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[SSS25-03] 沈み込み巨大衝上地震の強震動予測の考え方
キーワード:沈み込み巨大衝上地震、強震動、短周期震源モデル、強震動予測レシピ
1. はじめに
東北地方太平洋沖でプレートの沈み込みにより発生したMw 9.0の地震では、プレート境界に沿う長さ約500m、幅約200kmに及ぶ震源断層が破壊された。強震動記録、遠地実体波、GPSによる測地データ、津波データなど性質の異なる種々のデータを用いた断層面の破壊過程の解析により、この地震は周波数依存の震源モデルを有していることが明らかになってきた。
このような震源破壊の特徴は、この地震に限ったものではなく、最近10年間に起こった4つの沈み込み巨大衝上地震(2004年Mw9.2スマトラ地震、2005年Mw8.6スマトラ地震、2010年Mw8.8チリ・マウレ地震、2011年東北地震)に共通していることが分かってきた(Yao et al, 2016)。
切迫性の指摘されている南海トラフ地震など、沈み込み型巨大地震に対する防災・減災対策を効果的に進めるためには、信頼性の高い強震動や津波の予測技術の確立が必要とされている。本研究の目的は、2011年東北地震の強震動生成の詳細な解析により、南海トラフ地震のように沈み込み地域に発生の予測される大規模プレート境界地震に対する強震動予測手法を検討することにある。
2. 震源断層のセグメント化
2011年東北地震の震源域を含む三陸沖から房総沖までの太平洋沿岸を含む日本海海溝沿いの地域について、地震調査委員会は過去400年間の地震活動の調査結果を基に長期評価を行い2002年に公表している(2011年と2012年に第2版)。それによると東北地震の震源域は6個のセグメントに分けられ、セグメントごとに30年間の最大マグニチュードと発生確率の評価がなされた。
近地の強震動の長周期成分や遠地実体波を用いて久保・他(2013)は周期別の震源モデルを構築している。それによると、海溝軸に近い浅部セグメントから、きわめて大きな長周期のすべりを生じたが短周期地震動の生成は小さく、一方、陸に近いプレート境界深部のセグメントからは、強い短周期地震動が生成されている。
3. 短周期~やや長周期地震動(0.1-10.0 秒)のための震源モデル
2011年東北地震の震源近傍域に近い観測点での強震動加速度波形には、顕著な複数の孤立した波群が観測された。これらの波群を説明するために、5つの強震動生成域(Strong Motion Generation Area: SMGA)からなる短周期生成モデルが推定された(Kurahashi and Irikura, 2013)。SMGAの位置は、震源断層の中で西端に近いプレート沈み込みのダウン・ディップに沿っていることがわかってきた。超高層ビルなどの長周期構造物の被害に影響する長周期地震動(2 - 10秒)は、これらのSMGAからの地震動として評価可能なことが分かってきた。
4.衝撃的地震動のための震源モデル
もう1つの問題として、この地震の強震動波形は顕著な複数の孤立した波群からなっているが、それぞれの波群は先頭部に衝撃状の波形形状を有している。Kurahshi and Irikura (2013)は、2003年宮城県沖地震(Mj 7.2)の地震動を経験的グリーン関数として、短周期地震動の波形がほぼ再現できることを示している。しかしながら、それよりも小さなM6クラスの中小地震の記録を経験的グリーン関数としてSMGAからの地震動を合成すると、野津・他(2014)が指摘するように、パルス形状を持つ地震動にならない。ここでは、2003年宮城県沖地震(Mj 7.2)の地震動をより小さな中小地震からの地震動記録を経験的グリーン関数として用いて、短周期の地震動の生成過程について再検討を試みる。2003年宮城沖地震の震源モデルは、2つのSMGAからなり、破壊はそれぞれのSMGAの東端部から西方向に伝播した。そのため、震源域に近い宮城県の太平洋沿岸域での強震動記録には、顕著な破壊の前方方向指向性効果が見られる。その1つのSMGAからの地震動を経験的グリーン関数として、2011年東北地震の強震動を合成すると、短周期地震動がほぼ再現できる。波群の始まりの衝撃的地震動のより良く再現をするためには、最大すべり速度とライズタイムの不均質を考慮したマルチスケール震源モデルが必要である。
