15:30 〜 16:45
[SSS24-P03] 前震活動に基づく地震発生の経験的予測
-前震を伴いやすい3領域および日本内陸地域への適用-
キーワード:地震予測、予測効率、前震、地震統計、経験則、 日本内陸地域
1.はじめに
本震の発生を予測するための手掛かりとして前震活動は古くから期待されているが、実際には本震が発生したのちに初めて前震だったと判別される場合がほとんどであり、本震発生前に前震を識別することは一般に困難である。そこで、我々は、続発的に地震が発生しやすい特定の地域では本震前に活発な前震活動がみられる場合があることに着目し、その統計的性質から本震の発生を経験的に比較的効率よく予測する手法を開発してきた。これまで前震を伴いやすい地域として、日本海溝沿いの特定の地域、伊豆半島沖の地域、長野県北中部の地域を調査し、それらの地域に本手法を適用した場合の予測効率について報告してきた。ここではこれらの地域のその後の活動状況も含めた最近までの予測状況を取りまとめるとともに、同様の手法を日本の内陸地域全域に適用した場合の予測効率について報告する。
2.予測手法
前震識別の手順および予測効率の指標は、以下のとおりである。
1)震源カタログのデクラスター処理を行い、余震を除去する。ただし、本震との規模の差が1.0以下の地震は除去しないで残すこととする。
2)特定の大きさのセグメント(緯度D°×経度D°)の中で、特定の規模(Mf0)以上の地震が特定の期間(Tf日)の間に特定の数(Nf)だけ発生した時、前震(群)の候補とする。
3)その後特定の期間(Ta日)を警報期間とし、前震候補と同じセグメント内で警報期間中に本震が発生した場合に真の前震(群)であったと判定する。
4)この前震(群)の定義において、D、Mf0、Tf、Nf、Taをパラメータとして、本震(規模Mm0以上)を予測するために効率のよい前震(群)のパラメータをグリッドサーチにより求める。
予測効率の指標としては、本震は時空間的に一定の発生率を持ってランダムに発生すると仮定したモデルを基準とし、前震候補による予測時空間における本震発生率が他の時空間より高いとする予測モデルとのAICの差(dAIC)を主に用いた。また、予知率(AR:予測対象とする本震のうち予測された本震の割合)や適中率(TR:前震候補のうち真の前震の割合)、確率利得(PG:全時空間における本震の平均発生率に対する警報時空間における本震の発生率の比)も補助的に用いた。
3.データおよび解析結果
1)日本海溝沿いの特定の地域
日本海溝から陸よりの海域においては、特に岩手沖、宮城沖、茨城沖の3領域で前震活動を伴う本震の発生する割合が比較的高い。そこで、この3領域内の地震活動について1961年から2010年までの気象庁震源カタログを使用し、M6.0以上、深さ100km以浅の本震の発生を予測するのに効率的な前震候補選択のパラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.5°、Mf0=5.0、Tf=10日、Nf=3、Ta=4日のパラメータが得られた。この前震パラメータを用い、1961年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合、予知率は27% (=13/48)であり、適中率は22% (=17/77)であった。
2)伊豆半島沖の地域
同様に、伊豆半島沖の地域について、1977年から2013年6月までの気象庁震源カタログを用い、M5.0以上、深さ50㎞以浅の本震の発生予測に効率的な前震パラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.2°、Mf0=3.0、Tf=3日、Nf=3、Ta=5日が得られ、このパラメータを用い、1977年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合の結果は、予知率は68%(=44/65)であり、適中率は22% (=43/194)であった。
3)長野県北中部の地域
長野県北中部の地域について、1998年から2014年までの気象庁震源カタログを用い、M5.0以上、深さ30㎞以浅の本震の発生予測に効率的な前震パラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.1°、Mf0=2.0、Tf=1日、Nf=5、Ta=5日が得られ、このパラメータを用い、1998年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合、予知率は45% (=5/11)であり、適中率は12% (=8/69)であった。
4)日本の内陸地域
日本の内陸地域(伊豆地域を除く)について、長野県北中部の地域に対して求めた最適パラメータを援用した場合の予測成績を調査した。即ち、D=0.1°、Mf0=2.0、Tf=1日、Nf=5、Ta=5日のパラメータ値を用いて1998年から2016年1月31日までの期間についてM5.0以上の本震の予測を行った場合の予測成績を求めた。その結果、内陸地域全体としては、予知率=11%(=9/79)、適中率=1.8% (=11/607)であり、また、地域的には長野県北中部以外では福島県東部や銚子付近、鹿児島県西方沖で上記定義の前震活動が見られた。
