17:15 〜 18:30
[SSS25-P03] 運動学的震源モデルから求めた2008年岩手・宮城内陸地震の動力学パラメータ
キーワード:2008年岩手・宮城内陸地震、動力学パラメータ、運動学的震源モデル
●はじめに
震源の破壊は動力学的パラメータに支配されるので,今後,強震動予測の動的破壊シミュレーションなどにより震源モデルを作成する際に,妥当な動力学パラメータの設定が重要であるし,現在レシピで用いられる特性化震源モデルの改良にも資する.ここでは,2008年岩手・宮城内陸地震を対象に,我々が強震記録から推定した震源モデル(吉田・他,2015,地震学会)を境界条件として,差分法により計算した応力場から摩擦構成則を調べ,震源の動力学パラメータを検討した.
●応力場の計算
解析に用いた震源モデルは,周期1-20秒の地震動記録を用いて推定されており,格子間隔が2 km×2 kmである.Ide and Takeo (1997)と同様に,運動学的震源モデルを境界条件とした応力場を差分法(例えば,Pitarka, 1999, BSSA)により計算し,震源での応力の時間変化を計算した.この地震では断層すべりは地表面に到達し,地表に断層運動に伴う亀裂が生じている(例えば,遠田・他, 2010, 地震2)ので,計算では地表面を設定し,断層面は運動学的震源モデルと同様に傾斜40°とした.運動学的震源モデルの2kmメッシュのモデルを補間して,333 m×333 mメッシュとし,この補間モデルの格子間隔と一致するように差分法の格子間隔を設定した.また,最上部の点震源を差分法の地表面付近になるよう設定した.速度構造モデルには震源インバージョンで用いたものを,安定な計算となるよう多少改変して用いた.
●結果
解析で得られた動的応力降下量Δσは静的応力降下量と大差ない値が求められたが,アスペリティ全体で約13 MPaであった.この地震では断層面上端にアスペリティがあり,それが地表に接しているが,アスペリティの地表付近に限るとΔσは約8 MPaと,小さい値が求まった.この領域では,ライズタイムも深部に比べ長く,Δσの深さ依存性が示唆される.破壊エネルギーGcは,断層面全体で6×106 J/m2で,Tinti et al (2005)のスケールと整合的であった.また,アスペリティ領域で2×107 J/m2であった.応力最大値を示す時刻(すなわち降伏応力に達した時刻)を破壊開始時刻とみなして追跡すると,アスペリティ内部で破壊が加速する傾向や,断層面上端で破壊伝播が遅れる傾向がみられた.
謝辞:本研究は,平成27年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の高度化)事業による成果の一部である.
震源の破壊は動力学的パラメータに支配されるので,今後,強震動予測の動的破壊シミュレーションなどにより震源モデルを作成する際に,妥当な動力学パラメータの設定が重要であるし,現在レシピで用いられる特性化震源モデルの改良にも資する.ここでは,2008年岩手・宮城内陸地震を対象に,我々が強震記録から推定した震源モデル(吉田・他,2015,地震学会)を境界条件として,差分法により計算した応力場から摩擦構成則を調べ,震源の動力学パラメータを検討した.
●応力場の計算
解析に用いた震源モデルは,周期1-20秒の地震動記録を用いて推定されており,格子間隔が2 km×2 kmである.Ide and Takeo (1997)と同様に,運動学的震源モデルを境界条件とした応力場を差分法(例えば,Pitarka, 1999, BSSA)により計算し,震源での応力の時間変化を計算した.この地震では断層すべりは地表面に到達し,地表に断層運動に伴う亀裂が生じている(例えば,遠田・他, 2010, 地震2)ので,計算では地表面を設定し,断層面は運動学的震源モデルと同様に傾斜40°とした.運動学的震源モデルの2kmメッシュのモデルを補間して,333 m×333 mメッシュとし,この補間モデルの格子間隔と一致するように差分法の格子間隔を設定した.また,最上部の点震源を差分法の地表面付近になるよう設定した.速度構造モデルには震源インバージョンで用いたものを,安定な計算となるよう多少改変して用いた.
●結果
解析で得られた動的応力降下量Δσは静的応力降下量と大差ない値が求められたが,アスペリティ全体で約13 MPaであった.この地震では断層面上端にアスペリティがあり,それが地表に接しているが,アスペリティの地表付近に限るとΔσは約8 MPaと,小さい値が求まった.この領域では,ライズタイムも深部に比べ長く,Δσの深さ依存性が示唆される.破壊エネルギーGcは,断層面全体で6×106 J/m2で,Tinti et al (2005)のスケールと整合的であった.また,アスペリティ領域で2×107 J/m2であった.応力最大値を示す時刻(すなわち降伏応力に達した時刻)を破壊開始時刻とみなして追跡すると,アスペリティ内部で破壊が加速する傾向や,断層面上端で破壊伝播が遅れる傾向がみられた.
謝辞:本研究は,平成27年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の高度化)事業による成果の一部である.