東北地方太平洋沖でプレートの沈み込みにより発生したMw 9.0の地震では、プレート境界に沿う長さ約500m、幅約200kmに及ぶ震源断層が破壊された。強震動記録、遠地実体波、GPSによる測地データ、津波データなど性質の異なる種々のデータを用いた断層面の破壊過程の解析により、この地震は周波数依存の震源モデルを有していることが明らかになってきた。
このような震源破壊の特徴は、この地震に限ったものではなく、最近10年間に起こった4つの沈み込み巨大衝上地震(2004年Mw9.2スマトラ地震、2005年Mw8.6スマトラ地震、2010年Mw8.8チリ・マウレ地震、2011年東北地震)に共通していることが分かってきた(Yao et al, 2016)。
切迫性の指摘されている南海トラフ地震など、沈み込み型巨大地震に対する防災・減災対策を効果的に進めるためには、信頼性の高い強震動や津波の予測技術の確立が必要とされている。本研究の目的は、2011年東北地震の強震動生成の詳細な解析により、南海トラフ地震のように沈み込み地域に発生の予測される大規模プレート境界地震に対する強震動予測手法を検討することにある。
2. 震源断層のセグメント化
2011年東北地震の震源域を含む三陸沖から房総沖までの太平洋沿岸を含む日本海海溝沿いの地域について、地震調査委員会は過去400年間の地震活動の調査結果を基に長期評価を行い2002年に公表している(2011年と2012年に第2版)。それによると東北地震の震源域は6個のセグメントに分けられ、セグメントごとに30年間の最大マグニチュードと発生確率の評価がなされた。
近地の強震動の長周期成分や遠地実体波を用いて久保・他(2013)は周期別の震源モデルを構築している。それによると、海溝軸に近い浅部セグメントから、きわめて大きな長周期のすべりを生じたが短周期地震動の生成は小さく、一方、陸に近いプレート境界深部のセグメントからは、強い短周期地震動が生成されている。
3. 短周期~やや長周期地震動(0.1-10.0 秒)のための震源モデル
2011年東北地震の震源近傍域に近い観測点での強震動加速度波形には、顕著な複数の孤立した波群が観測された。これらの波群を説明するために、5つの強震動生成域(Strong Motion Generation Area: SMGA)からなる短周期生成モデルが推定された(Kurahashi and Irikura, 2013)。SMGAの位置は、震源断層の中で西端に近いプレート沈み込みのダウン・ディップに沿っていることがわかってきた。超高層ビルなどの長周期構造物の被害に影響する長周期地震動(2 - 10秒)は、これらのSMGAからの地震動として評価可能なことが分かってきた。
4.衝撃的地震動のための震源モデル
もう1つの問題として、この地震の強震動波形は顕著な複数の孤立した波群からなっているが、それぞれの波群は先頭部に衝撃状の波形形状を有している。Kurahshi and Irikura (2013)は、2003年宮城県沖地震(Mj 7.2)の地震動を経験的グリーン関数として、短周期地震動の波形がほぼ再現できることを示している。しかしながら、それよりも小さなM6クラスの中小地震の記録を経験的グリーン関数としてSMGAからの地震動を合成すると、野津・他(2014)が指摘するように、パルス形状を持つ地震動にならない。ここでは、2003年宮城県沖地震(Mj 7.2)の地震動をより小さな中小地震からの地震動記録を経験的グリーン関数として用いて、短周期の地震動の生成過程について再検討を試みる。2003年宮城沖地震の震源モデルは、2つのSMGAからなり、破壊はそれぞれのSMGAの東端部から西方向に伝播した。そのため、震源域に近い宮城県の太平洋沿岸域での強震動記録には、顕著な破壊の前方方向指向性効果が見られる。その1つのSMGAからの地震動を経験的グリーン関数として、2011年東北地震の強震動を合成すると、短周期地震動がほぼ再現できる。波群の始まりの衝撃的地震動のより良く再現をするためには、最大すべり速度とライズタイムの不均質を考慮したマルチスケール震源モデルが必要である。