日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS24] 地震予知・予測

2016年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:*中島 淳一(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:岡田 正実(気象庁気象研究所)、弘瀬 冬樹(気象研究所地震津波研究部)

14:45 〜 15:00

[SSS24-05] モーメント保存則から推定される東日本周辺の海溝型地震の最大規模(その2)

*弘瀬 冬樹1前田 憲二1吉田 康宏2 (1.気象研究所地震津波研究部、2.気象大学校)

キーワード:地震モーメント保存則、最大規模、宇津の式

Kagan & Jackson [2013, BSSA]は,地震モーメント保存則を1977/01/01-2010/12/31の地震データに適用し,全世界の沈み込み帯で発生する地震の最大規模を推定した.この手法のキーポイントは,総地震モーメントレートをテクトニックなモーメントレートMTで置き換えることである.なお,MTを構成する要素のうち,プレート間カップリング率χの不確定性は特に強いため,推定される最大規模はχに依存して大きくバラつくことに注意が必要である.以下,混乱を避けるため,マグニチュードは小文字のm,モーメントは大文字のMで表す.
彼らはモーメント別累積頻度分布として,切断G-R則,Tapered G-R則およびガンマ分布を仮定した.これらの分布はβ(=b/1.5)とMc(最大規模を表現する特徴的モーメント,対応する規模はmc)の2つのパラメータで表現される.切断G-R則は,mcより大きな規模の地震は発生しない.一方,Tapered G-R則やガンマ分布は,mが∞まで取り得るため,mcより大きな規模の地震の発生を許している.このことから,Tapered G-R則やガンマ分布によるmcを最大規模としてそのまま扱うのは問題がある.
弘瀬・他 [2014, SSJ]は切断G-R則に注目し,モーメント保存則を千島・カムチャッカ・日本海溝沿い地域で発生した地震(1977/01/01-2013/12/31)に適用し,χを60%と仮定した場合の東北沖のmcを9.26と推定した.
マグニチュードが上限を持つ式としては,切断G-R則のほかに宇津の式がある.今回,宇津の式についてモーメント保存則の関係式を導出し,弘瀬・他 [2014, SSJ]と同じデータセットに対して適用した.その結果,仮定したMT(χ=60%)が正しいとすると,東北沖で発生し得る最大規模は10.03と推定された.東北沖地震がこの地域の最大の地震とは必ずしも言えない可能性がある.