日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-RD 資源・鉱床・資源探査

[S-RD41] 資源地質学

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、高橋 亮平(秋田大学国際資源学部)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、米津 幸太郎(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

17:15 〜 18:30

[SRD41-P04] 高取鉱床における熱水の進化 - 鉄マンガン重石の交代組織について

*生熊 純也1森下 祐一1 (1.静岡大学大学院総合科学技術研究科)

キーワード:高取鉱床、鉄マンガン重石、交代組織、熱水性鉱床

高取鉱床は鉱脈型のタングステン鉱床であり、タングステン鉱石として採掘されていた鉄マンガン重石((Fe, Mn)WO4)は鉄とマンガンの固溶体である。これまでの研究で、結晶の内部で鉄とマンガンの比率が変化していることがあり、それらは後期ステージの熱水との反応による交代組織であるとされている。しかしながら、この交代組織をもたらした熱水の特徴については未だ明らかになっていない。そこで、本研究の目的は高取鉱床におけるこの後期熱水の特徴を明らかにすることである。
試料は7番ひの-4レベル(海抜60m)と-7レベル(海抜-30m)の2箇所から得られたものを使用し、それぞれ中部試料(middle sample)と深部試料(lower sample)とした。
SEM-EDSを用いた元素マッピングにより、鉄マンガン重石結晶の外縁部で交代組織が見られたため、EPMAを用いて測定を行った。その結果、中部試料での結晶の中心部のMn/Fe比は40-50 mole%であったが、黄鉄鉱を伴う試料ではリム部分で70 mole%まで増加していた。
これらの交代組織は、鉄マンガン重石中の鉄と、鉄マンガン重石の形成後に流入した後期熱水に含まれていたマンガンが置換して形成されたものであると考えられている。そのため、この後期の熱水は鉄マンガン重石結晶の周囲を流れることで交代組織を形成したと考えられる。
下部試料ではSEM-EDSマッピングとEPMAにより黄鉄鉱や他の硫化鉱物を伴う複雑な組織を示したが、Mn/Fe比の変化が中部試料と同じであることから、これらも交代組織であると考えられる。従って、この複雑な組織は後期熱水が結晶中のひび割れを通ることで形成されたと推測される。
相図より、この後期熱水は鉄マンガン重石を形成した初期ステージの熱水よりも低温であると考えられる。この環境では鉄重石(FeWO4)が不安定となりマンガン重石と黄鉄鉱が安定となる領域が生じるため、硫化鉱物を伴う鉄マンガン重石(MnWO4)で交代組織が発達したと推測できる。また、交代組織の形成にはpHと酸素フガシティーの変化も必要であったと考えられる。