが高いことが期待できる。
これまで深部地熱資源に関する地球科学的な研究から、深部地熱資源は静岩圧下で存在すると考えられているため、深部地熱開発を目指す上で重要な静岩圧-静水圧境界の詳細な情報が求められている。そこで本研究の目的はその境界の物質的な証拠を明らかにし、深部地熱資源のナチュラルアナログを提示することとした。そのため花崗岩質岩体周辺のフィールド調査や岩体周辺の鉱物脈や変質帯、流体包有物などの地球化学的な検討を行う。
東北地方には火山やカルデラが多く存在しており、その下部に深部熱源として花崗岩があると考えられている。先行研究では秋田県田沢湖の西に位置する小相沢・大水端花崗岩体の研究が行われており、花崗岩-斑岩の系が超臨界地熱資源のナチュラルアナログとして提示されている。また、Fournier(1999)では静岩圧平衡のもとマグマ性流体を含み形成した脈がセルフシーリング帯とともに存在していることや斑岩銅鉱床型の変質帯を伴っていることが示されている。
そこで本研究では、花崗岩体と縁辺部の安山岩や玄武岩との接触部分にある鉱物脈や変質帯が深部地熱貯留層のアナロジーとなるか検討するために、秋田県中央部に位置する田沢湖複合岩体の北端、比立内花崗岩体を対象として研究をおこなった。ここでは熱源と考えられる花崗岩体とその縁辺部にある鉱物脈や変質帯には静岩圧-静水圧境界の物質的な証拠が期待できる。
フィールド調査の結果、変質部には珪化帯や粘土化帯がみられ、それに伴い数種類の鉱物脈もみられた。主に肉眼で白色の石英脈と暗灰色のガラス質脈、及び熱水角礫岩脈である。本研究では深部熱源と考えられる花崗岩とその周囲の岩石、及びそれらに伴う鉱物脈の主要成分、微量成分などの組成分析や流体包有物分析から、地熱流体が存在した深度や温度を推測し、また元素移動を考慮することで各鉱物脈の形成がどの段階なのかを考察する。脈形成にマグマ性流体もしくは熱水のどちらが関与しているのかは、静岩圧から静水圧へ遷移する段階と関連していると考えられ、深部地熱貯留層の新たな知見につながっていくことが期待できる。今回の発表では深部熱源である花崗岩の定置深度及び温度、さらに各鉱物脈の形成温度圧力条件、鉱物脈の分布から深部地熱貯留層の熱エネルギーなどのポテンシャルについて検討した。