日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD41] 資源地質学

2016年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 201B (2F)

コンビーナ:*実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、高橋 亮平(秋田大学国際資源学部)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、米津 幸太郎(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、座長:実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、米津 幸太郎(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

16:00 〜 16:15

[SRD41-02] 花崗岩系列と花崗岩成因論

*高木 哲一1 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

キーワード:花崗岩、日本列島、沈み込み帯

磁鉄鉱系列・イルメナイト系列花崗岩類(花崗岩系列)は地域スケールで帯状配列し、活動年代によっても系統的に変化する。したがって、両系列の成因は上部地殻での局所的な現象ではなく、花崗岩質マグマの起源に密接に関連している。日本列島の花崗岩類の各種データをコンパイルすると、花崗岩類の活動度と沈み込み速度に正の相関があり、95-85Maに主にイルメナイト系列花崗岩からなる活動の極大期が認められる。イルメナイト系列の割合は110Ma頃に急上昇し、70Ma頃に急減する。イルメナイト系列のSr同位体初生値は、白亜紀に規則的に上昇するが、磁鉄鉱系列は時代にかかわらずほぼ安定している。Nd同位体初生値もほぼ同様な傾向を示す。このことは、花崗岩質マグマへの堆積岩類の同化率が白亜紀に規則的に上昇し、70Ma付近で下降することを意味する。このような現象は、海嶺の沈み込みによる下部地殻の部分溶融やマグマ溜まりと壁岩との反応では説明が困難である。
Sr-O同位体ダイヤグラムにおいて、一部の高Sr岩体を除く大部分の花崗岩類はsource contaminationを示す曲線(下に凸)に調和的である。また、Sr-Nd同位体初生値ダイヤグラムにおいても、大部分の花崗岩類は極めて枯渇した物質と堆積岩類との同化分別作用によって形成されたことを示唆する。これらのデータを整合的に説明するには、堆積岩類とマントル物質が反応しつつマグマが形成されるセッティングが必要である。この堆積岩類は、比較的均質で普遍的に存在し、マグマ形成場にまでもたらされる必要があることから、沈み込み堆積岩類と判断される。したがって、日本列島における花崗岩系列は、主としてマグマ形成場における初源マグマと沈み込み堆積岩類の反応率に依存すると推察される。また、花崗岩質マグマの原物質は、下部地殻ではなくマントル物質と反応した沈み込み堆積岩類が主体である可能性が高い。