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[SSS25-09] スペクトルインバージョンに基づく北陸地方の強震観測点におけるサイト増幅特性の推定
キーワード:サイト増幅特性、北陸地方、スペクトルインバージョン、強震観測点
地震基盤から地表までの地下構造モデルを詳細に把握することは,信頼性の高い強震動予測を実施するために不可欠な要素の1つである.本研究は,北陸地方の強震動予測のための地下構造モデルの高度化に資するために,福井県,石川県,富山県の強震観測点に対して,地震基盤から地表までのサイト増幅特性の推定を行った.ここでは,防災科学技術研究所の強震観測網K-NET,KiK-netの強震観測点に加えて,各県の市町村に設置されている震度計(自治体震度計)の観測点も対象とした.自治体震度計は,震度情報ネットワークによって,各市町村の震度情報を提供することで,その地域の地震動情報や地震被害状況を詳細に把握することに利用されており,人口が密集する場所に設置されていることが多い.そのため,対象とする地域の強震動予測を行う上で,自治体震度計の観測記録を解析することは重要であると言える.
各強震観測点のサイト増幅特性は,観測スペクトルからスペクトルインバージョン手法によって,震源,伝播経路,サイトの各特性を分離することで評価した.観測スペクトルは,各地点の観測波形の水平動2成分の加速度Fourier振幅スペクトルの二乗和平方根とした.加速度Fourier振幅スペクトルは,観測波形のS波を含む10.24秒間を切り出して,区間の開始,終了の各0.5秒間に余弦関数型のテーパ処理を適用し,周波数軸上で各周波数の±5%の移動平均によって平滑化を行うことで求めた.震源とサイト特性のtrade-offを避けるために,本研究では基準観測点を設定した.基準観測点は,サイト増幅特性が無いと仮定できるような観測点であることが望ましいため,対象地域の観測点の中でも,比較的硬質な岩盤上に設置してあると考えられるF-netのSRN(白峰)観測点を選択した.
推定されたサイト増幅特性の一例として.K-NETのISK011(小松)観測点の例を示す.スペクトルインバージョンで得られたサイト増幅特性は,0.5から2.0 Hzの周波数範囲で10から20倍の増幅のピークが見られた.ISK011観測点に対しては,既存の速度構造モデルとして,防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J-SHIS)の全国深部地盤モデルV2によるモデル(J-SHISモデル)と,微動観測に基づいて推定された浅野・他 (日本地震工学会論文集, 15(7), 194-204, 2015) によるモデル(微動モデル)があり,これらの1次元速度構造モデルから計算される理論増幅率とサイト増幅特性とを比較することができた.理論増幅率は,J-SHISモデルの場合は,0.5から2.0 Hz付近にピークは見られなかったが,微動モデルでは,同様のピークを示し,本研究で得られたサイト増幅特性と良い一致を示した.このように,北陸地方の主に市街地に対して高密度に得られたサイト増幅特性を用いることで,この地域の既存の速度構造モデルの検証を詳細に行うことができる.
謝辞:本研究の解析に際しては,国立研究開発法人防災科学技術研究所の強震観測網K-NET,KiK-net,及び広帯域地震観測網F-netの各強震記録を使用させて頂きました.また,福井県,石川県,富山県の震度計観測点の強震記録も使用させて頂きました.記録の維持管理にご尽力頂いている関係者,関係機関の皆様に記して感謝申し上げます.また,本研究は,文部科学省科学技術試験研究委託事業「日本海地震・津波調査プロジェクト」(代表機関:東京大学地震研究所)の一部として実施しました.
各強震観測点のサイト増幅特性は,観測スペクトルからスペクトルインバージョン手法によって,震源,伝播経路,サイトの各特性を分離することで評価した.観測スペクトルは,各地点の観測波形の水平動2成分の加速度Fourier振幅スペクトルの二乗和平方根とした.加速度Fourier振幅スペクトルは,観測波形のS波を含む10.24秒間を切り出して,区間の開始,終了の各0.5秒間に余弦関数型のテーパ処理を適用し,周波数軸上で各周波数の±5%の移動平均によって平滑化を行うことで求めた.震源とサイト特性のtrade-offを避けるために,本研究では基準観測点を設定した.基準観測点は,サイト増幅特性が無いと仮定できるような観測点であることが望ましいため,対象地域の観測点の中でも,比較的硬質な岩盤上に設置してあると考えられるF-netのSRN(白峰)観測点を選択した.
推定されたサイト増幅特性の一例として.K-NETのISK011(小松)観測点の例を示す.スペクトルインバージョンで得られたサイト増幅特性は,0.5から2.0 Hzの周波数範囲で10から20倍の増幅のピークが見られた.ISK011観測点に対しては,既存の速度構造モデルとして,防災科学技術研究所の地震ハザードステーション(J-SHIS)の全国深部地盤モデルV2によるモデル(J-SHISモデル)と,微動観測に基づいて推定された浅野・他 (日本地震工学会論文集, 15(7), 194-204, 2015) によるモデル(微動モデル)があり,これらの1次元速度構造モデルから計算される理論増幅率とサイト増幅特性とを比較することができた.理論増幅率は,J-SHISモデルの場合は,0.5から2.0 Hz付近にピークは見られなかったが,微動モデルでは,同様のピークを示し,本研究で得られたサイト増幅特性と良い一致を示した.このように,北陸地方の主に市街地に対して高密度に得られたサイト増幅特性を用いることで,この地域の既存の速度構造モデルの検証を詳細に行うことができる.
謝辞:本研究の解析に際しては,国立研究開発法人防災科学技術研究所の強震観測網K-NET,KiK-net,及び広帯域地震観測網F-netの各強震記録を使用させて頂きました.また,福井県,石川県,富山県の震度計観測点の強震記録も使用させて頂きました.記録の維持管理にご尽力頂いている関係者,関係機関の皆様に記して感謝申し上げます.また,本研究は,文部科学省科学技術試験研究委託事業「日本海地震・津波調査プロジェクト」(代表機関:東京大学地震研究所)の一部として実施しました.