本震の発生を予測するための手掛かりとして前震活動は古くから期待されているが、実際には本震が発生したのちに初めて前震だったと判別される場合がほとんどであり、本震発生前に前震を識別することは一般に困難である。そこで、我々は、続発的に地震が発生しやすい特定の地域では本震前に活発な前震活動がみられる場合があることに着目し、その統計的性質から本震の発生を経験的に比較的効率よく予測する手法を開発してきた。これまで前震を伴いやすい地域として、日本海溝沿いの特定の地域、伊豆半島沖の地域、長野県北中部の地域を調査し、それらの地域に本手法を適用した場合の予測効率について報告してきた。ここではこれらの地域のその後の活動状況も含めた最近までの予測状況を取りまとめるとともに、同様の手法を日本の内陸地域全域に適用した場合の予測効率について報告する。
2.予測手法
前震識別の手順および予測効率の指標は、以下のとおりである。
1)震源カタログのデクラスター処理を行い、余震を除去する。ただし、本震との規模の差が1.0以下の地震は除去しないで残すこととする。
2)特定の大きさのセグメント(緯度D°×経度D°)の中で、特定の規模(Mf0)以上の地震が特定の期間(Tf日)の間に特定の数(Nf)だけ発生した時、前震(群)の候補とする。
3)その後特定の期間(Ta日)を警報期間とし、前震候補と同じセグメント内で警報期間中に本震が発生した場合に真の前震(群)であったと判定する。
4)この前震(群)の定義において、D、Mf0、Tf、Nf、Taをパラメータとして、本震(規模Mm0以上)を予測するために効率のよい前震(群)のパラメータをグリッドサーチにより求める。
予測効率の指標としては、本震は時空間的に一定の発生率を持ってランダムに発生すると仮定したモデルを基準とし、前震候補による予測時空間における本震発生率が他の時空間より高いとする予測モデルとのAICの差(dAIC)を主に用いた。また、予知率(AR:予測対象とする本震のうち予測された本震の割合)や適中率(TR:前震候補のうち真の前震の割合)、確率利得(PG:全時空間における本震の平均発生率に対する警報時空間における本震の発生率の比)も補助的に用いた。
3.データおよび解析結果
1)日本海溝沿いの特定の地域
日本海溝から陸よりの海域においては、特に岩手沖、宮城沖、茨城沖の3領域で前震活動を伴う本震の発生する割合が比較的高い。そこで、この3領域内の地震活動について1961年から2010年までの気象庁震源カタログを使用し、M6.0以上、深さ100km以浅の本震の発生を予測するのに効率的な前震候補選択のパラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.5°、Mf0=5.0、Tf=10日、Nf=3、Ta=4日のパラメータが得られた。この前震パラメータを用い、1961年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合、予知率は27% (=13/48)であり、適中率は22% (=17/77)であった。
2)伊豆半島沖の地域
同様に、伊豆半島沖の地域について、1977年から2013年6月までの気象庁震源カタログを用い、M5.0以上、深さ50㎞以浅の本震の発生予測に効率的な前震パラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.2°、Mf0=3.0、Tf=3日、Nf=3、Ta=5日が得られ、このパラメータを用い、1977年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合の結果は、予知率は68%(=44/65)であり、適中率は22% (=43/194)であった。
3)長野県北中部の地域
長野県北中部の地域について、1998年から2014年までの気象庁震源カタログを用い、M5.0以上、深さ30㎞以浅の本震の発生予測に効率的な前震パラメータを求めた。その結果、最適解としてD=0.1°、Mf0=2.0、Tf=1日、Nf=5、Ta=5日が得られ、このパラメータを用い、1998年から2016年1月31日までの期間の予測を行った場合、予知率は45% (=5/11)であり、適中率は12% (=8/69)であった。
4)日本の内陸地域
日本の内陸地域(伊豆地域を除く)について、長野県北中部の地域に対して求めた最適パラメータを援用した場合の予測成績を調査した。即ち、D=0.1°、Mf0=2.0、Tf=1日、Nf=5、Ta=5日のパラメータ値を用いて1998年から2016年1月31日までの期間についてM5.0以上の本震の予測を行った場合の予測成績を求めた。その結果、内陸地域全体としては、予知率=11%(=9/79)、適中率=1.8% (=11/607)であり、また、地域的には長野県北中部以外では福島県東部や銚子付近、鹿児島県西方沖で上記定義の前震活動が見られた。