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[SSS25-14] 2016年台南地震(台湾)の強震動パルスと建物倒壊
キーワード:台南地震、強震動パルス、建物倒壊
2月6日に台湾南部で発生した2016年台南地震では,P-alertと呼ばれる地震早期警報システムのために展開されている多数の観測点において強震記録が得られている.これらのうち,台南市内の観測点での速度波形を見ると,主にその東西成分に最大で100 cm/sに近い長周期の強震動パルスが現れている.たとえばW21B観測点の波形全体のフーリエスペクトルからは,長周期パルスが1秒から4秒程度の卓越周期を持っていることが見てとれる.一方,倒壊して100名以上の死者を出した建物は16階建てであるから,換算式T = (0.049~0.082)×N(Nは階数; 日本建築学会, 2000)より固有周期は0.8から1.3秒程度であり,手抜き工事などで長周期化している可能性を考えれば,このパルスが大きな影響を与えたであろう.一方,遠地実体波を用いた震源インバージョンなどによれば,北に傾斜した震源断層は台南市中心部の東側に位置しており,横ずれと逆断層が組み合わさった断層破壊が走向に沿った東西方向に伝播していったと考えられる.このうち台南市中心部に向かう西向きの断層破壊は,すべり分布の中でも横ずれ成分が卓越する部分を伝播している.横ずれ断層ならば破壊伝播方向に長周期の強震動パルスが走向に直交して発達することは,ディレクティビティ効果としてよく知られている.しかし,走向に直交するのは今回のパルスの東西成分ではなく南北成分であるから,パルスの要因として西側の余震群付近に想定される第二の震源断層を考えるか,元の震源断層の幾何形状を考え直す必要がある.