日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS24] 地震予知・予測

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:*中島 淳一(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:岡田 正実(気象庁気象研究所)、弘瀬 冬樹(気象研究所地震津波研究部)

13:45 〜 14:00

[SSS24-01] 小標本論対数正規分布モデルの問題点と改良について

*岡田 正実1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:相似地震、地震予測、対数正規分布、小標本論

1. はじめに
相似地震を事前予測し、観測結果で検証する実験を、気象研及び東北大学の関係者と共同で、2006年~2011年に5回実施した(Okada et al., 2012)。発生確率の計算はBayes統計対数正規分布モデルLN-Bayesと小標本論対数正規分布モデルLN-SSTである。3.11巨大地震前の528予測の集計では、249回の予測に対し該当地震が発生した。一方、予測確率の合計は、LN-Bayesで観測値の90%、LN-SSTで86%にしか相当せず、予測は個数検定で棄却される。ここでは、発生確率が過小となる理由をLN-SSTについて考察し、モデルの修正を検討する。
2. 小標本論対数正規分布モデルLN-SST
過去にn+1個の地震の発生時が判明しており、今後起きるn+2番目の地震の発生時を予測するものとする。n個の発生間隔Tiの対数をXi=log(Ti)とし、Xiの平均をXmean、標準偏差をSとする。対数正規分布モデルでは、Xiは正規分布に従うので、正規分布の性質(統計学の小標本論)から、確率変数
Z=sqrt((n-1/(n+1))*(Xf - Xmean)/s
は自由度n-1のt- 分布に従う。したがって、最後の地震から次の地震までの間隔の対数Xfは、期待される分布が、正規分布のパラメータに依存することなく確定する。Xfの分布から条件付き確率の式で、予測期間内の発生確率が求まる。
乱数実験を行ったところ、上のようにして得られた発生確率に明瞭な過小傾向があることが確認された。偏りの要因として、
① t- 分布が標準正規分布より横に拡がり、山が低いこと。
② 条件付き確率の式は、非線形であること。
が考えられる。
3. モデル修正
LN-SSTは、発生間隔の対数が正規分布に従うことのみを想定し、分布の母数に依存しないし、事前分布を必要としないなど、優れた特長を持っている。一方では、過小予測を緩和し、予測成績を向上させるために、部分的修正を施すことが考えられる。方策としては、
① 上記のZの定義をそのままにし、自由度を少し大きくする。
予測実験のデータでは、自由度を1だけ大きくすると、発生確率の合計が212.9から217.0に増え、予測成績もいくぶん向上する。
② 予測発生確率に応じた補正を加える。
得られた発生確率(0≦p≦1)を、y=log(p/(1-p))で無限区間に移し、適当な値(c=0.3) を加える。逆変換で補正後の確率を得る。発生確率の合計が241.0となり、成績はかなり向上する(図1)。