日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25] 強震動・地震災害

2016年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 105 (1F)

コンビーナ:*津野 靖士(鉄道総合技術研究所)、座長:岡本 京祐(鉄道総合技術研究所)、吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

16:30 〜 16:45

[SSS25-23] 東アジア地域地震火山災害情報図の編集と主要被害地震の原因別犠牲者数リストの作成

*吉見 雅行1石川 有三1宝田 晋治1Bandibas Joel1丸山 正1松本 弾1吾妻 崇1古川 竜太1高田 亮1桑原 保人1佃 栄吉1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:東アジア、被害地震、犠牲者数

東アジア地域地震火山災害情報図(2016年5月発行予定)は,東アジア地域の地質とテクトニクス,活断層,地震の震央と震源域の分布,主要地震の原因別犠牲者数,津波災害,火山分布,カルデラ,降下火砕物と大規模火砕流,主要火山の犠牲者数について一枚の図面にまとめ,裏面に説明書を付したものである.産業技術総合研究所地質調査総合センターのG-EVER推進チームが中核となり,アジア各国の地質調査機関 (PHIVOLCS,CVGHM,CEA,VAST,Academia Sinica) のメンバーと共に作成した.
この災害情報図編纂のため,西暦1850年以降の主な被害地震を対象に原因別の犠牲者数(行方不明者含む)を調べた.地震の被害形態は地域や時代によって様々であるが,被害形態を示す一つの指標として原因別の犠牲者数を用いることで,地震被害の特性が比較でき地震防災の資料としても有用になると考えたからである.カテゴリーは,1)構造物の倒壊等,2)津波,3)土砂災害,4)火災,5)その他(関連死)とした.
まず,NOAAの主要地震データベース等を基に被害者数を基準に各国最大20程度の地震を選定した.具体的には,犠牲者数1,000名以上の地震は全て選定した.国または地域別に犠牲者数1,000名以上の地震数が1〜3件の場合は犠牲者数10〜1,000名の地震を2件追加した.犠牲者数の最大値が100〜1,000名の場合は最大2件,100名未満の場合は1件の被害地震を選定した.これらの地震について,原因別の犠牲者数を調べた.
日本の被害地震については,内閣府中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門委員会」の各報告を参照したほか,被害調査資料等の一次情報にあたった.例えば,2011年東北地方太平洋沖地震の犠牲者数は,警察・消防資料から復興庁資料の関連死分を差し引いて市町村別リストを作成し,河北新報記事による土砂災害,建物被害の犠牲者数 (90名) がほぼ内陸地域の直接犠牲者数に相当することを確認,残りを津波によるものとした.1995年兵庫県南部地震の内訳は公式資料に基づいた.1946年昭和南海地震は地震研究所の速報 (河角・佐藤,1947,金井ほか,1947) の表及び内閣府中央防災会議資料から集計した.1944年昭和東南海地震は,飯田 (1977) による集計資料から,中央気象台資料「昭和19年12月7日東南海大地震調査速報」を基に建物被害分を差し引き,残りを津波被害とした.1923年関東地震は諸井・武村 (2004) の集計を用いたが,津波と土砂災害による犠牲者数は内閣府中央防災会議による推計を採用した.1855年安政江戸地震は,中村ほか (2011) では江戸での死者数は7,095名以上であるが,中央防災会議資料に基づき全体の死者数は1万名とし,このうち8割程度を建物被害によるものとした.安政東海・南海地震の被害内訳は,昭和東南海・南海地震の原因別犠牲者数比を参考に,建物被害と津波被害が1:1であるものとした.海外の地震については,内陸地震は基本的に構造物被害,津波のあった地震は津波被害とした.ただし,個別資料により原因別内訳を確認できたものについては示した.
海外の被害地震のうち,文献等により原因別犠牲者数を推定できたものは,2015年ネパール・ゴルカ地震,2008年四川省地震,1999年台湾集集地震,1976年モロ湾の地震など多くはない.内陸地震は建物被害,海溝型地震のうち津波被害が知られているものは津波,それ以外は建物被害に区分した.荒削りではあるが,これらの集計と地図への表示により,海溝型地震でも揺れによる被害,津波による被害,海底地滑りに起因する津波による被害など,地域によって被害形態は様々であることが視覚的に読み取れるようになった.今後も資料収集を継続しデータの精査を行う予定である.災害情報図は紙媒体によるもののほか,ウェブサイト(http://ccop-geoinfo.org/G-EVER)上でも随時公開していく予定である.